2020年11月発売
スピリチュアルと科学が逆転した、 心の絆が生み出すユートピア・ニッポン! 平熱は38度で、病気の原因はクスリを飲むこと。 お祈りですべての病気を治す世界で繰り広げられる、 誰もが幸せなディストピア。 『皆勤の徒』『宿借りの星』で日本SF大賞を2度受賞した 期待の星による、連作小説集。 結婚式場に勤める土屋は、38度の熱が続いていた。 解熱剤を飲もうとすると妻の真弓に「免疫力の気持ち、なぜ考えてあげない」と責められる。 ……「三十八度通り」 真弓の母は、全身が末期の蟠りで病院のベッドに横になっていた。 すぐに退院させられ、今後はそれを「るん(笑)」と呼ぶ治療法を始めることになる。 ……「千羽びらき」 真弓の甥の真は、近くの山が昔の地図にはないと知り、登りはじめた。 山頂付近で、かわいい新生物を発見する。それは、いまは存在しないネコかもしれなかった。 ……「猫の舌と宇宙耳」 【著者略歴】 酉島伝法(とりしま・でんぽう) 1970年、大阪府生まれ。作家、イラストレーター。 2011年、「皆勤の徒」で第2回創元SF短編賞を受賞し、 13年刊行の作品集『皆勤の徒』で第34回日本SF大賞を受賞。 19年刊行の第一長編『宿借りの星』で第40回日本SF大賞を受賞。 他の著書に『オクトローグ 酉島伝法作品集成』がある。
13歳で故郷を離れて流浪し、帰還して苦難の末にモンゴル族を統一したテムジンは、ついに“チンギス・カン”を名乗る。モンゴル族を統一し、さらにケレイト王国を滅ぼしたテムジンは、弟のカサル、テムゲ、長男ジョチらに出動を命じて、タヤン・カンが統べるナイマン王国との戦いを進める。そのナイマン王国の大軍の中に、ジャムカがホーロイ、サーラルとともに千五百騎で潜んでいた。崩れたナイマン軍を見届けて馬首を回したテムジンは、そこにあるはずのない旗ー玄旗を見る。ジャムカの強烈な斬撃がテムジンを襲ったー。
2021年へ!時代を貫く親子三代の物語 スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘とともに暮らしている。あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は・・・・・・東洋の魔女」「泰介には、秘密」と呟いた。泰介は、九州から東京へ出てきた母の過去を何も知らないことに気づく。 51年前ーー。紡績工場で女工として働いていた万津子は、19歳で三井鉱山の職員と結婚。夫の暴力と子育ての難しさに悩んでいたが、幼い息子が起こしたある事件をきっかけに、家や近隣での居場所を失う。そんな彼女が、故郷を捨て、上京したのはなぜだったのか。 泰介は万津子の部屋で見つけた新聞記事を頼りに、母の「秘密」を探り始める。それは同時に、泰介が日頃感じている「生きづらさ」にもつながっていてーー。 1964年と2020年、東京五輪の時代を生きる親子の姿を三代にわたって描いた感動作!前作『あの日の交換日記』が大好評!!いま最も注目を集める若手作家・辻堂ゆめの新境地となる圧巻の大河小説!! 【編集担当からのおすすめ情報】 今作は、半分は母・万津子が青春時代を過ごした1950年代、60年代を舞台にしています。紡績工場の女工たちの過酷な労働や、炭鉱で働く男性たち、夫から虐げられる女性の日常が、鮮やかに、ときに生々しく描かれていきます。 万津子が話す大牟田弁は、著者の大牟田出身のお祖母様が監修してくださったとのこと。さらに当時のことをたくさん取材したという当時の背景描写も相まって、20代の著者が書いたとは思えないリアルさには、どこか懐かしさすら感じられるほどです。 景色も価値観も、めまぐるしい速度で変化していく東京。女性の社会進出や、LGBTQ、人種問題など、個性の在り方、捉え方は、日々アップデートされていきます。この作品は、時代とともに変化する生き方の指針にもなる傑作だと思っています。(このあたりはネタバレになってしまうので、ぜひ、読んでお確かめください!) 2020年の東京オリンピックは幻の中に消えてしまいました。明るい未来を2021年に託し、この作品を送り出したいと思います。 辻堂さんがひときわ力を入れて書かれた今作が、さらに次の世代へと読み継がれる作品になりますように。祈りを込めて編集しました。ぜひ、お手にお取りください
