2016年7月発売
その日、ガズビヤ王国では国王のハーレムに女性を集めていた。ハリス王国の王女ナディアは踊り子として宮殿に忍びこみ、寝室でザイード王が現れるのを待っていた。彼女には、どうしても国王にかなえてほしい願いがあった。ガズビヤと長年敵対しているハリスを攻めないでほしい。そのために、ナディアは家族に黙って国を飛び出した。無慈悲な権力者がどうすれば喜ぶかなら、よく知っている。自分が差し出せる唯一のものー純潔を捧げるのだ。たとえ、ハーレムで愛の奴隷にされるとしても…。
5年前、リリーは車の事故で死んだー。しかし本当は、名前を変え、別の場所で暮らしていた。血のつながらない兄ラファエルとの愛に溺れていた彼女にとって、そうするしか、中毒のような関係から抜け出すすべはなかったのだ。しかしあるとき、リリーはとうとう彼に見つかってしまう。昔、二人の関係を“汚れた秘密”と呼んだラファエルに、私がひそかに産んだ息子のことを知られるわけにはいかない。突然のキスに心は動揺していても、彼女はとっさに嘘をついた。「私はリリーじゃないわ。あなたは誰…?」
元モデルの母親が自殺し、チェルシーはマスコミに追われる。父親は娘を守るため、彼女をロンドンに送り出した。一家の古い友人である、弁護士のルーカスに託したのだ。「チェルシー!本当にきみなのか?」19歳になった彼女に驚く彼の顔が、恥ずかしくて見られない。ルーカスは、幼いころからチェルシーにとって憧れの人だった。彼のペントハウスに身を寄せ、寝食をともにするようになるが、ルーカスはいつまでも彼女を子ども扱いしかしてくれない。わたしでは、あなたの恋人になれないの…?
ナースのクララは15歳で両親を失い、胸に孤独を抱え生きてきた。幼なじみの男性を心の支えにしてきたが、所詮報われない片思いだった。だがそんなクララの前に、イギリスから来た医師のティモシーが現れ、ある夜、強引に彼女の唇を奪って叶わぬ恋から目を覚まさせた。誰をも惹きつけてやまない人柄とハンサムな容貌に魅了され、いつしかクララは彼に身も心もささげていた。けれども、彼は3カ月したらまた別の地へ向かう身…。クララはここにとどまってくれることを密かに願ったが、非情にもティモシーは別れを告げ、去っていったー彼女のおなかに、わが子の命が宿っているとも知らずに。
“そもそも君に近づいたのは、金のためだった”ある日突然、ロウィーナは心変わりした元婚約者から婚約破棄された。評判とプライドを粉々に打ち砕かれた彼女は心に決めるーたった20ポンドを手に、よその国で出自を隠して働き、家柄や財産とは関係なく生きていこう、と。やがて、目の不自由な老婦人のつき添いの仕事を見つけ、ロウィーナは故郷イギリスからはるばる海外へ渡った。雇い主の老婦人がいい人だとわかって安心したのもつかの間、その甥で広大な地所を相続するフォレストが、会って早々に言い放った。「これまでのつき添いのように、僕の妻の座を狙っても無駄だぞ!」
まさか、妊娠するなんて…。秘書のエリーはニューヨークの街中で途方に暮れていた。6時間後に結婚式を挙げるというのに、おなかの子の父親は花婿ではないのだ。この事実を子どもの父親にー傲慢でセクシーなボス、大富豪ディオゴに知らせるべきかしら?エリーは震える足を奮い立たせて、ディオゴの前に立った。だが、彼はエリーの話に耳を傾けるどころか、彼女が結婚すると知ってなじり、警備員を呼んで追い払わせたのだ。数時間後、ディオゴは真相に気づいてエリーを捜すが、彼女はすでにオフィスを去り、花嫁として教会にいた。
アリアドネは海を臨むホテルのバルコニーに佇み、悲嘆に暮れていた。両親の死後、幼い私を引き取って23歳の今まで育ててくれたおじ夫妻。二人の愛情を疑ったことなど一度もなかった。それなのに…おじの薦めで旅行に出かける直前、自分が見知らぬギリシア人富豪と結婚する運命だと知らされたのだ。花嫁をお金で買うなんて、どんな気味の悪い人なのだろう?おじの残酷な仕打ち以上に、未来の花婿との対面の瞬間に彼女は怯えた。滞在先のホテルにアリアドネを迎えに来たセバスチャン・ニコストは、思いもよらないことに、若く精悍で端整な顔立ちの男性だった。だが、その黒い瞳は氷のように冷たく…?!
