2012年8月発売
インドで襲われ一年後に亡くなった父の『占い拠 七ノ瀬』を継いだ桜子は、客が喜ぶ占いをするのが苦手で、占い師として致命的。そんな桜子を心配して、表に裏にと駆けずり回るのが乾耕太郎だ。ふだんはしがないフリーカメラマンをしている。仕事がないときがよくあるのだが、そんなときは奔走しっぱなし。というのも桜子に気があるからだ。二人の前に立ちはだかる五つの謎を解いて、男を上げろ、耕太郎。
「替天行道」の志を受け継いだ楊令の闘いと、熱き漢たちの生き様を壮大なスケールで描いた、北方謙三の『楊令伝』。文庫版全十五巻完結を記念して、公式読本が文庫オリジナルで登場。地図や年表、厖大な登場人物たちを網羅した人物事典、著者のエッセイや対談、さらにはここでしか読めない担当編集者のウラ話など、『楊令伝』の世界をもっと楽しむためのコンテンツが満載。
砂漠の熱い風に全身をさらして、そのうち、肉が全部こそげ落とされて、骨になってしまえばいいーかつて彼はそう言った。愛する男が異国の地で突然亡くなった。アルコールと薬物の同時摂取が原因だという。彼は生きることが辛かったのではなかったか?愛していると囁きあったのは偽りではなかったか?ひとり残された女は、死んだ男を追い求め、彼が直前まで過ごしたヨーロッパへと旅立つ。
鎌倉時代の半ば。玄界灘に浮かぶ壱岐島で、幼なじみの二郎と宗三郎は、浜に流れ着いた一人の少女を発見する。少女の名は麗花。母国の高麗を追われ、親を失っていた。三人は島で兄妹のように育つが、やがて蒙古の大軍が壱岐を襲い、過酷な運命に巻き込まれてゆく。何のために生き、誰のために戦うのかー元寇という巨大な時代の嵐に立ち向かう若者たちを描いた、魂を揺さぶる歴史大長編。
蒙古軍の圧倒的な力に壱岐は蹂躙され、多くの民が命を奪われた。主君を失いながらも戦火を生き延び、蒙古への復讐心に燃える宗三郎。絵師を目指して隣国の宋に渡った二郎。裕福な養父のもとを出て芸の世界に身を投じた麗花。それぞれの道を歩む三人は、年を経て再び蒙古の脅威にさらされる。凄絶な戦いを生き抜き、若者たちは光をつかむことができるのか。若き才能が活写する、迫真の歴史長編。
紀伊半島は熊野川の河口に位置する街、森宮。医者の槙隆光は貧しい者から治療費を取らないことから親しみを込めて“毒取ル先生”と呼ばれていた。ときは1903年、豊かな自然のなかで暮らす槙たちの周りには鉄道敷設や遊郭設置などの問題が起こり、一方で日露戦争開戦の足音がすぐそこに迫っていたー。歴史上の人物に材を取り、当時の情勢と熊野の人々を瑞々しく描いた第51回毎日芸術賞受賞作。
非戦論を主張しながらも脚気治療のために満洲へ赴いたドクトル槙。戦地で軍医を務める森鴎外や田山花袋らと出会いながら、彼もまた否応なしに戦争に巻き込まれていく。その傍ら、地元の森宮では鉄道敷設反対とともに社会主義運動が起きり、街全体が奇妙な熱気と不穏な空気で覆われる。様々な思惑の飛び交うなか、槙と永野夫人は秘かに禁断の恋を育み…。激動の時代を紡ぐ歴史大河長編、完結。
平穏な日常は、他人の何気な言葉ひとつで、ざわつき始める。夫と後輩女性が噂になっていると聞き、妻が駆け込んだ所は?(「マスカット・グリーン」)女同士の飲み会で、あっちこっち脱線しながら話すうち、ふと蘇る切ない記憶(「元気でいてよ、R2-D2。」)。笑顔の裏の真意、言葉にできない負の感情など、普段は隠している本音が顔を出す瞬間を、女性を主人公に巧みに描く。傑作短編8編を収録。
「あたし今度、自分で店、開くんだ」。海外出張先への国際電話で娘に告げられ、宍倉勲は絶句した。就職したばかりの大手企業をすぐ辞めてしまったと思ったら、今度は何を言い出すのかー(「マスターと呼ばれた男」)。時に社長として、時にヒラ社員として、誠実に働き続けてきた男。彼と娘との関係、家族の歴史を時をさかのぼりながら描く連作長編。文庫化に際し書き下ろし短編を特別収録。
