出版社 : 文藝春秋
あの日あの場所で何が起きたのか(「道成寺」)、助けられたかもしれない命の声(「黒塚」)、原発事故によって崩れてゆく言葉の世界(「卒都婆小町」)など、エンターテインメントの枠を超え、研ぎ澄まされた筆致で描かれた五編。
秋のある日、大往生を遂げた男の通夜に親類たちが集った。 子ども、孫、ひ孫たち30人あまり。 一人ひとりが死に思いをめぐらせ、互いを思い、家族の記憶が広がってゆく。 生の断片が重なり合って永遠の時間がたちがある奇跡の一夜。 第154回芥川賞受賞作。
ダイビングのインストラクターをつとめる舟作は、秘密の依頼者グループの命をうけて、亡父の親友である文平とともに立入禁止の海域で引き揚げを行っていた。光源は月光だけーーふたりが《光のエリア》と呼ぶ、建屋周辺地域を抜けた先の海底には「あの日」がまだそのまま残されていた。依頼者グループの会が決めたルールにそむき、直接舟作とコンタクトをとった眞部透子は、行方不明者である夫のしていた指輪を探さないでほしいと告げるのだが… 311後のフクシマを舞台に、鎮魂と生への祈りをこめた著者の新たな代表作誕生。
犯罪のサポートと情報の売買。それがカーラの仕事だった。だが今回持ち込まれた依頼は危険きわまりないー“プログラム”への潜入の手配である。頻発する刑務所の暴動に手を焼いたイギリス政府が導入した矯正施設、“プログラム”。ゴーストタウンとなった住宅街を接収、二重の壁で囲み、そこで受刑者たちによる「自治」が行なわれている。依頼人は元狙撃兵の殺し屋ジョハンセン。カーラの手配でジョハンセンは施設に潜入するが…。依頼の背景を調べはじめたカーラは、次々に不可解で不穏な事実にぶちあたる。かつて彼女とジョハンセンが関わったギャングの抗争。元MI5の老スパイの死、謎の失踪を遂げた女性医師。警察、MI5、犯罪者たち…この一件の裏側で何か秘められた謀略が動いている。そして“プログラム”の中では、ジョハンセンに怨みを抱く大物ギャングが待ち受けていた…。ジョン・ル・カレばりの陰謀の迷宮。スタイリッシュなクライム・ノワールの語り口。最高にクールな女性ヒーローと巧妙なプロットでイギリス出版界を揺るがせた新人のデビュー作。
日本推理作家協会賞受賞! 心に刺さる連作短編集 都会から離れた島に生まれ、育った人々。 島を憎み、愛し、島を離れ、でも心は島にひきずられたままーー 日本推理作家協会賞受賞作を収録。 閉ざされた“世界”を舞台に、複雑な心模様を鮮やかに描く湊さんの連作短編(全六編)。 収録作「海の星」が日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞、選考委員の北村薫氏は、 「鮮やかな逆転がありながら、小説の効果のための意外性のため無理に組み立てられた物語ではない。筋の運びを支える魚料理などの扱いもいい。(中略)--ほとんど名人の技である」と絶賛。 自身も“島”で生きてきた湊さんが「自分にしか書けない物語を書いた」と言い切る会心作。島に生まれ育った私たちが抱える故郷への愛と憎しみ…屈折した心が生む六つの事件。推協賞短編部門受賞作「海の星」ほか傑作全六編。 みかんの花 海の星 夢の国 雲の糸 石の十字架 光の航路
日本公安警察vs中国マフィア 新たな敵はチャイニーズ・マフィア! 悪のカリスマ、神宮寺武人の裏側に潜んでいたのは中国の暗闇だった。青山ら公安がついに挑む。
「臨床犯罪学者・火村英生」斉藤工×窪田正孝で1月より連続ドラマ化 お笑い芸人志望の若者、アンチエイジングのカリスマ等、「若さ」をモチーフとした作品集。学生時代の火村英生の名推理もキラリ。
「福島の今を見てみたい」作家の羽鳥よう子は警戒区域“ゾーン”に足を踏み入れた。この世とあの世の中間、宙づりになった場所に懐かしささえ覚えるがー(「ゾーンにて」)。癌に冒された青年が福島から避難した牛飼いの少女と出会い、自らの生と向き合う「牛の楽園」など、極限に生きる命の輝きを描く四篇。
秀吉への貢ぎ物としてポルトガルから渡来したぎやまんの手鏡が映す物語は江戸時代の後半へ。八代将軍吉宗と尾張藩主宗春との確執から、田沼意次、平賀源内、最上徳内、シーボルト、そして黒船来航から新撰組や彰義隊の闘いへと移り、江戸は終焉を迎える。十年に渡って書き継がれた歴史絵巻がついに完結。
鏡磨ぎの梟助じいさんが大活躍するシリーズ第三弾! 五歳で死んだ一人息子が見知らぬ夫婦の子として生れ変ってた⁉ 愛犬クロの行動に半信半疑の両親は…梟助が様々な「絆」を紡ぐ五篇。
山間の温泉町へ向う列車から、8人の乗客が蒸発してしまった。前代未聞の難事件に取り組んだ中年警部・宇野は、聞き込みの先々で推理マニアの女子大生・永井夕子と鉢合わせ。二人はいつしか名コンビとなるが…。オール讀物推理小説新人賞を受賞した表題作を収める、記念すべき「幽霊」シリーズ第一弾!
