2022年4月発売
ノルウェーの雪に閉ざされた田舎町。ある時、11歳の少女シスが通う学校に、同じ年の少女ウンが転入してくる。ふたりは探り合うように距離を縮め、まもなく運命的な絆で結ばれるが、ウンは森深くの滝の麓につくられた神秘的な“氷の城”へ行ったきり、姿を消してしまう…特別な関係、孤独、喪失からの回復を、凛とした文体で幻想的かつ象徴的に描き上げたヴェーソスの代表作。1965年度北欧理事会文学賞受賞作。
たった四つの文字から「畏るべき豊穣」を生む遺伝情報と、バッハのゴルトベルク変奏曲。その二つの構造の不思議なまでの符合を鋳型にして、精巧なロマンスとサスペンスが紡ぎ出される。 1957年、遺伝暗号の解読を目指す若き生化学者スチュアート・レスラーに、一人の女性がゴルトベルク変奏曲のレコードを手渡す。25年後、公立図書館の司書ジャン・オデイは、魅力的な青年フランク・トッドから、奇妙なリサーチの依頼を受ける。夜ごとゴルトベルクを聴きながら凡庸なコンピュータ・アルゴリズムのお守りをしている、恐ろしく知的で孤独な同僚の正体を調べたい、と。長い時を隔てて存在する二組の恋愛が、互いを反復し、変奏しながら二重螺旋のように絡み合う。なぜレスラーは20世紀生物学の最大の発見に肉薄しながら、突如歴史から消えたのか? その謎が解かれていくとともに、芸術、言語、音楽、愛、そして生命の継承の意味までを巻き込んだ語りが縦横に拡がってゆく。 34歳の若きパワーズが持てるすべてを注ぎ込み、小説の四隅を押し広げようとした長編第3作にして、全著作のなかでも屈指のマスターピース。Time誌ブック・オブ・ザ・イヤー(1991)、Publishers Weekly誌ベスト・ブックス(1991)などに選出、全米批評家協会賞(1991)最終候補作。
2013年度キングオブコントグランプリ、2020年、2021年、タレント初の岸田戯曲賞最終選考の鬼才コント師・戯曲家、岩崎う大の初ノベライズ。 舞台は、どこにでもあるような田舎の民宿。唯一のウリは、窓に広がる雄大な海の景色。ここに非常識な宿泊客たちが押し寄せ、繰り広げられる空前絶後のバカ騒ぎ…。…心に傷を持つ客たちが「ピンクスカイ」という現象を通して、シンクロし、人生の帰結に巡り会う…。 「ピンクスカイ」とは何なのか? まさに現代版パンドラの箱。 岸田戯曲賞最終選考にも残る「劇団かもめんたる」が、第一歩を踏み出した一作を小説とし大幅加筆修正しオリジナル小説化しました。 エンタメ各界人からも注目の一冊!
心霊写真の合成が趣味の僕が撮影をしていると、一人の女性がカメラに映りこんできた。しかし撮影されたデータには無人の交差点が映っているだけだった。映りたがりの幽霊、悠川さんがこの世に残した未練とは……?(『悠川さんは写りたい』より) ほか、乙一贈る恐ろしくて切ない出会と別れの短編集。
戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。 脚光を浴びながら、自身の才能を信じ切れず葛藤する、現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアン。 CGの嵐が吹き荒れるなか、映画に魅せられた2人の魂が、時を越えて共鳴する。 特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。その愛と真実の物語。
「彼女は無理やりこの国に 連れてこられただけなのだ」 この女性(拉致被害者)を連れて、 日本に亡命するーー。 祖国に絶望した北朝鮮海軍の精鋭達。 45年前、島根の海岸で拉致された日本人女性。 彼らを乗せた潜水艦が辿る壮絶な運命とは? 「お父さん、お母さん……日本に帰りたいよっ」 北朝鮮の陸海空軍による大規模軍事演習。国の威信をかけたこの行事で、桂東月(ケ・ドンウォル)大佐は潜水艦による日本への亡命を決行した。しかも、拉致被害者の女性を連れてーー。だが、そんな彼らを朝鮮人民軍が逃すはずがない。特殊部隊、爆撃機、魚雷艇、対潜ヘリ、コルベット艦、そして……。息つく間もなく送り込まれる殲滅隊の攻撃をくぐり抜け、東月達は日本に辿り着けるか? 極限状況ゆえに生まれる感涙の人間ドラマ。超弩級エンターテインメント!
