2007年12月発売
玄次は、商い途中に出くわした検屍の場で、地まわり風の男に目をとめた。岡っ引きを勤めていたときに救ってやった女と、一昨日、逢い引きしていた男だった。その頃、安兵衛の許には、老舗の包丁人が殺されたという報せが舞い込んできた…。
ナチズムとスターリニズムの両方を経験し、過酷な生を生きざるをえないチェコ庶民。その一人、故紙処理係のハニチャは、毎日運びこまれてくる故紙を潰しながら、時折見つかる美しい本を救い出し、そこに書かれた美しい文章を読むことを生きがいとしていたが…カフカ的不条理に満ちた日々を送りながらも、その生活の中に一瞬の奇跡を見出そうとする主人公の姿を、メランコリックに、かつ滑稽に描き出す、フラバルの傑作。
ぼくは、都心を少し離れたところに住む、ごく普通の小学生。6年生の始業式。熊のようにでっかい先生が担任としてやってきた。小学生にラグビーを教えるのが信条なんだって。体育はラグビー、国語は詩を覚えて声に出して読ませるだけ。ぼくだって中学受験にそなえて塾にかよっている。クラスにはいじめがあるし、大変なんだ。体当たりのアッシー、先生のあだ名なんだけど。おかげで少しずつクラスの様子も変わってきてさ。ちょっぴりラグビーも好きになってきたし。さて、どうなることやら…。名翻訳家として定評ある著者、初めての小説。
「今から、俺たちの学年の生徒が一人、死ぬ。-自殺、するんだ」「誰が、自殺なんて」「それがーきちんと覚えてないんだ。自殺の詳細」不可思議なタイムスリップで三ヵ月先から戻された依田いつかは、これから起こる“誰か”の自殺を止めるため、同級生の坂崎あすならと“放課後の名前探し”をはじめるー青春ミステリの金字塔。
「あいつだ。俺、思い出した」「あいつ?」「クリスマス・イヴの終業式の日の自殺者。あいつに間違いないよ。今日、全部、思い出した」“誰か”の自殺を止めるための“名前探し”も大詰めに。容疑者を見守る緊迫感、友だちと過ごす幸福感の両方に満ちたやさしい時間が過ぎ、ついに終業式の日がやってくるー青春ミステリの金字塔。
平成元年、和倉温泉往きお座敷列車で若い女が不審死した。自殺か他殺かわからぬまま、15年以上経って、事件車両を買った高柳という男が、奇妙な掲示板を出す。事件当日、この車両に乗っていた人に話が聞きたい、謝礼に10万円払うという主旨だった。やがて、高柳のもとへ話をしに来た男が殺され…。時効を迎えた事件が新たな殺人を呼んだ!?東京・金沢を結ぶ推理行に十津川警部が挑む。
宝亀五(西暦七七四)年、陸奥国の北辺には不穏な火種がくすぶっていた。陸奥を支配せんと着々と迫り来る大和朝廷。そして、その支配に帰属する、あるいは抵抗する北の民、蝦夷。動乱の地に押し寄せる大和の軍勢の前にひとりの荒蝦夷が立ちはだかった。その名は呰麻呂。彼が仕掛ける虚々実々の駆け引きの果て、激突の朝が迫るー。古代東北に繰り広げられる服わざるものたちの叙事詩。
春秋末期、呉の策士・伍子胥は、孫武の遺した兵法を実践して越を打ち破る。敗れた越の軍師・茫蠡は、越王に愛された絶世の美姫・西施を間者に仕立て、呉王の後宮に送り込むという起死回生の策にでる。稀代の軍師らが仕掛けあう壮烈な策謀に、縦横策で弱国魯を守る孔子の知謀が絡み、宿命の抗争は新たな光芒を放つ。故事成語が現在に伝える呉越の戦いを、新視点を加えて描く壮大な春秋興亡史。
谷崎潤一郎が描く、犯罪、事件、男と女 文豪・谷崎が描く犯罪小説。精神の混濁した青年が、銭湯の中で一緒に暮らす女の死体を踏んだと思い込む『柳湯の事件』他3編を収録。大正年間に書かれたとは思えないリアルなミステリ小説。(解説/渡部直己)
北米一美しい街、サヴァナ。殺人課刑事のダンカンは真夜中に、レアード判事の邸宅に呼び出された。侵入犯を撃ったのは判事の美しい妻エリース。正当防衛を主張する彼女には多くの謎がある。事件の背後に浮かんでくる犯罪組織の親玉サヴィッチ。だが、ダンカンはしだいにエリースに惹かれていった。判事の妻で、しかも殺人の容疑者に…。全米で170万部突破、集英社文庫待望の新刊登場。
