1997年6月発売
本選集は日本推理作家協会が、1996年に雑誌等に発表された数多い短篇推理小説から、すぐれた15篇の傑作を選出して、推理小説界とSF界の1996年の展望と共に収録した代表作アンソロジー「決定版推理小説年鑑」です。
香港の孤児院に冒険小説を読みふける少年がいた。心の支えである初恋の少女を亡くした少年は成長して、鮮やかに盗みを繰り返す謎の怪盗サイモン・テンプラーとなった。世界制覇を企むロシアの石油王トレティアックの依頼でオックスフォードの科学者エマに接近したサイモンは、エマの純粋な魅力に惹かれ一度は盗みを止めようとするが…。トレティアックの巨大な陰謀に巻き込まれた二人の運命は。
ベルリンの壁崩壊の夜、名のない女に殺された作家の俺は眼と化し、街に出た女を追った…。ムージル『特性のない男』、デーブリーン『ベルリン・アレクサンダー広場』、カフカ『流刑地にて』、ベン『屍体公示所』、グラス『犬の年』、ワーグナー『パルジファル』、エーコ『フーコーの振り子』、プラトン『饗宴』-多数の引用による仕掛けと冷徹な描写力とが、究極の合一「愛」を求める男女とドイツの苦悩を描き出す。ヴァルザー賞、バッハマン奨励賞、クルチウス奨励賞等に輝く鬼才の野心作。
新宿歌舞伎町・平日の午後。不思議な力を操る美形の男・榊浩司と出逢った高校生・西河波久は、徐々に自分の内に眠る能力に目覚めてゆく。孤独だった波久に運命的な愛を教えてくれた榊。だが、榊がある組織から命を狙われていることを知った波久は-…。
高校時代の親友・和成と、偶然バイト先で再会した宏紀。しかし、過去の事件を忘れられない宏紀は和成にぎこちない態度をとってしまう。そんな時、二人は思わぬ社内のトラブルに巻き込まれてしまい-。気鋭の新人・小田浅葱の初BBN、二人の高校時代を描いた書き下ろしを加え、鮮やかに登場。
友人の裏切りによって史貴は、敵対するマフィアの手に落ちてしまった。行方を捜すアレックスは、彼の喪失に予想だにしない痛みを覚える。やがて突然の帰宅を果たす史貴だったが、その心と身体には消えようもない「傷」が-。交錯する愛憎に翻弄されるかりそめの家族は-?ハードロマン、ついに完結。
漢の英傑・武帝、七十年の生涯。『太陽王』と称えられる漢の武帝。西域経営を始めとする対外膨張、対匈奴討伐、儒教の国学化などで、漢の威令は東アジアを圧した。しかし、年老いた武帝は、皇太子と皇后を自殺に追いやってしまう。光と影に彩られた武帝の波乱に満ちた生涯を描く、スペクタクル大歴史ロマン。
関係ないのに仕切られたら、生きる努力を哄笑われたら、親切ごかしで監視されたら、あなたは電波になって逆襲する!?愛する「猫」を失った私に襲いかかる「世間」という名の妖怪たち。都会で働く単身女性の、孤独で切ない闘いが始まる-。
ある朝マチユは、肺癌であと数カ月の命だと告げられた-未来のない彼を、愛人は、かつての恋人は、そして妻は、どう受けとめてくれるのだろうか…。六カ月もしたら、僕は消えてなくなってしまうんだ-。死を宣告された彼を慰めてくれるものは何なのか。パリの街をさまよう孤独な男の心模様。死に直面する人間を描いたサガンの最新小説。
英国有数の貴族ホートン公爵の大邸宅で、名士を集めて行われた「ハムレット」の上演中、突如響きわたった一発の銃声。垂幕の陰で倒れていたのは、ポローニアス役の英国大法官だった。事件直前、繰り返されていた謎めいた予告状と、国家機密を狙うスパイの黒い影、そして、いずれもひとくせありげなゲストたち。首相直々の要請により現場に急行したスコットランドヤードのアプルビイ警部だが、その目の前で第二の犠牲者が…。英国本格黄金時代を代表する名作。
20歳も年上のカメラマンとの関係に苦悩する都は高校の写真部長。彼女が絶好の被写体と狙いをつけた隆之は、ラグビー部の同性のチームメイトに秘かな恋心を抱いていた。傷つき悩みながら、互いにいたわりあうふたり。やがて、それぞれに決断の時を迎える。愛に悩み、性に惑いながらもひたむきに生きる18歳の、等身大の青春像をみずみずしいタッチで描く長編小説。
聡明で、魅力的な表情の女性だー十七歳の直樹が年上の早苗に抱いた第一印象である。高校生のバイオリニストの直樹は、音楽を愛しながらも、ピアニストの父と同じ道を進むことをためらう。そんなある時、美貌の早苗に出会った。その時から彼の生活に明らかな変化が起きる。高校生の愛と自立、人生の試練を流麗に描く青春小説。