私たちは自分の親も子も、生まれる国も時代も選べない。さらに容姿も能力も性格も選べない。しかもこれら与えられたものを拒否する権限も持たない。自由?選択権?そうしたものを本当に人間は持っているのだろうか。一体何者が、どんな初期設定でこの世界を造ったのだろう。近々今の時代が新しい時代に取って代わられる〈大峠〉が来ると言われている。その大峠の後の世界を見てきた男の目を通して話が語られる。現在権威を誇っている教育システム、宗教組織、マスメディアという、人類を幻想の中に閉じ込めている勢力は、果たしてその未来世界で語られている通りに滅び去ってしまうのだろうか。今地上の人々は、我々が何処へ向かっているのか、何処へ辿り着くのか解らないでいる。一方、彼が出会った様々な人間は独自の世界解釈とこの宇宙の成り立ちについて色々と語っている。できればその一つひとつに耳を傾け、読者の確かな目で検証していただければと思う。
紀元前五世紀、十六の大国が争う古代インド。社会の急激な変革は古い神々の教えを揺るがせ、人々の心に虚無がはびころうとしていた。釈迦国の王子ガウタマ・シッダールタは虚無にあらがいながらも生きることの苦しみを悟り、国も身分も家族も捨て、苦からの脱却を目指す。長い修行の果てに“目覚めし者”仏陀となった彼は、全ての衆生の救済を志すー。古今東西の仏教研究・学説を下敷きに、シッダールタ=仏陀の誕生から入滅、それを彩る「虚無の太陽」プーラナら自由思想家、多くの弟子たち、反逆児デーヴァダッタ、釈迦国の滅亡、王舎城の悲劇、殺人鬼アングリマーラなどを新たな解釈で描き出す。 小乗仏教的志向と大乗仏教的志向の萌芽とその対立の中で、仏陀最後の旅を記した経典である大般涅槃経をなぞりながら、そこに隠された仏教分裂に至る原因と思惑を解き明かす最終章は圧巻である。人間仏陀の偉大なる生涯と挫折を描いた長編歴史小説。 第一章 四門出遊(しもんしゅつゆう)/第二章 梵天勧請(ぼんてんかんじょう)/第三章 初転法輪(しょてんぽうりん)/第四章 祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)/第五章 諸行無常(しょぎょうむじょう)/第六章 破邪顕正(はじゃけんしょう)/第七章 涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)/参考文献
全寮制男子高で起こった、不可解な殺人事件。 同室の迷コンビが挑む、青春ミステリー! 全寮制男子校である霧森学院の旧寮「あすなろ館」。 昨年起きた“ある事件”のせいでほとんどの生徒が新寮に移ってしまい、今はたった6人の生徒しか入居していない。 あすなろ館の住人の一人・兎川雛太(とがわ・ひなた)が2年に進級した始業式前日、新たな入居者がやってきた。今年度から学院に編入してきた鷹宮絵愛(たかみや・エチカ)。彼は動物にしか心を開いていない変人だが、優れた頭脳の持ち主だった。奇しくも同室になった二人は、最初は反発するも次第にお互いを知っていくーー。 しかし、ある日、あすなろ館に向かう遊歩道の途中にある東屋で、学内で絶対的な権力を持つ生徒会長の湖城龍一郎が何者かに殺害された。現場の状況から、犯行が可能なのはあすなろ館の住人だけである。 転入生のエチカは湖城から目を付けられていたため、犯人の最有力とされてしまう。雛太はエチカの嫌疑を晴らすため、捜査を始めるがーー!? 予想外の結末に驚愕する! 注目の若手作家がおくる、学園ミステリ。
デルフィーンは300万ドルの負債を抱え、窮地に立たされていた。そこへサンカリアーノの国王ルッカから直々に仕事が舞いこむ。王国の催事に協力すれば、報酬は300万ドル。ただし、彼の恋人として振る舞うことが絶対条件だという。じつはルッカとデルフィーンは1年半前まで恋人同士だった。だが、王妃どころか愛人にさえふさわしくないと誹謗され、追いつめられたデルフィーンは、黙って姿を消したのだった。しかも直後に妊娠に気づくも流産し、深く傷ついていた。彼は私を恨んでいるの?涙を隠し、彼女は要求を受け入れた。
