2019年10月25日発売
ミヒャエル・エンデが、父エトガー・エンデに捧げた代表作を、生誕90年の記念版として新訳で刊行する。夢の中の出来事のような謎めいた幻想譚30篇と、画家であった父エトガーの不思議な魅力に満ちた絵画とが、互いに響き合うようにして構成されている本書は、父と子の共同作業によって築かれた物語の「迷宮」である。 鏡のなかの鏡 内容 挿絵リスト 生誕九〇年記念版刊行に寄せて……………ロマン・ホッケ 訳者あとがき
綿柎開(わたのはなしべひらく)、水始涸(みずはじめてかるる)、朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)--。 季節を表す言葉を鍵に、物語は膨らんでゆく。 十二人の作家の想像力で、旧暦「二十四節気七十二候」が現代の物語に生まれ変わった。 六世紀ごろに大陸から伝わり、改暦を重ねながら明治の初めまで用いられてきた旧暦。そこには春夏秋冬の四季に留まらない、さらにこまやかな季節が織り込まれている。 大暑や立秋、大寒といった季節の節目を表す二十四節気と、「地始凍」「熊蟄穴」など、動植物や空模様がそのまま季節の呼び名に採り入れられている七十二候。 古来伝わる“季節の名前”が現代の作家たちを刺激し、味わい豊かな掌篇に結晶した。 ー旧暦の魅力を知る解説つきー 西村賢太「乃東枯」 重松清「鷹乃学習」 町田康「大雨時行」 筒井康隆「蒙霧升降」 長野まゆみ「綿柎開」 柴崎友香「玄鳥去」 山下澄人「水始涸」 川上弘美「蟋蟀在戸」 藤野千夜「霎時施」 松浦寿輝「地始凍」 柳 美里「朔風払葉」 堀江敏幸「熊蟄穴」 白井明大「輪のようにめぐる季節のさなかで 二十四節気七十二候について」 西村賢太「乃東枯」 重松清「鷹乃学習」 町田康「大雨時行」 筒井康隆「蒙霧升降」 長野まゆみ「綿柎開」 柴崎友香「玄鳥去」 山下澄人「水始涸」 川上弘美「蟋蟀在戸」 藤野千夜「霎時施」 松浦寿輝「地始凍」 柳 美里「朔風払葉」 堀江敏幸「熊蟄穴」 白井明大「輪のようにめぐる季節のさなかで 二十四節気七十二候について」
島本さんの小説はいつも、自分は傷ついているのだと気づかせてくれる。--藤崎彩織 深い闇の果てに光を掴もうとする女性たちの、闘いと解放。直木賞作家の真骨頂! 性とお金と嘘と愛に塗れたこの世界を、私たちは生きている。 ミスコンで無遠慮に価値をつけられる私。お金のために愛人業をする私。夫とはセックスしたくない私。本当に愛する人とは結ばれない私ーー。 秘密を抱える神父・金井のもとを訪れる四人の女性。逃げ道のない女という性を抉るように描く、島本理生の到達点。 1 夜のまっただなか 2 サテライトの女たち 3 雪ト逃ゲル 4 静寂
「久々に、派手なペテン仕掛けるぞ」詐欺師から足を洗い、口の上手さを武器に実演販売士として真っ当に生きる道を選んだ武沢竹夫。しかし謎めいた中学生・キョウが「とんでもない依頼」とともに現れたことで 彼の生活は一変する。シビアな現実に生きるキョウを目の当たりにした武沢は、ふたたびペテンの世界に戻ることを決意。そしてかつての仲間ーーまひろ、やひろ、貫太郎らと再集結し、キョウを救うために「超人気テレビ番組」を巻き込んだド派手な大仕掛けを計画するが……。
遂に復讐の時が来たーー。 エレノアが殺したいほど憎んでいる幼なじみたちが見つかった。 彼らは仲間殺しが多発しているいわくつきの合同クエスト〈ゴレイアス砦侵攻戦〉に参加しているという。 エギルたちはハボリックから依頼された仲間殺しの犯人を捜すと共に、エレノアの復讐に協力すべく、合同クエストに参加することに。 しかし、本来協力関係にあるはずのギルドも、仲間殺しによって互いを疑うのが当たり前となっていた。 疑心暗鬼にまみれたギルド。 砦の攻略を目指すエギルたちが最奥部に近づいた時、いよいよ犯人が動き出した……。 一方、エレノアは待ち焦がれた幼なじみたちと再会する。 自らを奴隷商人に売った幼なじみへの復讐は果たされるのかーー。 エレノアの復讐の幕が上がる、激動の第2巻。
久坂浩一は、平穏な日々を願う、平凡な高校生。 エロ漫画家の姉の影響で、性的なことへの苦手意識がある以外は。 しかし浩一の高二の夏休みは、その想いとは真逆の方向へ突っ走ることになる。 ある日、幼馴染みの美亜がいきなり「彼氏のフリをしてほしい」と言い出し、 しかもエッチなことをかなりハードにしている設定でとお願いしてきた。 なんと、美亜は実はサキュバスで、なおかつエッチなことが苦手な落ちこぼれなのだとカミングアウトしてきたのだ! 流れで美亜の勤める喫茶店でバイトをすることになった浩一は、 「落ちこぼれサキュバスの調教役」になる!? 浩一にはサキュバスたちに必要なあの能力があって… 限界突破のエロラブコメ、開始!
