2017年8月31日発売
出版界と大泉洋という二つの「ノンフィクション」を題材に書く社会派にして本格ミステリー 『罪の声』を発表し、社会派ミステリーの新たな旗手に名乗り出た、塩田武士。第七回山田風太郎賞を受賞し「本屋大賞2017」第三位に輝くなど、日に日に支持の声が高まるなかで刊行された『騙し絵の牙』は、ノンフィクションを題材としている、という点で『罪の声』と共鳴する。ひとつは、市場規模は右肩下がりで救世主到来を待つ、出版界およびエンタメ産業の現状というノンフィクション。もうひとつは、誰もが知る国民的俳優である、大泉洋の存在というノンフィクションだ。奥付には、次のようなクレジットがある。「モデル 大泉洋」。映像の世界には最初から俳優のイメージを取り入れた役を作ろう、という「当て書き」の文化がある。本書は、主人公に大泉洋を「当て書き」して執筆された、前代未聞の小説だ。 主人公は出版大手の薫風社で、カルチャー誌「トリニティ」の編集長を務める速水輝也。40代半ばの彼は、同期いわく「天性の人たらし」だ。周囲の緊張をほぐす笑顔とユーモア、コミュニケーション能力の持ち主。部下からの信頼も厚いが、苦手な上司・相沢から廃刊の可能性を突きつけられ、黒字化のための新企画を探る。芸能人の作家デビュー、大物作家の大型連載、映像化、企業タイアップ……。 編集部内の力関係を巡る抗争やきな臭い接待の現場、出版業界に関する深い議論のさなかでも、ひとたび速水が笑顔を繰り出せば硬い空気がふっとやわらぐ。ひょうひょうとした速水の語りを発端とする登場人物たちの掛け合いがいちいち楽しい。相手も面白くさせてしまう魔法の話術は、誰かに似ている。大泉洋だ。「速水=大泉」の公式は、表紙や扉ページの写真以外に、会話の中からも強烈なリアリティが溢れ出している。 しかし、速水のそれは高い確率で「つくり笑い」であることを、文中から察することができる。どこまでが演技で、どこからが素顔なのか? 速水は何故ここまで雑誌と小説とを愛し、自らが編集者であることにこだわるのか。やがて、図地反転のサプライズが発動する。「速水=大泉」に必ず、まんまと騙される。 本書を読み終えて真っ先に想起したのは、塩田のデビュー作『盤上のアルファ』。将棋の棋士と新聞記者をW主人公に据えた同作のテーマは「逆転」だ。出版界の未来に新たな可能性を投じる「企画」として抜群に高品質でありながら、デビュー作から積み上げてきたテーマや作家性が十全に発揮されている。本作を最高傑作と呼ばずして何と呼ぶか。 評者:吉田大助(「野性時代」2017年10月号)
新入社員の松尾はある晩会社で、先輩の康子がパワハラ上司の不正の証拠を探す場面に遭遇するが、なぜかそのまま片棒を担がされることになる。翌日、中野の劇場では松尾たちの会社がプロモーションする人気演出家の舞台が始まろうとしていた。その周辺で4つの事件が同時多発的に起き、勘違いとトラブルが次々発生する。バラバラだった事件のピースは、松尾と康子のおかしな行動によって繋がっていき…。
平成29年7月、千葉県船橋市の休耕地で、ブルーシートが掛けられた幼女の遺体が発見された。捜査に乗り出した船橋署の香山は、7年前に起きた<田宮事件>と遺体の状況が酷似していることに気づく。<田宮事件>では不可解な経緯から証拠が見つかり、犯人とされた男は冤罪を主張したまま刑務所内で自殺していた。やがて、捜査を進める香山の前で、ふたつの事件をつなぐ新たな証拠が見つかってーー。
女王様に忠誠を誓うイケメンわんこ騎士団たち、暴走しがちなせいで外交や内政に大トラブルが!?若干10歳の女王様が彼らの躾に奮闘する、わんわんハーレムコメデイ!!
ブラック企業勤めに疲れ切った佐藤亮太は、気がつくと異世界に転移していた。だが、せっかく異世界に来たというのに最大レベルが1のまま。どれだけ頑張ってもレベルが上がらない…はずだった。だが、亮太には特殊能力が備わっていた。食べ物など、全てがダンジョンのモンスターを倒してドロップするこの世界で、ドロップ確率が全てSランクというチートなユニークスキルが!スキルを使って能力を上げまくり、レベル1のまま最強に!
