1991年3月1日発売
浅草松竹のプロデューサー・東五郎は戦後自由党院外団の幹部となり、右翼・ヤクザとの深いつながりをもちつつ保守政治の舞台裏を生きぬき、岸信介刺傷事件の黒幕とされた…。『最後の博徒』『伝説のやくざボンノ』の正延哲士によるドキュメンタリー・ノベルス。
準男爵である父の死後、キルクレイグ家は、破産状態だった。ダビータは、義姉で女優のバイオレットを頼りに、スコットランドを出て、ロンドンに向かった。はじめて見るロンドンは、夢のようであり、その華やかさに、彼女は魅了されてしまった。ある夜、ダビータは、レストラン・ロマノで、パンジ侯爵と出会った。女泣かせの彼の噂を聞いていた彼女は、思いがけず、彼の、ハンサムで、威厳のある風格に見とれた。ところが、次第に心を許しはじめたダビータに、侯爵はいきなり、スコットランドへ帰るよう、いい放つのだった。
ハリウッド、ビバリーヒルズ。豪邸住まいの淑母に留守番役を言い渡されスザンナは浮かれ気分だ。憧れのロールスロイスで、海岸へドライブに出かけた。ところが、途中で道に迷い、あげくの果てに車が故障。困ったスザンナは、近くのビーチハウスへ助けを求めた。ドアを開けたのは、黒みがかった鋭い瞳の男。男は故障を直し、窮地を救ってくれた。しかし、スザンナは、彼の質素な服装から、失業中と思い、同情する。数日後、再びスザンナの前にビーチの男が現れた。その時まで、彼があの有名なデザイナーC・J・ヤングだとは思いもしなかった。
キャリーは腕ききの株式仲買人。離婚後、自立して、着々とキャリアを築いている。ところが、ある日、おかしな客がやってきた。将来性のない株を大事に持ったその男は、黒い髪にブルーの瞳を光らせてキャリーのアドバイスを待っている。こういう時は、納得のいく資料を見せるのが一番だ。ところが、あいにく、目の前のコンピュータは故障中。隣室のスクリーンを見て、戻ってみると、男は、コンピュータを分解し始めているではないか。キャリーは、ペースをくずされっ放しだった。
下野国佐野ノ庄を知行地とする新御番五百石の佐野善左衛門政言とその弟の小源太義久の上に、権力者老中田沼主殿守意次と若年寄田沼山城守意知父子の横暴な手が下された。佐野家の系図と七曜の家紋の旗印はとりあげられ、鎮守様の大幟佐野大明神の文字も田沼大明神と書き替えられてしまった。佐野ノ庄をねらう田沼父子の陰謀とは。堪忍袋の緒を切った善左衛門は、江戸城中でついに山城守意知に斬ってかかった。その結果、善左衛門は切腹を命じられたが、“世直し大明神”として世にもてはやされた。一方、能勢家に迎えられた弟の義久は能勢小源太とその名を変え、営中巡察役・大御番組頭として堂々と不倶戴天の敵である主殿頭と対立していった。はたしてその結果は…。
時は八代将軍徳川吉宗のころ、尾張六十一万石の殿様宗春の周辺には奇怪な影があった。牛込水道町の酒問屋「兵庫屋」を襲った怪盗五人組は、必死に追う捕方の目をくらまして、屋張家市ガ谷御殿の辺りでその姿をかき消した。つぎつぎに豪商が五人組に襲われたが、米問屋の奸商田島屋伝兵衛方の地下金蔵から五人組が奪った四千両は偽金であった。吉原に遊ぶ尾張宗春を警護する近習頭は浜島庄兵衛であったが、その正体とは…。歌舞伎でおなじみの“白波五人男”-弁天小僧菊之助・赤星十三・南郷力丸・忠信利平、そして日本駄右衛門、この怪盗五人男が大江戸を舞台にくりひろげる豪華絢爛の物語。“白浪五人男”を新解釈で描いて、第二回日本作家クラブ賞受賞の記念碑的作品。