その島には何かがいるー事故で片腕を失い、孤島に移住したエドガーは、突如、絵を描く衝動に襲われた。意思と関わりなく彼の手が描いたのは、少女と船の絵。これは何を意味するのか。夜ごと聴こえる謎の音は何か。そして島に建つ屋敷が封じる秘密とは。巨匠が久々に放つ圧巻のモダンホラー大作。恐怖の帝王、堂々の帰還!
絵師を目指す伊三次の息子・伊与太は新進気鋭の歌川国直に弟子入りが叶い、ますます修業に身が入る。だが、伊与太が想いを寄せる八丁堀同心・不破友之進の娘・茜は、奉公先の松前藩の若君から好意を持たれたことで、藩の権力争いに巻き込まれていく。伊与太の妹・お吉も女髪結いの修業を始め、若者たちが新たな転機を迎える。
抱腹必至。読まずに語り、読んで語る読書会 翻訳家、作家、作家であり装丁家の四人が名著『罪と罰』の内容を僅かな手がかりから推理、その後みっちり読んで朗らかに語り合う。
絢爛豪華たる安土桃山文化の主座を占める茶の湯。それは、死と隣り合わせに生きる武士たちの一時のやすらぎだった。茶の湯文化を創出した男とその弟子たちの生き様もまた、武士たちに劣らぬ凄まじさをみせる。戦国時代を舞台に繰り広げられる“もう一つの戦い”秀吉対利休。果たして実際の勝者はどちらなのか。傑作時代長編。
「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」 声の小さな皆川七海は、派遣教員の仕事を早々にクビになり、SNSで手に入れた結婚も、浮気の濡れ衣を着せられた。行き場をなくした七海は、月に100万円稼げるというメイドのバイトを引き受ける。 あるじのいない大きな屋敷で待っていたのは、破天荒で自由なもうひとりのメイド、里中真白。 ある日、真白はウェディングドレスを買いたいと言い出すが……。 岩井俊二が描く現代の噓(ゆめ)と希望と愛の物語。 岩井俊二監督作品 映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」 2016年3月26日公開 出演 黒木華/綾野剛/Cocco他 著者プロフィール・岩井俊二 1963年生まれ、宮城県出身。『Love Letter』(95)で劇場用長編監督デビュー。映画監督・小説家・作曲家など活動は多彩。代表作は映画『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』小説『ウォーレスの人魚』『番犬は庭を守る』等。『NewYork, I Love You』『ヴァンパイア』で活動を海外にも広げる。ヘクとパスカルというユニットで音楽活動もする。復興支援ソング『花は咲く』は作詞を手がける。『花とアリス殺人事件』では初のアニメ作品に挑戦、国内外で高い評価を得る。
多崎つくるは、鉄道の駅をつくるのが仕事。 名古屋での高校時代、4人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、4人から絶縁を申し渡された。 何の理由も告げられずに……。 死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時なにが起きたのか、真相を探るべく一歩を踏み出し、旅に出るーー。