鬼瓦正蔵はある日女神と出会い、うだつの上がらなかった人生から一転、一度目の成り上がりを果たす。妻と三人の娘に囲まれ、念願のマイホームを手に入れた41歳の春、突如として家ごと異世界に転移してしまう。生活のため零細の冒険者ギルドに就職した正蔵。掲げた目標、『一年でギルドを街一番に押し上げる』は達成できるのか? 日本で培った営業スキルや妻とXXして得たチート能力を駆使し、二度目の成り上がりを開始するっ! 鬼瓦正蔵はある日女神と出会い、うだつの上がらなかった人生から一転、一度目の成り上がりを果たす。妻と三人の娘に囲まれ、念願のマイホームを手に入れた41歳の春、あり得ない事態に巻き込まれる。突如として家ごと異世界に転移してしまったのだ。生活のため、零細の冒険者ギルドに就職した正蔵。 掲げた目標、『一年以内に零細ギルドを街一番に押し上げる』は達成できるのか? 「だいじょうぶですっ。だっておとーさまは、むてきですから!」(三女談) 日本で培った営業スキルや妻とXXX(自主規制)して得たチート能力(物理)を駆使し、エルフや獣人、貴族たちをも巻き込んで、正蔵は人生二度目の成り上がりを開始するっ! 一話 雨の夜、彼は女神様に── 二話 一家丸ごと異世界転移 三話 異世界で始める就職活動 閑話休題 三姉妹の戯れ 四話 初の営業、その成果 五話 専属契約 閑話休題 三姉妹の可能性 六話 M&A 七話 ドラゴンスレイヤー 閑話休題 三姉妹の冒険 八話 最大の敵、動き出す 閑話休題 三姉妹の出会い 九話 頂上対決 おまけ短編
ロンドン警視庁の女性刑事が問題を起こして謹慎処分となった。女児を置き去りにして母親が失踪したネグレクト事件を担当していて上層部の判断に納得がいかず、新聞社にリークするという荒技に走ったのだった。ロンドンを離れ、コーンウォールの祖父の家で謹慎の日々を過ごすうちに、打ち捨てられた屋敷・湖畔荘を偶然発見、そして70年前にそこで赤ん坊が消える事件があり、その生死も不明のまま迷宮入りになっていることを知る。興味を抱いた刑事は謎に満ちたこの事件を調べ始めた。70年前のミッドサマー・パーティの夜、そこで何があったのか?仕事上の失敗と自分自身の抱える問題と70年前の事件が交錯し、謎は深まる!
ミステリが読みたい!第2位 週刊文春ミステリーベスト10第3位 このミステリーがすごい!第4位 消えた赤ん坊の姉はミステリ作家となっていた。 打ち捨てられた屋敷に隠されていた家族の秘密とは? 見捨てられた湖畔荘の現在の持ち主は、ロンドンに住む高名な女流ミステリ作家。彼女は消えた赤ん坊の姉だった。女性刑事は、なんとしても事件の真相を知りたいと作家アリスに連絡を取る。1910年代、1930年代、2000年代を行き来し、それぞれの時代の秘密を炙り出すモートンの手法は相変わらず見事としか言いようがない。そして、最後の最後で読者を驚かすのは、偶然なのか、必然なのか? モートン・ミステリの傑作。
柿埼先生に、手紙を書こうと思うー中学三年になる春、山坂百音は、かつて通っていた小学校の元教員・田児あやめに伝えた。そして百音は、三年半前に起きたできごとについて、五年三組の担任教師だった柿埼に向けて思い出を綴ってゆく。すべては、彼の謎めいた提案から始まったのだ。「どうでしょう。今年一年、このクラスのみんなでゲームをしませんか?」『ニンテイ』と名づけられた、柿埼の考案した奇妙なゲームが、子どもたちの未来を大きく左右する事を、このときは誰も予想していなかったー『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』で衝撃のデビューを果たした新鋭が贈る、入魂の長編ミステリ。