アイヴィは物心ついたときから、自分勝手な姉に振りまわされてきた。美しい長女だけを溺愛していた亡き父が、遺産のすべてを姉に遺したため、今では経済的にも苦しい日々を強いられている。そんなアイヴィの心の拠りどころは、親友のメリーだ。ある日、メリーの家に泊まったアイヴィは、真夜中のバスルームでメリーの兄スチュアートと鉢合わせてしまう。アイヴィは彼が苦手だった。そばにいるとなぜか落ち着かなくなる。しかも彼は、アイヴィが姉と同じく奔放で遊び好きだと思いこみ、辛辣な態度で接してくるのだ。だが、その夜の彼はいつもと少し違った。不可解なまなざしを向けてきたかと思うと、突然、アイヴィにキスをした。
リネットの父は、美しい娘を洗練された淑女にするために、没落貴族の娘を教育係としてあてがい、厳しくしつけさせた。たしかにマナーやセンスは身についたけれど、こんな生活は苦痛…本来は読書好きでおとなしいリネットの心は沈んでいた。そんなある日、リネットは寄宿学校時代の親友から兄を紹介される。ルイス・エステベス・パラディ侯爵はフランスとスペインの混血で、極楽島の海賊と呼ばれ、結婚を忌み嫌う社交界のスターだという。彼女は親友ともども、ルイスが所有する極楽島へ招待されるが、途中、彼は一行から離れ、リネットを秘密の小島に連れ出す。隠れて休むときに使うというその島で、彼は夜を過ごそうと誘い…。
生贄伝説のある龍ヶ沼と、その隣にそびえる荒山。かつて、祖母が母を連れて飛び出したという山内村を訪ねた高校生の志帆は、村祭りの晩、恐ろしい儀式に巻き込まれる。人が立ち入ることを禁じられた山の領域で絶対絶命の志帆の前に現れた青年は、味方か敵か、人か烏かー
作家の卵フラーは、自伝協会なる組織に雇われ、名士ぞろいの会員の自伝執筆を手伝うことになった。やがて奇妙なことに、会員たちはフラーが書いた小説の登場人物と同じ台詞を口にしだし、小説そっくりの事件が!一方、フラーは念願の小説出版の話を反故にされ、唯一の原稿も盗まれてしまう。自伝協会と出版撤回には何か関連が?フラーは原稿を無事取り返し、出版することができるのか?スパークの幻の傑作、ついに登場!
星城大学の研究者早乙女静香はバー“スリーバレー”でライターの宮田六郎と知り合った。歴史談義で角突き合わせるだけの関係だったが、どうしたわけか共に京都を旅する成り行きに。ところが、観光と洒落込む間もなく彼らの知人が次々と奇禍に遭い、被害者との接点に注目した警察は二人を追及しはじめる。事件を解明すべく奔走する宮田と静香。歴史上の謎に通じるその真相とは?
魔導士が虐げられている国ラバルタ。田舎で私塾を開いている三流魔導士レオンは、魔導士の最高機関“鉄の砦”から一人の少年を預かる。幼い頃家族を殺され、桁違いの潜在能力がありながら魔導を学ぶのを拒む少年ゼクス。頑なだった彼は、レオンの辛抱強い指導で才能を開花させる。だが、それが王国の運命を大きく変えることに…。第1回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞作。
インドのジャングルに取り残された人間の子ども、モウグリ。彼はオオカミに引き取られ、そこでたくましく育つ。モウグリにジャングルの掟を教えるのは、黒ヒョウのバギーラ、熊のバールー、ニシキヘビのカーなど。その仲間らとともに、宿敵であるトラのシア・カーンとの対決や赤犬の群れとの闘いなど数々の冒険を経験して、モウグリは少年から大人へと成長していく。やがて別れの時が来るまで…。細かな注釈とともに、キプリングの代表作が美しい原文で読める一冊。
私の妻、40歳。職業、女優。二児の母、PTA会長、消防団員、町内新聞編集部員にして、プロボクシング女子フェザー級世界王座挑戦者!?その戦いの日々に、夫婦と家族の絆を見つめ返す中篇小説。