1993年8月発売
1945年4月30日、ヒトラーは自殺し、ナチス・ドイツは崩壊。数日後、デーニッツの命を受けて一隻のUボートがひそかにブレーマハーフェンを出ていく。謎の男と積荷を載せて。1990年夏、クレタ海。嵐がすぎた海をただよっている小舟に、漁師の死体があった。その手が握っていたのは騎士十字勲章。死体の陰に隠れていたのは、見まがいようもなく、金塊。3ヵ月後のエーゲ海。トルコ領の離れ小島の重罪犯監獄で、元イギリス海兵隊コマンド隊員マイケル・ローガンが呻吟している。麻薬組織の罠にかかり、20年の長期刑をくらったのだ。その日は重労働の屋外作業。突然、沖合から高速艇が突進してきて、ウェット・スーツの男がさけんだ。“早くこい、ローガン。ハリーだ!”男は昔の密輸仲間のハリー・ドナバンだった。行方不明のUボートをさがしている、金塊を積んでいるはずだ、宝さがしに手を貸せ、と言う。
クイン・パーカー・シリーズ第2作。サンフランシスコに住むクインはセラピストという名の無職。というのも、事故による“六桁”の補償金を株に投資して大儲けしたから。家族は猫のローラとインコのオスカー。つまり独身である。親友のハンク・ウィルキーは独演が宿願の売れないコメディアン。問題は家計と芸道の両立。そのハンクに弁護士から書類がとどいた。学生時代の尊敬する友人が死に、ジャマイカ島の浜辺の家とすばらしい景観の十五エーカの土地を遺贈するという。時価五十万ドル。その日暮らしのハンクには胆をつぶすような金額であり、夢のような話だ。さっそく弁護士に電話すると、麻薬取引きのこじれによる射殺が死因という。驚いたハンクは頼りになる友人クインに同行をたのみ、結局二人はカリブ海に飛ぶ。ところが現地についてみると、二人の周辺には不気味な影がただよい、夢は悪夢と化していくのだった。
極度に発達した“メディア”が支配し、現実と疑似現実が錯綜する近未来都市・東京では、麻薬テクに溺れ、罪悪感をなくした若者たちが犯罪を繰り返していた…。電脳少女・ユイは、超人的パワーとアイドル並みのルックスで、麻薬テク組織の壊滅へと乗り出すが、彼女の行手には次々と強敵が出現して…。鬼才が贈る近未来アクション長編。
竜堂家のスーパー四兄弟(ドラゴン)の超(ウルトラ)パフォーマンスを悪用し、世界征服を狙う四人姉妹(フォー・シスターズ)の極東のボスは、極秘の作戦を展開する。終(おわる)、余(あまる)の年少組を捕まえようとドーム球場に穴をあけたのにこりず、次兄続(つづく)を新宿の摩天楼に追いつめる。忍耐の限界に達した続は巨大な竜に変身し、悪の亡者どもを火炎の中に迎える……。
マーチ家の四人姉妹ー、長女のメグは温順な美少女、次女のジョーは活発で作家志望、三女のベスは心優しく内気、末っ子はおしゃれで絵の好きなエイミー。南北戦争に従軍中の父と、その留守を守る母の愛情につつまれて、貧しくても自分らしく精いっぱい生きる姉妹の一年間を描いた、アメリカ文学の不朽の名作。
シチリアの因習的な田舎町に住むアンネッタは十六歳の少女。いつも両親のきびしい監視があって自由に行動することもできない環境のなかで、神様にあこがれ修道尼になりたいぐらい。はては神父が僧衣の下にはいているズボンにまであこがれる。だが、ズボンは男か淫売がはくものと母親に教えられ、男にはなれないアンネッタは淫売になりたいと思う。淫売といっても、この地方の用語では「奔放な女」という程度の意味。そして、その典型みたいな同級生アンジェリーナと親しくなり、裕福な彼女の家に出入りするようなになって、ニコラというボーイフレンドができたものだから、家族は大騒ぎ。ついには無理矢理、叔父のところへ追放を決められる…。シチリア島南西部の港町リカータを舞台に、昔ながらの因習に翻弄されながらも自由にはばたこうとする思春期の女の子の普通の生活感覚をみずみずしくユーモラスに描く。ヨーロッパで記脇的ベストセラーをつづける、十九歳の著者のデビュー作。
対馬海峡に設置された米軍最高機密「DESUBEL」。わずか直径一mの聴音器が半径一万キロの船舶・潜水艦の機関音を拾う。この超兵器を狙い、ソ連の特殊潜水艇「ミゼット」が忍び寄る。が、超音器を護衛する「ソードフィッシュ」機雷の攻撃を受け行動不能に。起動すると自ら索敵・迎撃するホーミング魚雷を内蔵したこの機雷が、付近を航行する一般船舶を攻撃するのを阻止するため、海自の掃海艇「なるしま」が出動した。
出版されればベストセラー間違いなし。不朽の名作〈氷のなかに裸で〉の続編を書くことになったジャクリーン・カービーは、原作者の故郷で執筆を始めた。しかし、のどかな山あいの田舎町には、作者の不遇な過去と死にまつわる謎が秘められていた。ついにはジャクリーンも命まで狙われ…。世の中、幸運ばかりじゃないのよね。1989年度アガサ賞受賞作は満足度バツグンの本格ユーモア・ミステリー。
戦乱の世に、その戦上手を生かしてのし上ってきた浅井新三郎亮政、その子・久政、そして妻お市の兄信長と越前・朝倉氏との狭間で苦脳する長政…。琵琶湖の北、江北の地に三代に亙って覇をとなえてきた浅井氏を雄渾に描き切る書下ろし時代長編。
新興高級住宅街に住む新婚早々の若妻・長谷部由美は、買物を終え戻った新居の裏にある夫婦の秘密の洞窟から流れてくる異様な雰囲気に捕われた。足音を忍ばせ淫靡なすすり声が洩れてくる奥へと向った彼女の瞳に映ったのは、あろうことか出勤中のはずの夫が白い女体と縺れ合う姿であり、その女の顔を見た由美は驚愕に目を瞠った…。由美が犯され全裸で殺害された日から美女達を狙った連続猟奇殺人事件が起った。
友情を保つには優しさがあればいいが、愛を確かなものに育むには〈強さ〉が不可欠だ。美しい女になったヒロシとの関係に思い惑う主人公の亘。失われていく〈男〉への断ち難い思いの中で、新しい性のありようを問う長篇書下ろし小説。