2024年10月25日発売
40歳のこたつ記事ライター・猪名川健人は、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を引き受ける。安っぽいホームページ、雑居ビルの小さな事務所…手作り感あふれる地味なパーティーに現れたのは、生真面目にマイクを握るスーツ姿の美女・鏡原奈緒子。彼女は脅威のカップル成立率を誇る伝説の司会者“婚活マエストロ”だという。その見事な進行で、参加者は完全に鏡原の掌の上。シニア向け婚活パーティーから、琵琶湖に向かう婚活バスツアーまで、いつだってマエストロは絶好調だ。気付けば事業を手伝うことになった猪名川だが、鏡原への謎は深まるばかりで…。
許婚が事故死し、ランツァは心から嘆くも、親の決めた政略結婚から解放されたことにほっとしている自分に後ろめたさを感じていた。そんなある日、今度は亡き許婚の兄ステファノとの結婚を命じられる。彼とは、大人になってからまともに会ったこともないのに。病を患う父を安心させるためにも、ランツァは従うほかなかった。1年後の結婚式の日、祭壇でようやく顔を合わせたステファノは、驚くほど端整な顔だちで、大人の魅力をまとい、きらきら輝いて見えた。そう、ランツァは幼き日から、本当はステファノが好きだったのだ。だが、人知れず頬を染めるランツァに、彼は事務的に告げた。これはあくまでも形だけの結婚で、寝室は別だ、と。
ローマにできたばかりの新しいホテルで働くエレノラ。オープニングパーティの夜、直属のボスでホテル王のマルコへの長年の片想いがようやく報われ、情熱の一夜を過ごした。愛しい人の肌のぬくもり…この瞬間を、私はずっと思い描いていた。だが翌朝目を覚ましたとき、マルコの姿はすでになかった。早朝の便でNYへ帰ったのだと知った数日後、彼から電話で、きみと過ごしたあの一夜は間違いだったと謝罪された。2カ月後、エレノラは彼の薄情な言葉を思い出し、ぎゅっと目を閉じた。身ごもってしまったのだーマルコの子を。部下と過ごした一夜をなかったことにしたがっているボスの子を。
“永遠に君を愛する”-繰り返される口づけ。18歳の切ない誓い。義兄ジェイクと結ばれたジェイミーは幸せの輝きに包まれていた。だがその日、ジェイクがほかの女性と抱きあう姿を見て、彼女はすべてに絶望し、無言のまま家を去ったのだった。6年がたち、義兄との思いもよらぬ突然の再会が、あの日の苦痛よりはるかに酷な傷をジェイミーに刻みつけた。すでに婚約者がいる、大企業社長となったジェイクが唇を歪め、辛辣な言葉を浴びせてきたのだ。「あれから何人の男を知ったんだ?」ああ、なぜそんなことを。わたしは…あなたしか知らないのに。ジェイミーは心の中でつぶやき、胸に巣くう孤独感にもだえた。
弟の学費を工面できずに苦悩していたオードリーはある日、仕事の休憩中に上級秘書たちの会話を偶然耳にしてしまう。若くして巨万の富を築き上げたCEOのヴィンチェンツォが、義理の子供のため、母親役を務める女性を雇おうとしている、ですって?エキゾチックな黒髪、地中海のように美しいブルーの瞳、そして映画スターのように見事なスタイルの彼が?ずっと秘かに憧れる男性のもとで、幼い子供の世話をする。それで弟が進学できるのなら、ほかに欲しいものなんて何もないわ。ところが面接の場で、ヴィンチェンツォが驚きの言葉を口にする!「母親になるということは、僕の妻になるということだー昼も、夜も」
ジゼルは代々続いてきた家業の会社を倒産から救うため、冷酷非情で有名な富豪アダムに助けを求めた。南仏のレストランに現れたアダムはとても大柄で屈強な男性で、いきなり彼女をファーストネームで気安く呼ぶほど傍若無人だった。なんて失礼な人。ジゼルは憤概したが、彼の機嫌は損ねられなかった。緊張で食べられない彼女と違い、アダムは食欲旺盛に料理を平らげるとにこやかに言った。「僕は君が欲しい。僕と結婚するなら金を出そう」ジゼルは屈辱と怒りで爆発しそうだった。けれど心の奥には、アダムの荒削りな魅力に惹かれるのをとめられない自分がいた…。
エリアナはパーティ会場で見覚えのある顔を見つけ、凍りついた。元婚約者のレアンドロス!6年前、エリアナは婚約指輪を返し、別の男性と政略結婚した。病床の父と困窮した家を守るための決断だったが、彼は知る由もない。しかも夫は事故死してしまい、エリアナは遺産も屋敷もすべて義父に奪われて放り出され、今は薄給のパート従業員の身。だが彼はその弱みを知ってか、強引に彼女をパリへ連れ出し、贅沢に着飾らせ、オペラに同伴し、ついにはベッドへ組み敷いた。ああ、これが新婚旅行だったら…。すると突然彼女が苦悶の声をあげ、レアンドロスはショックで呆然とした。「きみは初めてだったのか?どういうことだ?」