最高の出来事も、最悪の思い出も。生まれるのも、壊されるのも。人生の分かれ道は、たいてい夜に姿を見せる。ボクサー、タクシー運転手、警察官、高校教師。その夜、四人の男女は、闇に侵されたー。人間の強さと弱さを繊細な視線で見つめ、生まれた、忘れられない物語。
弁護士の澤田花が教育を担当することになった修習生の藤掛。その派手な容姿に引っかかる花だったが、仕事をする内、彼の意外な才能を発見する(「第一章 人は見かけによらない」)。十代で司法試験を突破した天才少年・柳が検察修習にやってきた。周囲が浮き足立つ中、柳の過去と重なるような事件の裁判が始まりー(「第三章 うつくしい名前」)。全四章。
疫病が猛威をふるい、死臭でむせかえる平安朝の洛中ー一生消えぬ傷を負い、人と世を呪詛しながらしかし、イチは変わりかけていた。空也上人、命拾い、救った命、身寄りをなくした身重のおなご…。NHKドラマ『雲霧仁左衛門』ほか執筆。着実にキャリアを重ねた脚本家が満を持して挑み、心血を注いだ長篇小説。京都文学賞受賞作。
交際相手に金品を貢がせ、練炭自殺に見せかけて殺害した牧村花音。平凡な容姿の彼女に、なぜ男たちは騙されたのか。友人を殺されたジャーナリスト・池尻淳之介は、真相を探るべく花音に近づくが…彼女の裁判は“花音劇場”と化し、傍聴に通う女性たちは「毒っ子倶楽部」を結成。花音は果たして、毒婦か?聖女か?裁判が辿り着く驚きの結末とは。「○○者」シリーズ6年ぶりの最新刊!
この扉の向こうに、秘密を抱えた旅人たちがいる。豪華寝台列車「ななつ星」の旅から生まれた5編の物語と2つの随想。ゆっくりと流れる時間の中、人は、それまで口にしたことのない言葉を語りだす。
「これから殺戮ゲームを開始します」。かつてない劇場型犯罪に立ち向かうマヤが選んだパートナーは「獄中のシリアルキラー」! 累計60万部突破の人気シリーズ最新作! 警視庁捜査一課第三係の黒井マヤは「死体が見たいから刑事になった」筋金入りの猟奇マニア。その相棒・代官山脩介巡査と、東大出身のキャリアなのに無能な浜田学警部補は、わがままでドSな性格のマヤに振り回される日々を送る。ある日、女性が殺害された現場の動画が動画配信サービスに投稿される。その動画にさらに犯行声明と今後の犯行予告が電子音声で公開されていた。「これから殺戮ゲームを開始します。ターゲットは七人の若い女性です。これは挑戦状です。捜査一課三係の黒井マヤさん」。次々と殺害動画が配信されるかつてない劇場型犯罪に捜査は難航。マヤは“師匠”であるイケメンシリアルキラー・杏野雲の協力を仰ぐために、東京拘置所を訪れる。そして事件を解決する鍵は「イマジナリーフレンド(=空想の友人)」にあるとわかるのだがーー。大人気シリーズ、第7弾!
探偵マット・スカダー・シリーズ 待望の新作 + 傑作短篇集 エレインの知り合いが名前も知らぬ男から脅迫を受けていた。 老スカダーは単独で調査を始める…… …………………………………………………………………………………… 【 堂場瞬一・解説 】 凝った構成も、あっと驚くどんでん返しもない。 しかし本作品は、何とも言えない味わいを残す。 …………………………………………………………………………………… □ 本書収録作品 夜と音楽と 窓から外へ バッグ・レディの死 夜明けの光の中に バットマンを救え 慈悲深い死の天使 夜と音楽と ダヴィデを探して レッツ・ゲット・ロスト おかしな考えを抱くとき ミック・バルー、何も映っていない画面を見る グローガンの店、最後の夜 石を放つとき 原題: A Time to Scatter StonesA Matthew Scudder Novella ◆ 著者について ローレンス・ブロック Lawrence Block 1938年、ニューヨーク州生まれ。20代初めの頃から小説を発表し、100冊を超える書籍を出版している。 『過去からの弔鐘』より始まったマット・スカダー・シリーズでは、第9作『倒錯の舞踏』がMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞、 第11作『死者との誓い』がPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)最優秀長篇賞を受賞した(邦訳はいずれも二見文庫)。 