兄の突然の死に打ちのめされていたアニーのもとに、ある夜、ずっと憧れていた兄の親友ディミトリオスが現れた。彼のギリシア彫刻のように端整な顔に浮かぶ、深い憂い。二人は悲しみをぶつけ合うようにしてベッドを共にする。だが翌朝、彼は去ったーあれは単なる情事だと念を押して。7年後、アニーは困窮し、クリスマスを前に頭を悩ませていた。せめて愛しい息子にだけはプレゼントを買ってやりたい…。そこへ再び、今や億万長者となったディミトリオスが姿を現す。「ぼくの息子に会わせろ。今すぐに!」なぜわかったの?いぶかるアニーに、彼は結婚を迫る。
祖父が急死し、たった一人の孫であるパロマは突然、巨額の遺産と会社を引き継がねばならなくなった。何者かに命を狙われ、老獪な役員たちの妨害に遭う中、パロマに救いの手を差しのべたのは祖父の右腕だったダニエレ、彼女が十代のころから憧れ続けているイタリア人実業家だった。さらに彼は驚くべき提案をする。偽装結婚を申し込んだのだ。僕がボディガード代わりになり、会社経営も助けるからと。彼の言葉に、一瞬胸を躍らせたパロマはすぐに自分を戒めた。私は偽りの花嫁になるのよ。だってこれは契約だもの。
結婚式を明日に控えたミランダは、パーティを抜けだし、ひとり書斎に隠れてつかの間の休息をとっていた。愛するショーンは今頃、独身最後の夜を友人と楽しんでいる。ショーンとの初夜を想像して頬を赤らめたとき、同じくパーティ会場を抜けてきたらしい父の秘書が、連れとともに書斎へと入ってきた。ミランダがいるとは気づかずに、ひそひそと話を始めたーショーンがミランダと結婚するのは、愛ゆえではなく、彼女の父親に、結婚と引き替えに出世を約束されたからだと。幸せの絶頂から絶望の淵へと突き落とされたミランダは…。
カーリーが大富豪の夫ステファノの浮気に耐えきれず家出をした直後、妊娠がわかった。密かに産み育てた娘が大病を患い、一刻も早く手術をと焦るカーリーは、やむなく莫大な治療費を貸してほしいとステファノに願い出た。娘の存在を初めて知った彼は、妻に究極の選択を迫るー再び結婚生活に戻るか、娘の親権を彼に渡すか。-(情熱のとき)村の外れで幼い息子と暮らすネルの前にある日、ふらりと現れた男が気を失って倒れたーそれは5年前に死んだと聞いた夫のカールトンだった!ネルは憧れの子爵だった彼と結婚したものの、夫とその家族から財産目当てといじめ抜かれた。あげくのはて、生まれた息子を自分の子とは認めぬまま失踪した彼が、なぜここに…?-(帰ってきた子爵)両親の死後、幼い自分を引き取ってくれたおじに、アリアドネは感謝していた。だが23歳になった今、見知らぬギリシア大富豪に花嫁として売られることを知り、彼女は未来の夫セバスチャンとの対面の瞬間に怯えた。意外にも若くて精悍な彼はしかし、黒い瞳を氷のように冷たく光らせている。私にこの人の妻が務まるかしら…?(ためらいの花嫁)
マデリンは夢と希望を胸に大学へ入学したものの、教授からセクハラを受けて男性不信に陥り、中退した。ほそぼそと仕事をして暮らしていたが、ある日突然、その職も追われ、住まいも失ってしまう。路頭に迷った彼女を救ったのは、大企業CEOのフィン。男手一つで生後半年の双子の赤ちゃんを育てている彼は、次のベビーシッターが見つかるまでのあいだ、住み込みで育児の手伝いをしてほしいと言ってきたのだ。ありがたく引き受けたマデリンだったが、初日の夜にいきなり彼の寝室に通され、ひどく取り乱してしまい…。
父が莫大な借金を残して急逝したため、エマは夢をあきらめ、メイドとして働きながらこつこつ返済している。ロンドンの高級住宅街にある屋敷でのパーティに派遣された夜、ずっと音信不通だった最愛の男性の姿を目にし、彼女は息をのんだーああ、あれはレッドミンスター伯爵ジャック・ウエストウッド!6年前に渡米し、今や世界的企業の社長となった彼が、なぜここに?激しく動揺したエマは派手な失態を演じてしまい、烈火のごとく怒った屋敷の主人に乱暴されそうになる。すると、突然ジャックが現れ、威嚇するように言い放った。「僕の妻に、手を出さないでくれないか」