2021年7月発売
私は自分の名前が大きらい!高校2年生の相川あけびは、果物の名前をつけた非常識な父親に腹をたてていた。でもそれ以上に、自分を捨てて台湾で女優をしている母親にはもっと大きな怒りを抱いていた。いらだちながらも書道の甲子園・国際高校生選抜書展に向かってがんばろうとしていたその時ー父親がとんでもない災難を拾ってきた。汚い袋やバッグをこれでもかと抱えたホームレスの老婆を自宅マンションに連れてきたのだ。言葉づかいがばか丁寧なこの得体の知れない老婆が、父の命の恩人なんだって?言葉巧みに騙されているだけじゃないの!?いらだちが頂点に達しようとしていた時、老婆のいる部屋からふしぎな声が聞こえてきた。それは、いるはずのない子どもがキャッキャッと笑っているような声だった…。生粋のアメリカ人女性が、5年もかけて、初めからすべて日本語で書いた渾身の感動作。
1989年、パリ14区に実在する老人養護施設“ティエル=タン”。そこに鋭い目つきの長身の老人がいたー。ジェイムズ・ジョイスとの友情など、事実を基にしたエピソードをちりばめて描かれる、ノーベル文学賞作家の人生最期の日々。記憶をたゆたいながら、諧謔と憂愁に溢れた声が響く。サミュエル・ベケットの強烈な個性を再現しながらも、死を待つ人間の普遍的な姿を浮き彫りにした著者の鮮烈なデビュー作。ゴンクール賞最優秀新人賞受賞。
外事一課の倉島は、「ゼロ」の研修帰りのエース公安マン。ロシア外相が来日し、随行員の行動確認を命じられるが、同時期にベトナム人の殺害事件が発生。容疑者にロシア人バイオリニストが浮かび上がる。一方、外事二課で中国担当の盛本もこの事件の情報を集めていることがわかる。倉島は、ベトナム、ロシア、中国が絡む事件の背景を探るが…。
外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、 生活費を切り詰め株に投資することで、 給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。 恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、 とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。 そのアップデートされた物々交換の世界は、 マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。 やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、 華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。 金に近づけば、死に近づく。 高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。 羽田圭介の新たな代表作。
明日に挙式を控えた、信用金庫勤めの井東春香と、パン屋の息子でデザイナーの細井真平。ごくごく普通に暮らす二人が、偶然の出会いから愛を育み夫婦になる。家族で過ごす最後の夜、春香の両親と弟、そして祖母には、それぞれに伝えたい想いがあった。一方、新しい家族を迎える細井家でも、実の母を早くに亡くした真平に、今だからこそ話しておきたいことがあり…。結婚前夜を、当人たちとその家族の視点から紡ぐ感動の物語。
経理部に勤める歩美は、やり手でイケメンな副社長・桂馬の内緒の奥さん。諸事情あって交際0日の結婚のため一年間のお試し期間中なのだ。「大丈夫だから、そのままイッてみよう」桂馬は初心なカラダを夜ごと優しく愛撫するも一線は越えない…どんどん彼に惹かれていく歩美は、桂馬の誕生日に最後まで愛してもらおうと自分をプレゼントすることに!?
21年前に住人が殺された、いわゆる“事故物件”で共同生活を することになった初音、ユウさん、真歩の女性3人。 部屋に置かれた曰くつきのワープロに真歩が文字を入力すると、 21年前に死んだ箕浦奏人が文字を打ち返してきた。 どうやらワープロに霊が宿っているようだ!? 3人は怯えながらも、奏人がなぜ殺されたのか、 犯人は誰なのか、奏人と交信しながら探っていくが……。 百合、オカルト、酩酊推理etc.…西澤保彦の魅力満載!長編ミステリー。
日本海軍はガダルカナル島の米航空基地を壊滅させるため、戦艦大和による巨弾砲撃を実施。奇襲攻撃は見事成功するが、極秘裏に造られていたマラバ泊地を見逃してしまう。そんな中、同泊地に一機のB17爆撃機が着陸する。一方、ガ島攻撃後、ムンダに向かう米艦隊の情報をつかんだ日本軍は、同島に戦艦大和、そして水上機母艦瑞穂を急行させるのだが、ガ島方面から飛来したB17爆撃機により水上母艦瑞穂が沈没してしまう。「ガ島の飛行場はまだ生きている」。そう考えた日本軍は潜水艦による偵察を徹底的に行い、ついにマラバ泊地を発見。ガ島攻撃部隊を特別編成し出撃するのだが…。
昭和20年2月、帝国海軍は珊瑚海海戦で米英連合軍艦隊に壊滅的な打撃を与え勝利する。勢いそのままポートモレスビー攻略に向かい米軍航空兵力の一掃に成功。マッカーサー軍は後退を余儀なくされる。その一報を聞いたルーズベルトは倒れ、トルーマン副大統領が政務を引き継ぐことになった。チャーチル英首相に日本との講和を助言されるも、あくまでハワイ奪還に固執するトルーマン。終わりの見えない対米戦に、帝国海軍は米本土空襲の準備を進める。一方の米軍は、ドイツ敗戦を受け米陸海軍の大兵力を太平洋に集結させるのであった。猛将対知将の最終決戦!日米大艦隊がついに激突する!