必死に実力を隠しているのに、活躍を続け、栄達し続けるヘルメス。 姉のソーラと娼婦オルティアに振り回されつつも、絶対に本気を出さない主義を貫いていた。 だが、自衛のために剣を提げていただけで、気づくと国王の剣術指南役に任命されてしまう! 街で急襲してきた少女の攻撃を防ぐと、それは地上最強の生物・魔王カオリで、 「甥っ子ちゃん」と呼ばれて懐かれてしまう! 魔王軍との全面戦争に怯える国王から征魔大将軍に任じられると、あっという間に戦争を回避! 総理大臣相当の大公爵まで上り詰める!? 本気じゃないのに名声があがり続ける、慕われ惚れられ尊敬されまくる最強当主生活、第3幕!
ポーション売りの少年、シィルは小さな怪我や風邪に使う普通のポーションを販売していた。 しかし、実はそれがポーションではなくてどんな怪我、病気も癒す伝説の薬、エリクサーであるということは、シィル自身は知らなかった。 そして、いつもと変わらない毎日を送っていると息苦しそうに歩いてくる貴族の少女と出会う。 実は、その少女は薬師や医師、魔法使いに診てもらっても治せなかった難病を患っていたのだが、気休めに渡したシィルのポーションで完治してしまう。 それからただのポーション売りだったシィルの生活は知らずに治療した人の影響を受け、少しずつ変化していくーー。
ときは南北朝時代。 蝦夷管領、安藤又太郎季長の三男として生を受けた新九郎は、出羽の叛乱を鎮圧せよと命じられた。出陣を前に、叛乱について調査をした新九郎は、ことの首謀者が叔父の安藤五郎季久であることを突き止める。 天皇方と手を組み討幕を目論む父・季長。あくまで幕府方を標榜する叔父・季久。二人の間で揺れる新九郎だったが、やがて大きな時代の流れは押し寄せ、北朝と南朝に分かれて争いを続ける都と連動する形で、東北にも大規模な戦の影が迫る。 アイヌとの行き来、交易などにも着目し、当時の東北のひとびとがどのように考え、動いていたのかを新たな目線で読み解く。 鎌倉時代から南北朝時代にかけて、日本列島全体でどのような騒乱が起きていたのか、これまでの歴史解釈に大きな一石を投じる本格歴史小説。 【著者略歴】 安部龍太郎(あべ・りゅうたろう) 一九五五年福岡県黒木町(現八女市)生まれ。久留米高専卒。東京都大田区役所で図書館司書を務めながら小説家を志し、九〇年『血の日本史』でデビュー。二〇〇五年『天馬、翔ける』で第十一回中山義秀文学賞、一三年『等伯』で第一四八回直木賞を、一六年第五回歴史時代作家クラブ賞実績功労賞を受賞。
行き掛かりに哀れな悪魔を助けた質屋ジャーゲン。返礼にと突如消された口うるさい妻を、周りに言われてしぶしぶ取り戻す旅に出る。奇想天外摩訶不思議な異世界を、当代一流の口八丁と権謀術数を武器に快進する、愛と冒険の喜劇的ロマンス。 挿絵:フランク・C・パぺ 装画:木原未沙紀 装丁:山田英春 第 一 章 なぜジャーゲンは男らしいことをしたのか 第 二 章 栄えある服を纏うこと 第 三 章 暁と日の出のあいだの庭 第 四 章 ドロシーには分からなかったこと 第 五 章 パンとバターが要求すること 第 六 章 セリーダが女性であること 第 七 章 水曜日における妥協について 第 八 章 古い玩具と新しい影 第 九 章 伝統に則ったグィネヴィア救出 第 十 章 スラグナルの惨めな変装 第 十一 章 ログレウス公爵現る 第 十二 章 ヨランダの破滅 第 十三 章 ゴギアヴァン・ゴウアの哲学 第 十四 章 ジャーゲン公爵の策略準備 第 十五 章 グラシオンにおける妥協について 