三姉妹の末娘で、美人の姉たちと比べられて育ったレイチェル。周りからは“シンデレラ”などと呼ばれ励まされるけれど、私は醜いアヒルの子。きっと愛も知らずに一生を終えるのだろう。そんな折、レイチェルは親友のいとこのザックと偶然出会う。目も覚めるようなハンサムな実業家で、自信たっぷりな彼は、他の女性には目もくれず、なぜか彼女だけを熱心に口説いてきた。私をからかっているの?いったい何が狙いなのかしら。訝しみながらも彼の魅力に抗えず、レイチェルは誘われるまま車に乗り込むが、天候が急変して近くの宿に避難する羽目に。しかも案内された屋根裏部屋にはベッドがひとつしかなくて…。
アンジェリーナは16歳で産んだ息子を一人で育てている。息子の父親はジェイク・ウィンターズ。危険な魅力あふれる不良少年だった彼にひと目で心奪われてアンジェリーナはバージンを捧げたが、周囲に仲を引き裂かれ、ジェイクには息子の存在さえ知らせていなかった。ある日、突然ジェイクが訪ねてきて、二人は15年ぶりに再会する。今や裕福な弁護士となった彼に、二人だけで夜を過ごそうと熱く囁かれ、アンジェリーナは激しく動揺する。息子のことを、いったいどうやって切り出せばいいの…?
慈善学校の教師助手のクララは、クリスマスに老公爵と結婚する教え子に招かれ、公爵邸を訪れることに。8歳で両親と死に別れた貧しいクララにとって、夢でしか見たことのない上流階級のクリスマスは楽しみで仕方なかった。だが迎えに来た公爵の跡継ぎヒューゴはみすぼらしい姿の彼女を見つけると、険しい顔で首をかしげ…。(『クリスマスを知らない壁の花』)。ベラは従妹の駆け落ちを阻止しようと、待ち合わせ場所に向かった。ところがそこに現れたのは、従妹の恋人ではなく、その従兄のデヴリル伯爵ニコラス。ベラと同じく、従弟の駆け落ちを止めに来たという彼は、傲慢で不機嫌で冷たくて、まさに“デビル伯爵”だった。しかし大雪になり、ベラは彼と一緒に屋敷に滞在することにー!(『魅惑の魔王伯爵と永遠の愛を』)。農園の娘マリアは、足をくじいた兄に代わった七面鳥の行商に出たものの道に迷ってしまった。すると黒髪の魅力的な紳士が現れ、親切にも道案内してくれるという。優しい彼に胸を高鳴らせたマリアはしかし、彼の自己紹介に驚愕する!「ぼくはアレックス。スタンフォード子爵だ」しかも、彼には奥ゆかしく優雅な婚約者がいた。(『子爵の身代わりシンデレラ』)。
天涯孤独のアレグラは優しい親戚のもとに身を寄せていたが、親戚が亡くなるや、その新妻によるいじめが始まった。半分イタリアの血を引くアレグラは疎ましく思う新妻は、彼女を薄汚れた屋根裏の倉庫に追いやり、メイド扱いしようとした。そんな不遇なアレグラだったが、ある夜会で運命の出逢いを果たすー。女性を誘惑してもてあそぶと噂の悪名高き放蕩男爵ウィリアム。若い娘はみな怖がってこの男爵に近づこうとしないというのに、アレグラは彼の魅力に痺れている自分に戸惑った。さらに、その夜会で親戚の新妻がアレグラを見世物にしようとしたとき、ウィリアムが颯爽と前に進み出て、そつなく彼女を辱めから救い…。
四国のハイデルベルクからシャトーブリアンの「死活」を考える。フランス文学者の仮構のふるさと探求!戦後のオートバイ屋は、飛行機乗りの成れの果て?ラバウル小唄からトンコ節へ、大衆歌謡とエンジン音がこだまする、昭和百年の家族史、産業叙事詩!
老境に到ってなお失われない柔らかな感性。人生の諸相を読む者の心に直截に届けるけれん味のない自在な文章…単行本未収録の短篇・追悼文・エッセイを収める。小説家、詩人、児童文学者、翻訳者ーさまざまな分野で活躍した著者のスワン・ソング!
ダンジョンブレイクで家族を失い、保護したワーウルフの少女、キーファを娘として育てると決めた大屋ケント。愛娘のキーファとダンジョン攻略配信を始めると、ケントは独自理論で最強脳筋スキルを手に入れ、無自覚最強状態になっていた。そんなある日、配信中だったフォロワー150万人を誇るカリスマJK配信者カナのピンチをうっかり救ってしまうと、モンスターをワンパンする動画が大バズりしてしまいー。