1999年8月発売
戦争で両親を亡くした男の魂が肉体を離れて海辺をさまよう。親代わりの女は、なんとか肉体に戻るよう懸命に魂に語りかけるが…。表題作「魂込め」ほか短篇六篇を収録。戦争と沖縄、新感覚で描く、記憶をめぐる物語。芥川賞受賞後、初の作品集。
依頼を受けること。そこに、理由などはいらない…。ヤクザの組長の家に生れた過去を持つ相良治郎は、血みどろの抗争を嫌悪しながら市民社会にもなじめず、探偵の道を選んだ。「探偵とは他人の心の中を旅する職業」と、静かにしかし熱く事件を追う。藤田宜永の送り出した新しいヒーローが渋谷の街に現れ潜んだ。この6編の事件簿は、まさに探偵小説の現在形と呼ばれるにふさわしい。
李哲博と朴政道は民族学校からの親友。李はボクシング、朴はサッカーで名の知られた選手だったが、二十代半ばを迎え、挫折感を抱いたまま、ともに歌舞伎町のホテトルを経営していた。一攫千金を狙いポーカー賭博屋を開いた二人は、次々と事業を拡大。自分たちの夢を実現すべく、いわくつきのビル買収という大博打に乗り出すー。欲望の街・新宿を舞台にした、手に汗握る暗黒小説。
これはスゴい、そこまで書くかと右翼が驚き、左翼も呆れた前代未聞の「天皇小説」。天皇とは、日本人にとってどんな存在なのか。われわれはなぜ、これほど天皇にこだわるのか。監獄、右翼左翼、精神科病院、北朝鮮と、さまざまな「非日常」のフィルターを通して見てみたらー。獄中で執筆され、獄中で新日本文学賞を受賞したデビュー作にして超問題作、大幅加筆を経て、文庫版で復活。
鬱蒼としたロッキー山中の薄暗がりを、ライフルを肩に「獲物」を追う男が影のように動いていく。標的は、何も知らずに自然を楽しんでいる若い美女。きわどい描写と本物の死の苦悶が売り物の違法ビデオ撮影のために、「出演者」を狩っているのだ。今捕獲している二人のほかに、もう一人至急入用になった。囚われた「獲物」たちに生き延びる道はあるのか…。前代未聞の極悪猟奇犯罪。
地方のテレビ局でリポーターを務めるバリーは、大統領夫人のヴァネッサから思いもかけず呼び出された。突然死で愛児を失って悲嘆に暮れるヴァネッサの目的は判然としない。職業意識を刺激されたバリーは、密かに大統領夫妻の身辺と突然死の真相を探り始めるが、浮かんだのは大統領の冷酷な本質と、死因に対する拭い去れぬ疑惑だったー。ラヴ・サスペンスの女王が贈る注目の大作。
謎解きが進むにつれて血は流される。グレイとデイリーの協力のもとに、バリーは恐怖を克服しつつ調査を進める。明らかにされる大統領の過去、そしてグレイの過去。男たちの相克は今、バリーの眼前で苛烈な復讐劇を生もうとしていた。追跡、脅迫、そして救出…。息詰まる展開の末に彼女が突き止めた苦い真実とは何か?権力者たちの実像と家族の葛藤をサスペンスフルに描き切る終幕。
「…勝者、本田飛鳥ぁぁぁ!」。繚乱女学院名物「部対抗予算争奪戦メガファイトトーナメント」は1年生・本田飛鳥の劇的優勝で幕を閉じた。そして季節は卒業シーズン。穏やかな雰囲気も束の間、卒業パーティの正装をめぐり大問題が発生!!洋装派・新堂環、和装派・北条虎美と3年両巨頭が決別したため事態は深刻さを増していった。さらにお馴染みの面々も次々に宣戦布告!!メガファイト番外編が成立、今度は学院そのものが舞台のストリートファイトだ!!学園熱血格闘アクション。
グラマラスでとびっきりの美少女、来恩寺要子18歳!専門学校生。母との確執から大東京でひとり暮らしをはじめた彼女のアルバイトはストリッパー!月収100万円!さっそくまいこむ写真集の話!が、その美しさに目を止めた分子工学(モレキュラーテクノロジー)の権威、真栄城博士の決断が、ヨーコを未知の戦士へと変えた!その日から“星を継ぐ者”を自称する『エバキュエイター』の攻撃が!2万年も生きているという人類存続機関MEOの構成員が、次々とヨーコの前にっ!
日本連邦連合艦隊は枢軸国艦隊を撃破すべく一大艦隊を編成しサイゴンへと移動した。満州では龍、虎部隊がソ連機械化騎兵軍を相手にゲリラ戦を展開していた。そして、南支那海を舞台に雌雄を決する「天一号作戦」が発令された。1948年、核の力を背景に合衆国大統領マッカーサーは単冠の日本連邦海軍基地に奇襲攻撃をかけてきた。乱れ飛ぶファントム、サンダーバード!太平洋の覇権をめぐり、日米の壮絶な戦闘の火ぶたがきっておとされた。果たして日本連邦に勝機はあるのか?壮大な発想で描く長編戦略シミュレーションノベルス第二弾。
国際生花シンポジウムの開催地・京都で雑誌記者が謎の死を遂げた。五百年の歴史を誇る華道家元の座をめぐり、様々な思惑が複雑に絡み合う中、第二の犠牲者が。連続殺人の裏には何が隠されているのか?美しく桜が咲き乱れる古都で、伝統と格式のもとに封印された秘密に、浅見光彦が挑む!著者にとって記念すべき百冊目の作品となった傑作長編。
嗅覚が極度に発達した隻眼の男・阿川。彼は死んだ犬に付いていた匂いを、バーで出会った女に嗅いだ。が、一夜を共にした後、女も急死。悲劇の香りを辿れば、そこには男を破綻させた過去と女の一家の不幸があった。カニス、ラテン語で犬。昏い伝言を嗅ぎ回る男にも魔手が迫る。幻想にむせ返り、心震える傑作。
藪で、蛇を踏んだ。「踏まれたので仕方ありません」と声がして、蛇は女になった。「あなたのお母さんよ」と、部屋で料理を作って待っていた…。若い女性の自立と孤独を描いた芥川賞受賞作「蛇を踏む」。“消える家族”と“縮む家族”の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く「消える」。ほか「惜夜記」を収録。
21世紀初頭に起こった核戦争と、その影響で出現した「妖獣」により、人類はその数を大幅に減らし、種としての存続が危ぶまれていた。荒野となった地上に君臨する妖獣を捜索・攻撃する特殊部隊「アウローラ」は、人類の居場所を作るべく、休む間のない戦いの日々を過ごしていた。ある日、アウローラ隊隊長沖原は、独立を主張している都市「ラオディキア」の捜索を命じられる。沖原は、そこで、不吉な予言と、得体の知れない不気味な物体の動きを察知する。そして、ジェネシスと妖獣の存在に係わる秘密が、暴かれていく…。シリーズ最終話堂々の完結。
三人の男女が織りなす「純愛」と「エロス」。ジャンを深く愛しながらも、屈折した自己愛ゆえに極端なまでにその感情を抑制するクレール。彼女はその反動から年若い友人アンヌの美しい肉体をおもちゃのように弄ぶ。そんなクレールに対して絶対服従の姿勢をとりながら、いつしか禁断の快楽の影の支配者となるアンヌ。恋愛の深層心理を描ききった、果てしなく甘美な物語。