暗く切ない人間模様のなかにどこか親しみを感じる「あの路この路」、虚無感をいだく主人公とその友人の死を扱った「木椅子の上で」の2編と田畑文学の柱のひとつといえる「石ころ路」を収録。自身の病と私生活の苦悩から逃れるように三宅島へ赴いたひとりの男が主人公の「石ころ路」は、現地の風景や住民との交流をきっかけに、陰鬱としたなかに一筋の光を見つけるように少しずつ自身を取り戻していく姿が描かれます。
人気作家・二階堂紡季には、誰にも言えない秘密があった。露呈すれば、すべてを失う。しかし、その秘密と引き換えにしても、書かねばならない物語に出会ってしまいー謎を解かなければ。私は作家なのだから。
その湖寨は、かつて漢たちが集った場所ー。吹毛剣の持主が「替天行道」の旗を継いだ場所だった。チンギス・カンは、弟や息子たちと共に金国に大軍で遠征し、攻城戦をおこなっていく。対する金国は、定薛を総帥とする防衛軍を組織し、福興が軍監に就く。ホラズムの皇子ジャラールッディーンは、ジャムカの息子マルガーシらと共にサマルカンドに戻る。マルガーシはアラーウッディーンに謁見を果たした。そしてチンギスは、旗を出さずにある場所へと向かう。それは梁山湖のなかにあったー。
ミュージシャンとして活躍する渡會将士(わたらい・まさし)氏の初となる小説作品。 主人公が訪れた長崎県で、奇妙な女性と出会い、不思議な出来事に遭遇するエンターテインメント小説。 ある夜「僕」は長崎港でずぶ濡れの女と出会う。 女は美しく、その瞳は井戸の底のように暗かった。 和、中華、オランダの文化が入り乱れる長崎を舞台に、オールドムービー、歴史、オカルト、グルメがちゃんぽんになって、物語は奇妙なキメラへと姿を変えてゆく。 200曲以上の詞を世に送り出してきたミュージシャンの鮮烈作家デビュー作!!
幸道光り子。1973年、尼崎の長屋「さつき文化」で生まれる。幼ななじみで母子家庭に育った江口明、作家志望で繊細な西条司、父親が「京野不動産」社長である京野麗奈らとともに青春時代を過ごした彼女は、貧しい家庭で生まれ育ったため、堅実に生計を立てられる銀行員を目指していた。そんな光り子に転機が訪れる。きっかけとなったのは、1995年のあの大地震だったー。
聞きたいって言った人、いなかったし、話したいと思う相手もいなかっただけ。ね? 聞く? 聞く?FINAL FANTASY VIIの世界を彩るふたりのヒロイン、エアリスとティファの知られざるそれぞれの軌跡
日本から米国に向かういずれかの旅客機に不審者“QUEEN”が乗り込み危険行為を行う可能性が高い、という情報を得た警視庁。警備部特務班の兼清、上司の矢島、2名のスカイマーシャルを14時羽田発ニューヨーク行きの“さくら212便”に搭乗させた。だが兼清の警戒を嘲笑うように、離陸から1時間半後、一般客には知られていないクルーバンクで遺体が発見された。いったい何者が、どうやって?そして、スカイマーシャル・兼清の孤独な戦いが始まる…。
奄美諸島徳之島出身の東貞吉は、琉球警察名護警察署に配属になり、米軍現金輸送車強奪事件を解決する手柄を立て、公安担当になる。沖縄刑務所暴動で脱獄した人民党の末端、島袋令秀に接近し、自分の作業員(スパイ)に育てることにー。令秀が人民党の瀬長亀次郎に心酔していくなか、貞吉は公安としての職務を全うするために、敬愛する瀬長を裏切ることができるのか。矛盾と相克に満ちた沖縄で、主人公は自らの道を歩んでいく。
都会のはずれのガケの上にある古いアパート。その屋根裏にひっそり暮らしている元オーボエ奏者のサユリ。唯一の友だちは、頭の中にいる小さなチェリー。個性的で魅力的な登場人物が織りなす待望の長編小説ー。
出版社の小説大賞に送られてきた一篇の小説原稿。それは失踪した大学院生から送られてきた“奇怪な手記”だったー。奉森教という土着の宗教が根づく村、犬啼村。「私」は突如大学を辞め帰郷した親友・阿字蓮華に会うため村を訪れる。阿字は急死した姉に代わり、村の神事を司る生き神=狗神となっていた。おりしも村は二十年に一度の大祭前夜。「私」は祭りの取材に来ていた大学准教授・鵜飼と奉森教の歴史を調べるうち、村に隠された恐ろしい秘密を知ってしまう…。第二回最恐小説大賞受賞、原始の恐怖が木霊する圧巻ホラー!
洞人のナルバント一家や文官・ヒューバートらを領民に加え、さらに賑やかになったイルク村。強大な魔物、フレイムドラゴンが襲来するも、領民みんなで力を合わせて無事に打ち勝つことが出来たのだった。そんなイルク村を上空から見下ろすのは、立派な翼を持つ一匹の鷹。セナイとアイハンは鬼人族たちと協力してその大きな鷹を捕まえることに成功するが…。草原の南に、岩塩が取れる広い荒野があることを知ったヒューバートは、貴重な資源を取れる土地を管理せずに放置していることに驚き、領地として確保するためにディアスを連れて測量に向かう。しかし、すり鉢状になった岩塩鉱床の中心部は、なにやら怪しい雰囲気が。-ある吹雪の一夜。外に出られずに退屈した双子にせがまれ、ディアスは傭兵時代のある村での出来事について語り始める。そのエピソードは、周囲の人間には「黄金低地」という伝説的な武勇伝として語り継がれていて…。ディアスの知られざる過去の大活躍が、今明かされる!!