1994年には、MWAグランド・マスター賞を授与され、名実ともにミステリ界の巨匠としていまも精力的に活動している。 ◆ マット・スカダー・シリーズ ◇ 過去からの弔鐘 ◇ 冬を怖れた女 ◇ 一ドル銀貨の遺言 ◇ 暗闇にひと突き(早川文庫) ◇ 八百万の死にざま(早川文庫) ◇ 聖なる酒場の挽歌 ◇ 慈悲深い死 ◇ 墓場への切符 ◇ 倒錯の舞踏 (MWA賞最優秀長編賞) ◇ 獣たちの墓 ◇ 死者との誓い (PWA賞最優秀長編賞) ◇ 死者の長い列 ◇ 処刑宣告 ◇ 皆殺し ◇ 死への祈り ◇ すべては死にゆく(単行本) ◇ 償いの報酬 ◇ 石を放つとき(単行本)本書 【 目次 】 ◆ 夜と音楽と …… 5 マシュウ・スカダーとともに育って ブライアン・コッペルマン …… 7 窓から外へ …… 13 バッグ・レディの死 …… 67 夜明けの光の中に …… 121 バットマンを救え …… 155 慈悲深い死の天使 …… 183 夜と音楽と …… 209 ダヴィデを探して …… 217 レッツ・ゲット・ロスト …… 245 おかしな考えを抱くとき …… 271 ミック・バルー、何も映っていない画面を見る …… 301 グローガンの店、最後の夜 …… 307 著者あとがき …… 331 ◆ 石を放つとき …… 337 訳者あとがき …… 486 解説 …… 495
かんかんのうを踊らせる で有名な古典落語「らくだ」 兄貴分やらくだの生い立ちにも迫り肉厚の作品にーー 是非、ご一読をーーーー桂文治 『 一緒にいることこそが、不幸せではありませんか? 』 大きな体で大酒飲みの荒くれ者で、長屋や近隣の住民たちから嫌われていた通称「らくだ」。 ある日、らくだの兄貴分、半次が長屋を訪ねると、らくだが死んでいた。 半次はその弔いの金の工面をするために、通りかかったくず屋の久六を呼び止める。 らくだの死を知らされ、驚く久六だったが、半次に脅され、長屋の月番や大家に金品要求の言伝てを行うはめに。 出し渋るところには、らくだの死骸を運んで「かんかんのう」を踊らせ、ついには香典や物品を入手する。 やがて、久六はらくだの母親のもとに使いに出かけるがーー 【 複雑な滑稽咄を人情咄として再構成 シリーズ第3弾!】 ◆ 著者について 並木 飛暁(なみき・たかあき) 東京都在住。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。塾講師(国語)との兼業作家。 ライト文芸、児童書、落語脚本などを執筆。ナンセンス・コメディの劇団所属。 主な著書に、大学落語の大会に取材した小説「いざ、しゃべります。」 (メディアワークス文庫) 児童書「牛乳カンパイ係、田中くん」シリーズ、など。 小説 古典落語 順次刊行予定 第1冊『小説 真景累ヶ淵』(奥山景布子/監修 古今亭菊之丞) 第2冊『小説 牡丹灯籠』(大橋崇行/監修 柳家喬太郎) 第3冊『小説 らくだ』(並木飛暁/監修 桂文治) 第4冊『小説 西海屋騒動』(谷津矢車/監修 柳亭左龍) 第5冊『小説 品川心中』(坂井希久子/監修 柳家喬太郎)
まったく新しい、『女』の警察小説! 子持ちの女性幹部と、「警察官らしくない」レズビアンの部下が、 新宿歌舞伎町と二丁目で起こった猟奇事件に挑む! 歌舞伎町、新宿二丁目、三丁目を管轄する「新宿特別区警察署」。その担当区域の地図上の形から、「新宿L署」と呼ばれている。 その「L署」に本日着任の新井琴音警部は、小3の息子のインフルエンザで初出勤すら危ぶまれていた。 夫の敦は警視庁本部捜査一課の刑事だが、琴音のほうが階級は上で、夫婦仲はぎくしゃくしている。 大幅に遅刻しつつも琴音がなんとかL署に到着した途端、個性的な服装の女性部下・堂原六花巡査部長から管内で殺人事件が発生と聞く。 歌舞伎町のホテルで全裸の中年女性の遺体が発見され、その女性の息子がノコギリを持ち逃走中というのだ。 琴音は、レズビアンであることをカミングアウトしている六花から、L署が管轄するこの独特な界隈の歴史や情報を聞き、捜査に入る。 その夜、二丁目のショーパブで六花に会った敦だが、上階のイベントスペースで無差別殺傷事件が発生。犯人はその場で自殺したが……。 母であり妻であり警察署幹部である琴音と、レズビアンの異色捜査官として男性中心組織の中で闊歩する六花。 L署の他の面々と共に、事件解決に向けて奮闘する! いまの世の中の、全ての「生きにくい」と思っている方々に読んで欲しいーー(著者より)。 猟奇事件の捜査を縦糸に、二人の女性刑事の生き様を横糸に、エンタメ性たっぷりの物語の中、現代日本を生きるうえでの「息苦しさ/生き苦しさ」をリアルに抉っていく、新しいタイプの警察小説です! 第一章 貝女 第二章 スカーレット 第三章 浴室の美女 第四章 三つ編み 第五章 椎茸 第六章 愛と蛇