孤独感と死の影を漂わせた男・黒田修一郎、35歳。会社を倒産させ自殺を決意するが、社長令嬢・陽子を通し実業界の黒幕・相馬雷太を紹介される。「あんたに1億円使わせてみようかの」!-こうして、黒田は池袋に開店する白丸デパートの宣伝部長として腕を振るうことになった。彼が仕掛けた奇抜な戦略とは…!?個性的な男たちとの攻防、多彩な美女を巡る駆け引き。柴錬現代小説幻の傑作。
「勝とうとすれば、気が散るぞ。そんな暇があれば、相手など斬れるわい」。魔剣・不知火落としを操る九堂に対峙した隼四郎の胸裏に声が鳴る。流れ者の剣客に育てられ、十六歳で実父と対面した兵法者は、書物学問奉行の跡取りとして「滅私奉公ごっこ」を始める。しかし、やがて領民を置き去りにした藩政にもの申し、驚くべき行動へ。大人たちの野心と陰謀に敢然と挑み続けた天才剣士を描く。
16世紀イングランド。国王ヘンリー8世の摂政クロムウェルの命により、弁護士シャードレイクはスカーンシアの修道院で起きた殺人事件の真相究明に向かう。彼を待ち受けていたのは曲者ぞろいの修道士や修道院の暗い秘密…。自身を追い詰める劣等感と戦いつつ奔走する彼だったが、やがて自らの信念を揺るがす衝撃の事実が明らかになる。イギリスで大人気のCWA賞受賞シリーズ待望の第1弾。
1943年ポーランドの町ルヴフ。加速するホロコーストのもと、地下の下水道へと逃げこんだユダヤ人と、金銭と引き換えに彼らを匿うことになったポーランド人の男ソハ。下水道はまるで地獄のよう、悪臭と暗闇、死の恐怖と闘いながら、彼らは14か月を生きる。忍耐、葛藤、裏切り、絶望、そして希望ー極限状況のなかで人間のもちうるさまざまな感情と行動を浮き彫りにした、迫真のノンフィクション。
謎。複雑。郷愁。怪異。そして、ふしぎな感動。日本のナボコフ、天才・川那辺薔による初の小説集。娘を失った父の悲しみ。大学をめぐる奇怪な出来事。近代批判に満ちた衝撃の問題作。表題作日本初アンチ(?)スカイツリー小説「空の木」ほか3篇所収。
絵草紙屋、生薬屋、洗濯屋…。「風待ち小路」には、小さな店が肩を寄せ合うように集まっていた。芝神明宮の門前町でくり広げられる人間模様、親子の絆、そして許されぬ恋。これぞ時代小説の醍醐味。
紛争の繰り返される土地で苦闘する若き女医のもとに、祖父が亡くなったという知らせが届く。やはり医師だった祖父は、病を隠して家を離れ、辺境の小さな町で人生を終えたのだという。祖父は何を求めて旅をしていたのか?答えを探す彼女の前に現れた二つの物語ー自分は死なないと嘯き、祖父に賭けを挑んだ“不死身の男”の話、そして爆撃された動物園から抜け出したトラと心を通わせ、“トラの嫁”と呼ばれたろうあの少女の話。事実とも幻想ともつかない二つの物語は、語られることのなかった祖父の人生を浮き彫りにしていくー。史上最年少でオレンジ賞を受賞した若きセルビア系女性作家による、驚異のデビュー長篇。全米図書賞最終候補作。
なじみの小料理屋で飲み、寝入ってしまった次郎吉。おかしな気配に気がついて目を覚ますと、隣家から火の手が上がっている!次郎吉の機転で延焼は防げたが、火元の家に住んでいた母と幼い娘が焼け出された。火事の原因は不明。さらに母子の周辺に見え隠れする怪しい人物たち。何かあると感じた矢先、今度は小料理屋が火事にー。人情篤い盗賊・鼠小僧こと次郎吉が悪と闘う痛快時代小説シリーズ。ますます絶好調の第3弾。
「北海道行くべ!」-女性絡みのトラブルでチンピラから追われる無職のレンチは、会社を辞めたばかりのタカシと引きこもりのキノブーを強引に連れ出し、東北道を突っ走っていた。しかも「出会い系」でゲットした美女を仙台で拾うはずが、合流したのは中学生にしか見えない謎の女の子。喧嘩しながらもついに北海道に入った一行だったが、徐々に追手の影が迫ってきて…。ニート×3+家出少女の激動波乱の旅が始まった。