2003年2月発売
敵か? 味方か?お前はどちらだ。仙台藩主・伊達綱宗は幕府から逼塞を命じられた。放蕩に身を持ち崩したからだという。明くる夜、藩士四名が「上意討」の名の下に次々と斬殺される。疑心暗鬼に陥り混乱を来す藩政に乗じて権勢を増す、仙台藩主一族・伊達兵部と幕府老中・酒井雅楽頭。その謀略を見抜いた宿老の原田甲斐はただひとり、藩を守る決意をする。
奴等の企みを潰すため、俺は鬼になろう。仙台藩六十二万石を寸断──。酒井雅楽頭と伊達兵部とで交された密約が明らかになった。嫡子を藩主の座に据えることに血眼になる兵部だが、藩の取潰しを目論む幕府にとってはその駒に過ぎない。罠に気付いた原田甲斐はあえて兵部に取り入り、内部から非謀を破却。風前の灯となった伊達家の安泰のため、ひたすら忍従を装う。
お前の目論見は終わる。この命と引き替えだ! 切腹、闇討ち、毒殺。親しき友が血を流す様を「主家大切」一義のため原田甲斐はひたすら堪え忍ぶ。藩内の権力をほしいままにする伊達兵部は他の一門と激しく対立し、ついに上訴へと発展する。評定の場で最後の賭けに出る甲斐。すべては仙台藩安堵のために─。雄大な構想と斬新な歴史観の下に、原田甲斐の肖像を刻んだ歴史長編。
一度口にすれば、誰もが虜になる魅惑の食材の秘密。某国の外務大臣を癒す、恐るべきストレス解消法。ブラックな笑いと前人未到の恐怖に彩られた異色短篇集を召しあがれ。 (解説・山田正紀)
喫茶店「ブルーリップ」の美人ウェイトレスが自室で殺された。畳には大量の竹が敷き詰められ、その中央に全裸の遺体が横たわっていた。容疑者にはアリバイがあり、被害者には過去があり、目撃者には邪心があった。そこに現れたのが間暮警部。持ち前の美声で昭和の名曲を歌ってから言い放つ。「犯人はこの部屋の中にいます」-表題曲ほか『別れても好きな人』『四つのお願い』『ざんげの値打ちもない』など懐かしいヒット曲の裏に隠された真実が、いまここに明らかになる。
迷宮入りもやむなしと思われた事件が幾度、彼の手で解決されただろうか。3000体もの変死を扱った空前絶後の検死官・芹沢常行。鍛えられた勘と技術は「自殺」を「他殺」に変え、意外な真犯人を暴き出す。人呼んで「逆転検死官」。ワトソン役の作家・山崎光夫がその奥義に迫り、難事件の真相解明に挑んだ。
弟は隣家から聞こえてくるユーモレスクが好きだった。六年前に行方不明になった弟・真哉。鏡合わせに一棟を分けた隣家は、それ以来「近くて遠い」場所となった…。不在の人の記憶が紡ぎ出す切ない物語。
サラリーマンの堀慧一は煮ても焼いても食えない後輩の高須賀和正と社内恋愛中。堀は相変わらず高須賀に強引に抱かれ、散々喘がされるが、堀一筋な態度についついほだされてしまう。そんなある日、親の海外赴任で実家に戻ることになった堀。家人が居ないのをいい事に高須賀はそのまま同棲に持ち込むが、新婚生活は思いもよらない人物のせいでとんでもない方向に…。
『クローディアの秘密』から『ハリー・ポッター』まで、俄然注目を集めているファンタジー小説ーー英語圏の現代児童文学の代表的な作家の作品を収録したガイドブック。
大坂城落城に際して、真田幸村は五人のっくノ一に秘策を与えた。忍法の限りを尽くして秀頼の子種を身ごもり、徳川家の再興をはかれというのだが・・・。千姫と家康、伊賀忍法と信濃忍法の凄絶な戦い。
いつもと同じはずなのに、何かがしっくりこない。テーブルの角が見つめている。部屋に穴があいている。何かがおかしい。この前買ってきたアンティークの鏡台が?祖父が?彼女が?それとも僕自身がー?日常にひそむ些細なずれが、人を恐怖に、あるいは不可思議な世界へと招き入れる。原田宗典が想像力の限界に挑み、現実と虚無の間にひそむ異空間を描いた奇妙な短篇集。
日常世界の中でふと垣間見てしまった性の秘密に戸惑いながら、大人への階段を昇ってゆく少女の姿を描いた「世界の真ん中」。村祭りで出会った見知らぬ年上女性に誘惑され、熱く夢のような一夜を迎える少年の心情に迫った「ホップ・ステップ」etc。空港で、更衣室で、金木犀の茂みの中で、性の悦びが光る波となって、私を陶酔の海へと導いてゆく…。未知の扉の向こうに、新しい自分を発見する13の物語を収めた傑作官能小説集。
時の権力者太閤秀吉を口先だけで遣り込める、町人出身の御伽役・曽呂利新左衛門の当意即妙の受け答え、抱腹絶倒の頓知の連続。特に「正月の吉夢」の富士山・鷹・茄子の主張は圧巻である。
英雄となるべく運命を背負って生まれた孫堅。17歳の春の日、船旅に出て、海賊に襲われるが、賊20人をたった一人で退治する。豪胆ぶりはたちまち広がり、呉郡一円にその名をとどろかす。この武勇伝は、後の黄巾の乱、董卓の乱平定への序章だった。名著「三国志」を「呉」の視点から描く、著者会心の歴史ロマンが開幕する。