第 十六 章 スモイト王のさまざまな厄介事 第 十七 章 時を告げるのが早すぎた雄鶏について 第 十八 章 なぜマーリンは薄明かりの中で語ったか 第 十九 章 奇妙な足をした褐色の男 第 二十 章 祈りの効き目 第二十一章 アナイティスの船旅 第二十二章 二人がヴェールを破ったことについて 第二十三章 ジャーゲン皇子の欠点 第二十四章 コカイン国での妥協について 第二十五章 〈文献学の師〉の呪文 第二十六章 〈時〉の砂時計の中で 第二十七章 忌まわしい情況のヘレネ女王 第二十八章 レウケーでの妥協について 第二十九章 ホルヴェンディルのナンセンスについて 第 三十 章 ジャーゲン王の経済学 第三十一章 シュードポリス陥落 第三十二章 ペリシテ人のさまざまな策略 第三十三章 クローリスとの別れ 第三十四章 皇帝ジャーゲンは地獄で如何に過ごしたか 第三十五章 祖父サタンが語ったこと 第三十六章 なぜコスは反論されたか 第三十七章 美しい吸血鬼の創造 第三十八章 拍手喝采された判例について 第三十九章 地獄での妥協について 第 四十 章 教皇ジャーゲンの昇天 第四十一章 天国での妥協について 第四十二章 絶えずいらいらしている十二使徒 第四十三章 影の前に立つ姿勢{ポーズ} 第四十四章 支配人の執務室で 第四十五章 グィネヴィアの信頼 第四十六章 アナイティスの欲望 第四十七章 ヘレネの幻影 第四十八章 リーサ夫人の率直な意見 第四十九章 コシチェイとの妥協について 第 五十 章 この瞬間は重要なものでもなく
至高の審美眼が選りすぐった 天上界の作家の神品の数々 谷崎潤一郎も川端康成も決して連れていってくれない一種澄みきった天上界、そこへ連れていってくれるのが泉鏡花の文学だということを、三島さんはしきりに強調していたが、まったく私もその通りだと思う。いくら鏡花文学の構造を論じ、基層を論じ、文体を論じても、鏡花の幻想の翼に身みずから乗せられて、この天上界の至福に一挙に参入しえないひとは、不幸な読者というほかあるまい。 --------澁澤龍彦 澁澤・種村没後の索漠たる世界となった現在、いま望まれるのは澁澤セレクトによる鏡花選集である。遺された澁澤リストを見れば、偏りが大きいこと以上に数多くの魅力的な謎を孕んでいるようにも思われる。いかにも澁澤好みと誰もが頷く作も多ければ、意外なマッチングの選択もあり、また何故これを澁澤がと不思議に感じられるものも少なくはない。「半世紀も昔のほんの下書きのリスト、何を書いたか忘れてしまったよ」と泉下の氏には苦笑されてしまいそうであるが、それでも鏡花と澁澤龍彦、相対する二者の魅惑は互いに響きあい、興趣は尽きない。おぼつかぬことながら謎の一端なりとも追っていければと思う。 ---------山尾悠子(「第1巻解説」より) ◎鏡花没後80年記念出版 ★澁澤龍彦の生前、1970年代前半に企画されながらも、惜しくも実現を見ずに終った幻の選集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。 ★我が国における最高最大の幻想作家・泉鏡花の膨大多彩な作品群から、澁澤龍彦ならではの鑑識眼が選び抜いた、小説約50篇を4巻で構成。 ★各巻の解説は、鏡花作品をこよなく愛し、2018年には泉鏡花文学賞を受賞した山尾悠子が担当。各巻に、解説者が特に選んだ一作品も増補追加する。 ★装釘は、名匠・小村雪岱の鏡花本をあたうかぎり再現した。表紙や本扉はもちろんのこと、見返しも雪岱描き下ろしの絵を用いた、美麗な豪華愛蔵版。 ●第1巻 龍蜂集 春昼、春昼後刻、山吹、紅玉、海異記、貝の穴に河童の居る事、酸漿、お留守さま、 紫陽花、清心庵、星あかり、蛇くひ、X蟷螂鰒鉄道、夜釣、千鳥川、外科室、笈摺草紙、 裸蝋燭、名媛記、鶯花径 【山尾追加作品】山中哲学 「澁澤龍彦 泉鏡花セレクション」誕生秘話 桑原茂夫 解説 山尾悠子
