2018年3月23日発売
五十三歳の真行寺弘道は、「巡査長」という肩書きが警視庁捜査一課で異例なだけでなく、きっちり公休を取り自宅のオーディオでロックを聴くのが楽しみという、刑事としてはかなりの変わり種。 捜査の「お約束」である所轄刑事との相勤を避けて単独行動するなど、型破りな行動・言動で知られている。これまた異例ながら、キャリアで捜査一課長の水野玲子警視に命じられた真行寺は、八王子の高級老人介護施設で起きた入居者死亡事件を捜査する。AI搭載の人形型介護支援ロボットが関わっているらしいその事件を調べるうちに、真行寺は、自らの職業を「ハッカー」と称するオーディオマニアの青年・黒木良平と親しくなった。同事件の捜査が一段落したところに、水野課長から連絡が入る。元警察官僚で衆院議員の尾関一郎が新宿のホテルで変死したという。捜査を進めるうちに、この事件の背後に政界・芸能界・反社会的勢力などが連なる大きな組織の存在をかぎ取った真行寺は、黒木の力を借りて真相に迫るがーー。 AIやゲノム編集など、リアルな知見に裏打ちされた痛快なエンターテインメント!〈解説〉北上次郎
ジャスミンはジゴバの酒場での出逢いが初めてではないことを直接告げることなく逝った。ケリーは婚姻を承諾した本当の理由を彼女に伝える前に、一方的に別れを告げられた。ジャスミンは知らない。己の命がまだ尽きていないことを。ケリーは知らなかった。『命の恩人の形見』が大切にされていたことを。-スカーレット・ウィザードこれにて完結。
「読めばきっと、時間を無駄にできないな、と思える、うつくしい作品でした」(伊坂幸太郎さんによる帯コメントより) 世にも不思議な病「量子病」に冒され、世界中を跳躍し続ける坂知(さかち)稀(まれ)。大学の図書館から信州の老婆宅に跳んでしまう午後もあれば、中東で目覚める朝や、ウィーンでオペラに興じる夜もある。これは神のサイコロ選びなのか、一瞬後の居場所すら予測できず、行き先も滞在期間も不明。人生を“積み重ね”られない彼女が、世界に爪痕を残すためにとった行動とはーー。これからの「幸せ」の意味を問う、感動のSF長篇!
しっかり貯金して老後の備えは万全だったわが家に、突然金難がふりかかる!後藤篤子は悩んでいた。娘が派手婚を予定しており、なんと600万円もかかるという。折も折、夫の父が亡くなり、葬式代と姑の生活費の負担が発生、さらには夫婦ともに職を失い、1200万円の老後資金はみるみる減ってゆく。家族の諸事情に振り回されつつもやりくりする篤子の奮闘は報われるのか?普通の主婦ががんばる傑作長編。
テレビやラジオで落語が親しまれ、大看板と呼ばれた一流の噺家たちが芸を競った昭和五十年代。その一人、八代目林家正蔵(のちの彦六)の住む稲荷町の長屋には、傷害事件から恋愛沙汰まで、さまざまな謎が持ち込まれー。なつかしいあの頃の落語界を舞台に、探偵・正蔵が快刀乱麻を断つ!洒脱な落語ミステリー。
日の神は、いま、私の生を見棄てられた。私にそのことが、はっきりわかるーー輝かしい戦績を上げ、ガリア軍を率いて首都へ戻るユリアヌスに、コンスタンティウス帝崩御の報が届く。皇帝に即位した彼は宮廷政治と宗教政策の改革に着手する。そして、ペルシア軍討伐のため自ら遠征に出るが……。歴史小説の金字塔、堂々完結!【全四巻】〈解説〉山内昌之〈巻末付録〉対談「長篇小説の主題と技法」北杜夫/辻邦生
死にゆく者はあらゆる種類の鳥が飛ぶのを見るだろうーー 自身のパルチザン体験や故郷の生活風景を描いた 〈文学の魔術師〉カルヴィーノの輝かしき原点となる 第一短篇集、待望の刊行! 森に現れた少年は射撃の腕をかわれてパルチザン部隊と行動をともにする。やがて、遭遇した敵の兵士に対して少年の銃が狙いを定めたのは……緊張感漂う表題作をはじめ、カルヴィーノ自身のパルチザン体験を元に描いたレジスタンスの物語、少年期をすごした故郷の風景を反映した農民や子供たちの生活スケッチ、戦後の都会を舞台にしたコミカルなピカレスクロマン、軽妙な語り口の風刺的寓話など全23篇を収録。現代イタリア文学を代表する〈文学の魔術師〉が、その若き日々にあふれでる創作意欲を自由かつ繊細に結晶化した、瑞々しい傑作揃いの初期短篇コレクション! シリーズ〈短篇小説の快楽〉全5巻完結 ある日の午後、アダムが 裸の枝に訪れた夜明け 父から子へ 荒れ地の男 地主の目 なまくら息子たち 羊飼いとの昼食 バニャスコ兄弟 養蜂箱のある家 血とおなじもの ベーヴェラ村の飢え 司令部へ 最後に鴉がやってくる 三人のうち一人はまだ生きている 地雷原 食堂で見かけた男女 ドルと年増の娼婦たち 犬のように眠る 十一月の願いごと 裁判官の絞首刑 海に機雷を仕掛けたのは誰? 工場のめんどり 計理課の夜 解説 イタロ・カルヴィーノの出発地ーーリヴィエラとパルチザンの森 堤康徳 訳者あとがき