エッセイ、小説、絵画など、さまざまなジャンルで描く、死の淵から生還したからこそ見えてきた未来への希望とは。余命宣告を受け、奇跡的に生還した著者が綴る、明日へ向けた提言の書。残りの人生、どう考え、どう生きるか。
現在の東京・府中市の一角。そこはかつてハケ下と呼ばれ、多摩川が氾濫するたび大変な被害に見舞われていた。ハケ下大野郷の貧農に生まれた伊助と、浅間山の噴火で故郷を追われ流れ着いた志津。いつか豪農になることを夢見、開墾に明け暮れる日々。貧しくとも、家族に囲まれささやかな安穏を掴みかけていたが…。長年に亘り江戸庶民の暮らしを研究してきた著者が、懸命に生きた農民たちの人生模様を鮮明に描き出す意欲作。噴火、洪水、飢饉に疫病ー数多の困難が襲った江戸後期。度々訪れる災難、愛しい者の死。それでも一所懸命に前へ進んだ、名もなき農民たちの尊い暮らしの物語。
決して忘れることはないだろう、一緒に旅したあの日々を。スライムとの友情を描く代表作『Slime Slime Slime』他、記憶を消されて未来から過去に送り込まれてしまう『未来神』、体に神が降臨して教えが脳内に届くようになる『偽りのスフィア』…斬新な世界観で繰り広げられる珠玉の6作品を収録した短編集。王道RPGの世界。
転生先は、貴族家の血筋が魔法を独占する世界。三男とはいえ、侯爵家の子息として不自由なく暮らしていたが、成長と共に魔法の属性を無能と判断され、辺境へと飛ばされてしまった。それでもメイドのリーナや女騎士メイガンとの新生活で魔法の秘密に気付き、お気楽ハーレム生活を開始することに!
第一次大戦後の英国。国民を知力でランク分けするという大胆な政策を打ち出す脳務省に務めるキティは、脳務大臣のニコラスと密かに愛を育んでいたが、脳務省の権力が増大していく中、二人の愛は迷走する…百年の時を経て蘇ったフェミニスト・ディストピア小説!
自らの祖先に関心を寄せ、島を調査に訪れる大学人フェルサン。 彼と同じ血脈の末裔に連なる、浮浪者同然に暮らす男ドードー。 そして数多の生者たち、亡霊たち、絶滅鳥らの木霊する声……。 父祖の地モーリシャス島を舞台とする、ライフワークの最新作。 ノーベル文学賞作家の新たな代表作! ぼくは帰ってきた。これは奇妙な感情だ、モーリシャスにはこれまで一度も来たことがないのだから。見知らぬ国にこうした痛切な印象を持つのはどうしてか。父は、十七歳で島を離れて以来、一度も戻ったことがない。(…)父は戦後母と出会い、二人は結婚した。父は故国を離れた移住者、今で言う「一族離散(ディアスポラ)」による移住者だった。(「砂嚢の石」より) アルマ。この名はごく小さいときから言える。ママ、アルマと言う。ママとはアルテミジアのこと。母さん(ママン)のことはよく覚えていない。母さんはおれが六つのときに死んだ。(…)意地の悪い奴らは、母さんがよそへ行けばよいと思っている、レユニオン島生まれのクレオールで、分厚い縮れた髪をしているからだ。(「おれの名はドードー」より) 主な登場人物 フェルセン家略系図 モーリシャス島略図 序に代えて、人名 おれの名はドードー ゾベイード 砂囊の石 ラ・マール・オ・ソーンジュ ラ・ルイーズ クリスタル アルマ マヤ クレーヴ・クール マカベ ラルモニー エムリーヌ トプシーの話 クリスタル ……ドードー…… 森のなかで ポンポネット 洗足式 クリスタル(続) ある賭け マリ=マドレーヌ・マエの身の上話 パリ 罠 アディティ アショクの身の上話 ドードーは旅する レ・マール ある結婚式 幽霊 サクラヴーの身の上話 ブラ・ドー トカゲ 預言者 刑務所のクリスタル ディティの誕生 最後の旅 南へ 海 二つの家 楽園最後の日々 おれは名無しだ 変わり者、終章に代えて 参考文献、証言、教示など 感謝を込めて 訳註 訳者あとがき