“ノアの箱舟”は動物たちに占拠され、人類を乗せるかどうかの大投票が決まって、ノア一家は不安な面持ちで舟外で待つはめになり、“バベルの塔”の各階はそれぞれ国に別れ、階の間にしか住めない難民「階段民」が生まれ、“よきサマリア人”主人公“道”は目撃した様々な足、周囲で流された血について語り、“ヨブ”は豊かなときは自己存在を疑い、すべてを無くしたとき「これが本当の自分かも」と考え、争いが嫌いな“ヨナ”は魚の中で一生平和に暮らしたいと願う…。現代の地球に生きるすべてのひとと命に贈る、13編の物語。
十兵衛店の長屋に、一人の娘が太吉を訪ねてやって来た。料理人だった父親の形見の出刃庖丁を、供養として研いでほしいー快く引き受けた太吉に、かおりと名乗るその娘は、妙なことを口走る。おとっつあんは、殺されたんです…。一力節が冴えわたる傑作時代長編。
「お前の好物だから」と、どこででも買えるリンゴを抱えて田舎から訪ねてくる。「捨てられない」と、子どもの古着をときおり取り出しては眺めている。その母の心を、娘は親になって、初めて知った。その愛は、純朴ゆえに切なく、神々しくさえある。韓国の人々の魂をゆさぶり、涙をしぼりとった、No.1人気女性脚本家が母に捧げる感動のベストセラー・エッセイ集。
徳川家宣、重篤!六代将軍の急を知らせる報に吉宗が天下盗りに動いた。紀州藩の奪取から七年、いままさに悲願の時がきたのだ-。着々と家宣の後への礎を固める吉宗一派。しかし、その前に立ちはだかる暗殺者集団・御土居下衆。唸り迫る豪剣の激突、大気を破る手裏剣の嵐。そして、冷徹な智略の応酬。将軍の座をめぐる熾烈な暗闘の行方は!?正徳二年、江戸城を舞台に、亡き真田幸村が描いていた、最後の天下分け目の戦いが始まった。
秋口にさしかかった静かな湖畔の別荘で、知的財産権を専門とする弁護士ジェイク・ミシュキンは、死を待ち受けていた。何世紀も昔の、古色蒼然とした“手紙”のせいで。きっかけは、高名なシェイクスピア学者バルストロードの依頼だった。彼はこう言ったー17世紀英国の、ある無名の兵士が妻に宛てた書簡をたまたま手に入れた。しかし手紙は、途方もない価値を持つ秘密を語っている。それを守ってほしい…。数日後、椅子に縛られ、無慙に拷問された学者の遺体が発見される。ジェイクにも、死の影は冷然と迫っていた。1611年に突然、隠遁した文豪シェイクスピア。その不可思議な沈黙にいたるまでの、序曲のような1年を追う。該博な資料と巧みな筆致で描く本格シェイクスピア・サスペンス。
秋口にさしかかった静かな湖畔の別荘で、知的財産権を専門とする弁護士ジェイク・ミシュキンは、死を待ち受けていた。何世紀も昔の、古色蒼然とした“手紙”のせいで。きっかけは、高名なシェイクスピア学者バルストロードの依頼だった。彼はこう言ったー17世紀英国の、ある無名の兵士が妻に宛てた書簡をたまたま手に入れた。しかし手紙は、途方もない価値を持つ秘密を語っている。それを守ってほしい…。数日後、椅子に縛られ、無慙に拷問された学者の遺体が発見される。ジェイクにも、死の影は冷然と迫っていた。1611年に突然、隠遁した文豪シェイクスピア。その不可思議な沈黙にいたるまでの、序曲のような1年を追う。該博な資料と巧みな筆致で描く本格シェイクスピア・サスペンス。
テメレアーそれは誉れ高きドラゴン。漆黒の翼はためかせ、この世に舞い降りた。清廉なる海軍将校ローレンスと深き絆を結びしその竜は、高貴なる血がため、苛烈な戦いへと赴く宿命にあった…全世界で話題沸騰、壮大なる歴史ファンタジー、ここに開幕!ローカス賞、ジョン・キャンベル新人賞受賞。
人間から逆進化してゆく恋人、戦争で唇を失いキスができない夫、父親が死んだ日に客たちとセックスする図書館員、火の手と氷の手をもつふたりの少女…想像と言葉の魔法を駆使して紡がれる、かつてない物語。不可解なのに現実的、暗く明るく、哀しくて愛おしい。そこから放たれる奇跡的な煌めきに、私たちはいつしか呑み込まれ、圧倒され、胸をつかまれるー。各国で絶賛された傑作短編集、待望の文庫化。