2019年9月26日発売
「このささやかな幸せを守るためなら、何でもするー」会社員の夫・秀嗣、五歳の息子・洸太、義母の治子と都内に暮らす折尾里佳子は、主婦業のかたわら、フリーの校閲者として自宅で仕事をこなす日々を送っていた。ある日、秀嗣がサプライズで一人の客を家に招く。その人物は、二十年以上行方知れずだった、秀嗣の兄・優平だという。現在は起業家で独身だと語る優平に対し、息子本人だと信用しない治子の態度もあり、里佳子は不信感を募らせる。しかし、秀嗣の一存で優平を居候させることに。それ以降、里佳子の周囲では不可解な出来事が多発する。
母の三回忌。故郷の島に帰省した橙花の前に現れたのは、なんと、母のワンピースを着た父!そして、我が物顔で夕飯の席に着く、見知らぬ中年男と女子高生…。性別も血縁も国籍も超えた、あたらしい家族の誕生を描いたヒューマンドラマ。
天保の改革ののち、長年幽閉されていた鳥居胖庵が戻ると江戸はなくなっていた。軽薄な「東京」に憤然とする胖庵は困窮に喘ぐ見習い能役者と知り合う。立場も年齢も違う二人が心を通わせる中で遭遇する、やるせない市井の事件の数々。転変の世を生き抜く者の意地と哀歓を描く本格派時代小説。明治五年、東京。居場所をなくした二人が向かうべき道とは?
かつては鉄道の専門学校として名を馳せた海東学園。過疎高齢化のあおりで経営破綻寸前のなか、リゾート開発を目論む中国企業への身売り話が舞い込む。一方、東南アジアの新興国・R国の高速鉄道受注に向け、中国と熾烈な競争を繰り広げる四葉商事は、莫大な資金力の差で劣勢を強いられていた。その渦中、次期首相候補のキャサリンと面会。「国を変えるのは教育」と説かれ、ついには海東、四葉、そして経産省を巻き込んだ前代未聞の一大プロジェクトへと発展していく。しかし、その間にも中国による土地の買い占めは着々と進んでいた…。日本の未来を見通す痛快エンタメ企業小説!
ボストンの大学院の研究室で日々実験を重ねるも得意だったはずの化学の研究はうまくいかず、博士号取得はドロップアウト寸前。同棲中の彼からのプロポーズにも答えが出せず…。血のにじむ努力で中国から移民してきた両親の期待に応えられない自分を持てあます、リケジョのこじれた思いが行きつく先はー。ユニークな語り、削ぎ落とされた文章から滲みだすあたたかさが胸を打つ、愛と家族と人生のものがたり。中国系アメリカ人作家のデビュー作。PEN/ヘミングウェイ賞受賞
一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣。日々舞い込んでくる移住者たちのトラブルを、最終的に解決するのはいつもー。徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!そして静かに待ち受ける「衝撃」。これこそ、本当に読みたかった連作短篇集だ。
戦争から東京に戻った藤田俊雄は異父兄とともに、スーパーマーケットを開業、店舗網を広げ成長を遂げる。どん欲に売り上げを追う仲村力也、消費にも文化を、と訴える大館誠一ら、ライバルたちと競い合いながら、戦後の日本の流通業界を大きく変えていく。作家・江上剛氏がカリスマ経営者の姿を描く。
スーパーマーケットチェーン、フジタヨーシュウ堂に転職。有能な働きで頭角を現したビジネスマン、大木将史。米国出張で偶然出会ったコンビニエンスストアを日本で展開し日本の消費者の暮らしを大きく変えた彼を待ち受けるものとはー。作家・江上剛氏が描くカリスマの運命とは。
テロが吹き荒れるフジモリ政権時代のペルー、リマ。戒厳令下、同性愛をひそかに楽しむ富裕層の妻たち、乱交パーティの隠し撮りでゆすられるその夫、ゴシップ誌に命をかけ闇を背負う編集長、彼を崇める記者、職を奪われ孤独の中で恨みを溜める老人…腐敗し退廃した街の人間模様の背後には、国家の恐るべき罠が隠されていた。ノーベル賞作家が放つ官能的かつサスペンスフルな最新作!