台湾社会を震撼させた、実話にもとづく傑作 著者は1991年生まれの女性作家。デビュー作である本書に「実話を基にした小説である」と記したことから、著者の実体験なのではと大騒ぎとなった。刊行2か月後に著者が自殺。台湾社会を激震させた。 文学好きな房思キと劉怡婷は高雄の高級マンションに暮らす幼なじみ。美しい房思キは、13歳のとき、下の階に住む憧れの50代の国語教師に作文を見てあげると誘われ、部屋に行くと強姦される。そして異常な愛を強いられる関係が続くことになってしまう。房思キの心身はしだいに壊れていく。劉怡婷は、房思キが記した日記を見つけ、5年に及ぶ愛と苦しみの日々の全貌を知る……。 一方、同じマンションの最上階の裕福な家庭に嫁いだ20代の女性・伊紋の物語も同時に描かれる。伊紋は少女2人によく本を読んであげていた。だが実は夫からのDVに悩み、少女らに文学を語ることが救いとなっていたのだ。 人も羨む高級マンションの住民たちの実情を少女の純粋で繊細な感性によって捉えることで、社会全体の構造的な問題が浮かび上がってくる。過度な学歴社会、格差社会、権力主義の背後にある大人の偽善、隠蔽体質……。なぜ少女の心の声を大人が気づけなかったのか。文学の力とは何か。多くの問いを投げかける。
命に代えても惜しくない娘を授かった夜を、 決して過ちとは呼びたくない。 田舎町で幼い娘を育てながら、小さな宿を切り盛りするアナ。 酒に溺れる母親を抱え、その苦労は計り知れない。 そんなアナの慰めは、3年前に一夜を共にした男性の思い出だ。 翌朝彼は姿を消したが、アナはニュースを見て卒倒しかけた。 ディミトリ・キリアコウ。彼はギリシアの富裕な銀行家だった。 そして今、彼が現れたのだ。幾度となく夢に見た姿そのままに、 ゴージャスな魅力を振りまいて。 だが、ディミトリの口から出た言葉は残酷そのものだった。 「一刻も早く僕と結婚しろ。さもないと娘の親権を取りあげる」 リン・グレアムの愛弟子ピッパ・ロスコーが綴る、切ないシークレットベビー・ロマンス! R-3408『ボスと秘書には秘密がある』の関連作です。作中で徐々に明かされていく、ヒロインからヒーローへの届かなかった愛の手紙の内容が胸に迫ります。
おとぎ話のような結婚式の直後、 甘い恋に落ちたはずの夫の正体を知った。 幼くして両親を失い、厳格な祖父のもとで育ったエマは、 不動産王クリストに一目惚れし、結婚することになった。 祖父亡きあと、彼だけが頼りだった。だが披露宴の途中で、 エマは花婿と親友の会話をもれ聞いてしまった。 クリストが興味があるのは従姉のほうで、私にはーー 地味で平凡な私には、愛情を抱いてはいないと。 ショックのあまり逃げ出した彼女を、クリストは追ってきた。 そして離婚を主張するエマに、氷の瞳で結婚の継続を迫った。 今や君は無一文なのだから、と言って。 初夜に花嫁に拒絶され、形だけの白い結婚に甘んじざるをえないプレイボーイのヒーローでしたが、一度自分とベッドをともにしさえすれば、妻は離婚の意思を翻すはずと算段して……。彼がそうまでしてヒロインを手に入れたいのはなぜなのでしょうか?