五年三組の担任教師・柿埼の提案した『ニンテイ』ゲームはクラスの子どもたちの心を捉え、学校生活にかかせないレクリエーションとして順調に機能しているように見えた。引っ込み思案で『ニンテイ』を忌避していた百音も、親友となった香住の励ましを得て、夏休みの自然教室や秋の運動会を乗り越え、クラスメイトとの距離を縮めて徐々に自分の世界を広げてゆく。この穏やかな日々が続くと、みな思っていた。ただ、「彼ら」を除いては。百音は思い返す。最後の“ゲーム”が行われたあの日、夜の校舎で何が起きたかを。圧倒的な筆力で描ききった渾身の千二百枚。
神の遣いである宝石鳥の子孫が治めるシリーシャ島。島を訪れた植物学者と恋に落ちた女王は、その身を二つに分け、半身を島に残し、自らは恋人と海を渡った。だが身を二つに分けるなど所詮無理なこと、女王は一枚の肖像画を遺して消えてしまう。そして百年後、島では新たな女王即位の儀式が迫っていた…。不思議な力を持つ仮面の女、女王の魂を引き継ぐ儀式、喪われた半身。第二回創元ファンタジイ新人賞受賞、死と再生の傑作ファンタジィ。
私用で大学を訪れたフォイル次長警視正は“殺人計画”の書かれた紙を拾う。決行は今夜八時。直後に拳銃の紛失騒ぎが起きたことに不安を覚え、夜に再び大学を訪れると、亡命化学者の教授が死体で発見された。現場から逃げた人物に関する目撃者三名の証言は、容姿はおろか性別も一致せず、謎は深まっていく。精神科医ウィリングが矛盾だらけの事件に取り組む、珠玉の本格ミステリ。
捕食されないように、まぎれてしまったほうがいい。そう言って、いづみはトラウマを抱える真尋の心に猫のようにするりと入り込んできた。真尋は希望を見出すが、ふとした疑念からいづみの過去を辿ると、彼女の周りで何人もの女が失踪していた。やがて真尋はあまりにおぞましい真実に直面する。抜群のページターナーが贈る、戦慄のサスペンス。
『小説の技巧』の作家の本領発揮、初の短篇集 本書は、英国の大御所デイヴィッド・ロッジが30歳から80歳までに書いた、8つの短篇を収めた自身初の短篇集。作風はブラック・コメディ、セックス・コメディ、意外な結末のロアルド・ダール風など、バラエティに富み、まさに『小説の技巧』の作家の本領発揮、コミック・ノヴェルの名手が満を持して放つ、粒ぞろいの1冊。 「起きようとしない男」──しがない勤め人のジョージは、人生になんの楽しみも見いだせず、ある冬の夜、ベッドから出ることを拒否する。やがてそのことが知れ渡り、テレビ取材で事の経緯を話したおかげで、洪水のように手紙が届き、幸福な充実感を覚える。しかし彼は死の願望にとりつかれ、天井に天使と聖人がいて、空中浮揚できるのではないかと妄想する。昇天しようと、夜具を投げ捨てるが、寒さに襲われるだけで、床から毛布を取り上げる力もない。妻とナースを弱々しく呼ぶが……。 他に「けち」「わたしの初仕事」「気候が蒸し暑いところ」「オテル・デ・ブーブズ」「田園交響曲」「記憶に残る結婚式」「わたしの死んだ女房」を収録。作家による「まえがき」「あとがき」、半世紀の作家活動を紹介する「訳者あとがき」も収録。
誇り高く孤独を愛するが、寂しさを感じたとき彼らはそばにいてくれる。甘えるが媚びず、気まぐれだが頼りになる相棒。そんな不思議な生き物の名は猫ー。マシュマロを焼く天才猫が登場するコイストラ「パフ」、宇宙船に乗せられた“船猫”が活躍するナイ「宇宙に猫パンチ」、傑作の誉れ高いライバー「影の船」など、愛すべき個性豊かな10匹の猫たちが宇宙狭しと跳び回る。名アンソロジストがすべての猫好きとSFファンに贈る、猫SFアンソロジーの決定版!地上でも宇宙でも、やっぱり猫は猫なのだ。
経済が崩壊し、人心が鬱屈したアイルランドの地方都市に暮らす無軌道な若者たちを、繊細かつ暴力的な筆致で描きだす、ニューウェイブ文学の傑作。世界が注目する新星のデビュー作!ガーディアン・ファーストブック賞、ルーニー賞、フランク・オコナー国際短編賞受賞!