1990年4月発売
シャーロック・ホームズ物語の背景…霧深きロンドンの建物、通り、広場、駅、橋。この本は、ホームズの活躍と時を同じくする、1879〜1914年撮影の200余枚の写真で構成されている。巻末には当時のロンドン市街詳細地図を添付。名探偵シャーロック・ホームズが医師ワトスンとともに、事件解決のカギを求めて歩き、人々に会い、犯人を追って馬車で駈けた、旧きロンドンの街々が、いま鮮やかによみがえる。“ホームズの目”で見るヴィクトリア朝の帝都ロンドン。
性のはけ口のない3年間の未亡人生活に別れを告げるため、熟母は我が子に救いを求める。若く逞ましい息子を見たとき、母は思わずツバを飲みこみ、花芯をおびただしく濡らしながら、肉体に導いていくが、禁じられた関係故に、その歓びはものすごいものだった。背徳の性に悶え悩みつつも母と子は…。
いったい犯人はだれなのか、父親か、精神異常者か、それとも、すべては妄想なのか?バザールのざわめきの中、人生の悲劇に初めて遭遇する少女の悲しみと恐怖、大学教授の彷徨の愛。東南アジアを舞台に展開される愛と妄想のサスペンス・ロマン。
死を覚悟した信長が、再び生をうけて、新しい天下国家づくりに乗り出した。“信長が生きていたら”という仮定のもとに、その後の彼の“野望と行動”を、大胆な設定と著者ならではの着眼点で描いた異色作。
なぜ、建武の新政が暗礁に乗りあげたのか? 根本には、公卿は武家を蔑視し、武家は公卿を軽んじていたからである。それが端的に論功行賞に現れ、武家の不満は爆発した。武家は不平のやり場を尊氏に求めたが、この趨勢を心苦く思っていたのが、大塔ノ宮だった。尊氏を倒せ! その作戦は宮のもとで練られていた。北東残党の蠢動は激しく、宮には絶好の時かと思われたが……。 建武の新政が、早くも暗礁に乗りあげるーー公卿は武家を蔑視し、武家は公卿を軽んじる。それが端的に論功行賞にあらわれ、武家の不満は爆発した。武家は不平のやり場を尊氏に求めたが、情勢は混迷を深める。 ■建武らくがき帖(つづき) 今・道鏡 夕顔晩歌 男 山 毛抜き 初雪見参 北山手入れ 土の牢 ■風花帖 野分のあと 東景色 義貞・駁す 網引き地蔵 門 風 花 内裏炎上 小公子 第五列 魚見堂 筑紫びらき
著者の故郷を舞台にそこに住む人々とその暮しを描く。厳しい自然と対峙する強靭な生命力のしたたかさ。優しく哀しくユーモア滲む短篇の名手・三浦哲郎の瑞々しき豊饒の世界。「金色の朝」「がたくり馬車」「沈丁花」ほか〈故郷〉の匂い染み込む作品群十六篇。新境地を拓いた著者ならではの短篇集。
十津川の部下の清水刑事が、27歳になって、見合い結婚した。新婦の征子は健康的な物おじしない、しっかりした女性だった。新婚旅行は、東北の鳴子温泉から、最上川下り、さらに日本海の温泉を回るルートを選んだ。その旅行の途中、同じルートをたどる。もう一組の新婚カップルを見かけた。だが、観光の名所、お湯の噴き出る〈かんけつ泉〉では、相手の夫が別の女と一緒にいた。その後、征子は何者かに襲われけがをし、急行「もがみ一号」の車内で、問題の女性も殺された。清水から報告を受けた十津川警部も捜査に乗り出したが…。トラベルミステリー。
首から下げた天宝通宝を守り銭とした二本桐の武吉は、右肩に負った刀傷を癒すため、信玄の隠し湯として知られる下部温泉に逗留していた。そこへ勘助と名乗る男が現われ、武吉の恩人・野州越堀の仁五郎親分が危ないと告げた。しかも一人娘お絹は心細さのあまり〓@4AC3れ果てているという。傷が癒えぬまま、武吉は一路、奥州街道越堀宿をめざしたが、そこには思いもよらない裏切りが待っていた…。(「雪に花散る奥州路」より)陰謀渦巻く街道に、女のために命を賭ける男たちを描く傑作時代小説。
樋口には強姦の前科があった。実刑判決を受けて1年前に出所したばかりだった。それ以外にも何人の女を暴力でものにしたか知れないが、訴えられたことはまるでなかった。すべて女の泣き寝入りだった。出所後はさすがになりを潜めていたものの、一度覚えた味は忘れられなかった…。夏の軽井沢の山荘を舞台に、頭をもたげた“悪い虫”がもとで恐るべき殺人事件に遭遇した男を描く表題作など、二転、三転する巧みな構成で読者を魅了する著者会心の傑作推理集。
猫を語り手に苦沙弥・迷亭ら太平の逸民たちに滑稽と諷刺を存分に演じさせ語らせたこの小説の特徴は溢れるような言語の湧出と歯切れのいい文体にある。この豊かな小説言語の水脈を発見することで漱石は小説家の道を踏み出した。