星が大好きで、大人になった今も星に夢中のフラン。アメリカのホテルでニックと名乗る美貌の警備員と出会い、あっという間に恋に落ちて、親密なデートを重ねる仲になった。だが、祖父危篤の一報でフランはイギリスへ戻ることになり、二人の絆は儚く消える。数カ月後、彼女はあるパーティで、イタリアのホテル王ニコロ・ファルコーネを紹介されて驚いた。ニック!なぜ身分を偽っていたの?傷ついたフランは思わず詰め寄り、感情的に言い返すニコロと揉み合いながら、よみがえる情熱に身を投じてしまうー妊娠するとも思わずに。ドラマティックな展開と、純粋で愛らしいヒロイン。身ごもったことをヒーローに告げたものの、彼からの愛のない求婚は虚しいだけで…。
婚約を破棄された傷心の彼女に、 隣国の王から思いがけない求婚がーー モリアナはあまりのことに言葉を失った。 8歳のときに決められた隣国の王との婚約が、 彼に幼い娘がいたとわかり、突然破棄されてしまったのだ。 傷心に沈む彼女のもとに、その直後、求婚の手紙が届いた。 送り主は、もう一つの隣国の王テオ。 昔、犬猿の仲だった彼も王となり、花嫁が必要なのだろう。 家族を失い、この10年放蕩三昧だったと噂のテオが、 白いタキシード姿で現れた瞬間、モリアナは目を奪われた。 テオは獲物を狙う鷹さながら、彼女を熱い瞳で射抜き……。 たとえ政略結婚でも、いつか愛し愛される関係になれたらーーそんなひそかな夢を抱いていた、まだ恋も知らない純潔のヒロイン。セクシーなオーラをみなぎらせるヒーローの誘惑に屈するまいとしますが……。R-3439『鷹の王と秘密の愛し子』関連作です。
クリスマスの奇跡は、 愛と苦しみの記憶を呼び覚まして……。 道に迷い、たどり着いたスコットランドの小さな村のパブ。 店で働く女性を見て大富豪トーマスは目を疑った。「ロージー?」 半年前、車ごと川に落ち、行方不明になった妻ロザリンドだ。 思わず抱き締めたとたん、トーマスは突き飛ばされた。 過去の記憶をなくし、ロンドンの屋敷に住んでいることも、 5歳の娘がいることも、まったく覚えていなかったのだ。 トーマスが家族や経営する会社について詳しく話すと、 彼女は不安そうな様子ながらも、一度家に戻ってみると言った。 実は彼女が失踪したとき、すでに結婚生活は暗礁に乗り上げ、 離婚寸前だったとは知るよしもなくーー 聖なる季節に、まるでサンタクロースの魔法にかかったかのような、奇跡の愛の物語をお届けします。愛らしい5歳の少女に会い、すぐに懐かしい感情に満たされるヒロインですが、ゴージャスな夫との夫婦関係にはなぜか違和感を覚えて……。
真夜中に銀色の靴が脱げたとき、 わたしの恋は終わったはずだった。 アニッサはスイスの高級スキーリゾートで働くメイド。 ある日、スキーで転倒し、通りかかったレオに助けられる。 彼の優しさに感激し、一夜限りと知りつつ身を任せた彼女だが、 数日後、彼に偶然再会してしまうーー今度はメイドと客として。 レオがとんでもない億万長者だと知ってアニッサは臆するが、 NYでクリスマスを過ごそうと誘われ、戸惑いながらも受け入れた。 昼はともに観光、夜は彼のペントハウスで夢の時を過ごしてーー でも、これはシンデレラの夢。もうすぐ12時の鐘が鳴るわよね……。 そして、予感は的中した。ある日レオはクレジットカードを投げつけ、 ドレスでも買えと言うなり、彼女を置き去りにしたのだ。 レオが急に冷たくなった理由とは? 富豪一族の一員だと突然知らされた彼とその弟妹の事情は、本作から始まる3部作〈カッターネオ家のクリスマス〉を通してお楽しみください。イマージュの人気作家3名が肩を並べる競作ミニシリーズです!