どうしてぼくたちは、まだ生きなければならないのか。死病にかかった母のための一家心中未遂で父母を失い、塔に幽閉された兄弟の静謐なる惨劇『アムラス』、ウィーンの街を散歩しながらエーラーは発狂した友人についてえんえんと語り続ける。軽快にして暗澹たるスラップスティック『行く』。深淵を通り、深淵のなかへつきすすむトーマス・ベルンハルトのおそるべき傑作。
田宮流抜刀術の達人で三味線の名手矢内栄次郎は手首を傷め、撥も刀も握れずにいた。折しも兄栄之進に再婚話が舞い込んだ。なんと三千石の大身旗本の娘だという。矢内家は二百石の御家人、もしや栄次郎の出生の秘密を知ってのことか。一方、五年前の“事件”を探り当てた者から、二人の商人に強請りの文が届き、尾行者も…。相談を持ちかけられた栄次郎は、はたして…。
津軽藩士の父は切腹、母は後追い。鹿取寒九郎は藩から追われ単身、江戸へ。叔母が嫁いだ旗本三百石・武田作之介の許で、少年寒九郎の孤独の闘いが始まった。まだ見ぬ祖父仙之助はなぜに谺一刀流を封印したのか?父母はなぜ自害したのか?その父から祖父への文はなんのためか?祖父はいまどこに?なぜ十五歳の寒九郎が謎の侍たちに何度も命を狙われるのか…?書き下ろし長編時代小説。
奥美濃の郡上藩での百姓一揆は、公儀の評定所へと送られた。将軍家重は御用取次の田沼意次に評定の指揮をとらせるべく五千石を加増、一万石の大名とした。結果、郡上藩主金森兵部は改易、金森と縁を結んでいた若年寄の本多長門守忠央は罷免のうえ領地(遠江の相良)召し上げとなり、相良は意次に与えられた。相良への意次の旅に同行した御庭番宮地加門の見た“武士の一念”。
鉄平は38歳にして童貞。なんとかせねばと「美鈴モテセミナー」に週一回通って「モテる方法」を学んでいる。「身だしなみは自己投資」「自分の魅力を高める、安心感を与える」「ナンパのお茶は声をかけた場所から見える店で」など美鈴の教えを守り、どんどん成功体験を積んでいく。そして、最後には、美鈴とのデートが…。人気作家による書下し官能!
あなたはその飛行機と呼ばれる、柩のような金属とプラスチックのチューブが安全だと信じているのか? このアンソロジーを読めば考えが変わるかもしれない。 ひとたび機上のひととなってしまえば、あなたはもう何もできない。 積んでいる貨物が恐ろしい音を立てようが、大空でモンスターと遭遇しても、未来人の誘拐部隊がやってこようとも、戦争が始まっても、ゾンビが襲ってこようとも、密室殺人が起ころうとも、あなたは何もできないのだ。 飛行機に乗るご予定がおありの方は強い勇気をお持ちであることを願う。 なぜならこの本を読めば、どれだけ統計上は飛行機が安全だと言われようが、決して統計ではわからない恐怖が待っていることがわかるはずだから。 スティーヴン・キング、ジョー・ヒルの書き下ろし作品など初訳10篇を含む、全17篇の恐怖のフライトへようこそ。 【収録内容一覧】 「序文」スティーヴン・キング/白石朗訳 「貨物」E・マイクル・ルイス/中村融訳 ★初訳 「大空の恐怖」アーサー・コナン・ドイル/西崎憲訳 「高度二万フィートの恐怖」リチャード・マシスン/矢野浩三郎訳 「飛行機械」アンブローズ・ビアス/中村融訳 ★新訳 「ルシファー!」E・C・タブ/中村融訳 ★初訳 「第五のカテゴリー」トム・ビッセル/中村融訳 ★初訳 「二分四十五秒」ダン・シモンズ/中村融訳 ★初訳 「仮面の悪魔」コーディ・グッドフェロー/安野玲訳 ★初訳 「誘拐作戦」ジョン・ヴァーリイ/伊藤典夫訳 「解放」ジョー・ヒル/白石朗訳 ★初訳 「戦争鳥(ウォーバード)」デイヴィッド・J・スカウ/白石朗訳 ★初訳 「空飛ぶ機械」レイ・ブラッドベリ/中村融訳 ★新訳 「機上のゾンビ」ベヴ・ヴィンセント/中村融訳 ★初訳 「彼らは歳を取るまい」ロアルド・ダール/田口俊樹訳 「プライベートな殺人」ピーター・トレメイン/安野玲訳 ★新訳 「乱気流エキスパート」スティーヴン・キング/白石朗訳 ★初訳 「落ちてゆく」ジェイムズ・ディッキー/安野玲訳 ★初訳 「あとがきーー操縦室より重大なメッセージがあります」ベヴ・ヴィンセント/中村融訳 「作者について」 中村融訳