慶応4年2月、日本海の波涛を蹴り立てて一艘の船が北上していた。源義経が埋蔵したという黄金を求め、蝦夷を目指すその船の長こそ、三月前、京都近江屋で暗殺されたはずの坂本竜馬であった。刺客が中岡慎太郎とともに斬殺したのはまったくの別人だったのだが、西郷隆盛、T.グラバーの協力のもと、竜馬は人違いを利用して、来るべき新政府の財源作りを担うこととなったのだ。行手に待ち受ける巨大な罠と黄金。従うはナイフ投げの名手で混血の美女お夕紀。かくて蝦夷への冒険行が開始された…。果たして竜馬の運命は?黄金はどこに?注目の気鋭が大胆な構想で描く冒険サスペンス・ロマンここに誕生。
「新宿柏木署の署長の娘佐智子が家出、AV女優となったが、その後消息不明に。なんとか極秘裡に捜し出せ」指令を受けた警察手帳を持たぬ刑事香月功は、美貌の助手志賀今日子と捜査を開始、佐智子のヒモと判明した暴力団黒柳組の久米島のマンションに向かったが、そこには同じ組の組員森川の死体があった。やがて、久米島が佐智子を利用し美人局を働き、大手進学院の院長を恐喝していた事実が浮上したが、直後、久米島の他殺体が自宅前で発見された…。はたして佐智子の行方は?事件の背後には何が存在するのか…。周到な取材をもとに熟達の名手が贈る、ますます人気快調の“顔のない刑事”シリーズ待望の書下ろし第十弾。
「あなたが茂を殺したのよ」広告代理店局長の山倉史朗は、狂乱した冨沢路子の前で絶句した-。路子の一人息子茂が誘拐されたのだが、脅迫は、なぜか山倉に向けられていた。犯人は山倉の息子隆史と、近くに住む同級生の茂を間違えて誘拐したらしい。密かに布かれた警察の監視網の中、山倉は身代金六千万円を持って、人質の茂を引き取りに、指定された場所へ向かった。が、犯人との接触に失敗し、翌日、茂は死体となって発見されたのだ。誰が?こんな残酷なことを?やがて浮かんだ容疑者三浦には、アリバイがあった。犯行当日、名探偵にして作家の法月綸太郎と一緒にいた、というのだ…。本格ミステリ界期待の新鋭が贈る、驚愕のドンデン返し。
銀行員ヨーゼフ・Kは、ある朝とつぜん逮捕される。理由はいっさいわからない。判事にきいても、弁護士にたずねても、なぜこんなことになったのか、教えられないまま、二人の男に〈犬のように〉殺されてしまう。〈不可解〉を通して人間の核心にせまるカフカの代表作。
「絶対的悪夢の戦慄すべき象徴化」と評されるディック初期の短篇作品群は、著者自らが語るように、後の長篇代表作の原型となるものである。廃墟を徘徊するミュータントの群れ、物質の奇襲される人間の恐怖、極限的なパラノイア状況など、ディック・ワールドの中核をなす自己と現実の崩壊の物語を中心とした選り抜き12篇に、本邦初訳、子供とロボットの交感とその悲劇的な結末を描いた「ナニー」を加えた傑作短篇集。
息抜きがてらビターソーンと二人きりの時を過ごそうと、セーラはアイアソン埠頭の家を訪れた。だが、例によって事はうまく運ばない。高価な骨董品、ビルバオ鏡が留守宅に置き去りにされていたのを皮切りに、遂には殺人事件までが大発生。しかも、あろうことか第一容疑者と目されたのは…。北部の自然を背景に展開するシリーズ第4弾。
わたしの名はディライラ。職業、私立探偵。その日わたしは、見知らぬホテルの一室で目をさました。ベッドには男の刺殺体が転がっている。なぜこんな羽目に陥ったのだろう?パニックをこらえつつ、わたしはその日の行動に思いを馳せた…。六か月前、眼前で殺されていった夫の記憶に悩まされながら、ひとり窮地に立ちむかう女探偵。カリフォルニアに展開する新シリーズ第一弾。
おれはウェーバー・グレグストン。映画監督はもうしてない。でも親友のフィルはホラー映画のシリーズをあてて、監督としちゃ絶好調。その男が、新作の完成直前にライフル自殺しちまった。やつはおれにビデオ・テープを残してた。なかには、小さい頃に亡くしたおれの母親の、飛行機事故で死ぬ最後の数分間が映ってて…。『月の骨』『炎の眠り』を超える、キャロルの到達点。