森鷗外の系譜、テーベ百門の大都とその精神を継承する作家たち。 地下墳墓のミイラに前世の無限連鎖を見出す「木乃伊」。応仁の乱の乱世に材をとった歴史小説「雪の宿り」。妖術により不老不死となった芸妓の綺譚「喜寿童女」。巧緻な文体で純なる魂の美をえがくキリシタン物「きりしとほろ上人伝」。怪談会を舞台にした「百物語」。他全63編。 全巻完結! 中島敦 矢川澄子編 狐 憑 木乃伊 山月記 文字禍 名人伝 悟浄出世 悟浄歎異 盈 虚 牛 人 弟 子 李 陵 幸 福 遍 歴 解 説 中島敦における歌のわかれ 神西清 池内紀編 夜の鳥 ハビアン説法 わが心の女 雪の宿り 化 粧 三つの挿話 水に沈むロメオとユリヤ 死児変相 ジェイン・グレイ遺文 青いポアン 解 説 もう一つの原作 石川淳 池内紀編 瓜喰ひの僧正 山 桜 ころび仙人 鉄 枴 しぐれ歌人 無尽燈 焼跡のイエス 曽呂利咄 かくしごと 怪異石仏供養 喜寿童女 二人権兵衛 無 明 解 説 ガラス玉演戯 芥川龍之介 橋本治編 葬儀記 田端日記 きりしとほろ上人伝 じゆりあの・吉助 藪の中 トロツコ 毛利先生 舞踏会 庭 彼 あの頃の自分の事 蜘蛛の糸 地獄変 裏 畠 葱 わが散文詩 東京田端 解 説 殺された作家の肖像 森鷗外 須永朝彦編 蛇 流 行 百物語 不思議な鏡 鼠 坂 寒山拾得 椙原品 寿阿弥の手紙 うたかたの記 空 車 秋夕夢 解 説 小説といふものは何をどんな風に書いても好いものだ
ロンドンからやってきたイヴリンにとって、ニューヨークは身の毛のよだつゴシックの闇のような街であった。この汚穢に満ちた街でイヴリンは黒人娼婦レイラと出会い、ともに暮らし始めるものの、彼女が重病に陥るや彼女を捨てクルマで砂漠へと向かう。みずからの心象風景にふさわしい世界に魅了されるイヴリンだったが、ガス欠で身動きがとれなくなり、孤独な夜を過ごすうちに、電気砂橇に乗り、軽機関銃で武装した何者かに連行される。連行された先は、〈ホーリー・マザー〉が支配する女だけの地下世界ベウラであった。そこベウラで外科手術を施されたイヴリンは女性のイヴとなる……野蛮な力が遍在する世界を舞台に繰り広げられるイヴの奇妙奇天烈な冒険と遍歴を、ブラックユーモアとエログロナンセンス、濃厚なアイロニーをちりばめて描いた、英国マジック・リアリズムの旗手アンジェラ・カーターによる、新たな預言の書ともいうべき傑作。
『ガリバー旅行記』英語版テキストを飾る挿絵には、ヨーロッパ植民地帝国の拡大につれて、日本・中国・イスラムを中心としたオリエンタリズムの表象が前面に現れる。英仏の挿絵画家たちのジャポニズムや植民地幻想に初めて詳細に光をあてるとともに、原作を独自に翻訳・翻案した明治以降の日本の児童文学作家・挿画家による模倣/創造の軌跡をも丹念に跡づける独創的研究。図版多数!
婚活体験を描く表題作。谷崎潤一郎と夏目漱石の知られざる関係、図書館員と作家の淡い交流、歴史に埋もれた詩人の肖像…“いまの文学”に飽き足らない、あなたに贈る“ほんとうの文学”がここに!
海からの光と生きるための反抗が育んだ、言葉の花束。 美しいものを見た魂が、戦争と革命とイデオロギーの世紀を走り抜けた。 その軌跡は、寄る辺なく、迷走する21世紀にこそ、光を放つ。 第二次世界大戦の戦後処理からアルジェリア戦争、そしてノーベル賞受賞ヘ、『異邦人』から『ペスト』、そして『最初の人間』へ、 折々の断章を編むことで、その生の全体像を立ち上げる。 どこに立ち、何を感じ、いかに考えたか。いま、時代がカミュの生と思考に追いついた。 第1章 太陽と貧困 第2章 反抗と暴力 第3章 歴史とテロ