著者 : イヴォンヌ・ウィタル
図書館司書のキャラは、父の書斎で言い争う声を耳にして扉を開けた。父といたのは、非情な仕事ぶりで知られる商売敵の大富豪ヴィンス。最近、彼はキャラと顔を合わせるたびに無遠慮な視線を送ってくる。会社の不振に窮した父がヴィンスに多額の借金をし、今週末までに返せなければ、会社も家も失うという。なんてこと…。父を救うために、できることならなんでもするわ。目に無慈悲な光を宿して父を追いつめるヴィンスに、たまらずキャラは期限を1年延ばしてほしいと懇願した。ヴィンスは何か思惑ありげにうなずくと、驚くべき条件を出した!「望みを叶える代わりに、僕は担保をいただくー僕と結婚してほしい」
「町の向こう側の子か。御用聞き用の出入り口を使うべきだ」仕立ての仕事をする母の使いでメリック邸を訪れたマーゴの胸に、密かに憧れていたジョーダンの言葉が突き刺さった。裕福な家に生まれた彼と、そうでない自分ーそれを痛烈に意識させられ、17歳のマーゴの心は深く傷ついた。注文の品を届けに来ただけなのに、こんなふうに言われるなんて…。彼女の淡い恋はその日、無残に砕け散ったのだった。ところが7年後、看護師となったマーゴに皮肉な運命が降りかかる。以前よりはるかに魅力を増したジョーダン・メリックが、彼女の働く病院に、上級外科医としてやってきたのだ!
女手ひとつで3歳の息子を育てているアリソンは、息子の病気が少しでもよくなればと、都会を離れることに決めた。けれども、療養先では思うような仕事が見つからず途方に暮れる。そんなとき、4年前に別れた夫のダークが目の前に現れた!出逢いからまもなく結婚したものの、彼は一度も愛情を示してくれず、片想いに苦しんだアリソンは、とうとう家を飛び出したのだったーおなかに彼の子を宿していることを告げないまま。今、息子の存在を知り、ダークは猛然と彼女を脅しにかかった。「我が館に住みこんで女主人として働け。さもなければ…この場で息子を奪い取り、きみを地獄送りにしてもいいんだぞ!」
ジェリーは総合病院の看護師をしている。その日は、受け持ちの患者の一人が息を引き取った。仕事が終わったらまっすぐ帰って泣きたい気分だったが、親友の誕生日パーティーを欠席するわけにもいかない。だが彼女はそこでロロ・ヴァン・クリフに出会った。裕福でカリスマ性あふれるロロとひと目で惹かれ合い、じきに彼は仕事で外国に行ってしまうと知りながら、ジェリーは、愛のよすがとなる一夜を捧げた。数年後、幼な子を連れて、彼と運命の再会をするとは思いもせず。
憧れの人と初めて結ばれ、トリシアは幸せに酔いしれた。相手の名はカイル・ハモンド、世界有数の億万長者だ。施設で育ったトリシアは彼との温かい家庭を夢見たが、翌日、突然カイルの父親が心臓発作で亡くなり、事態は急変する。カイルの妹が、トリシアが父から薬を奪ったとでっちあげたせいで、トリシアは彼の怒りを買い、絶縁されてしまった。6年後、ようやく立ち直ったトリシアを、皮肉な運命が待ち受けていた。彼女の勤め先を買収した大企業の社長が、なんとカイルだというのだ!新しいボスとしてやってきた彼は冷徹に彼女を見据え、握手さえ拒んだ。彼は私をどうしようというの?恐ろしい予感にトリシアは身震いした。
ある日、ローラは姉夫婦が死亡したという連絡を受け取った。知らせてきたのは義兄の親友で名門出身の大富豪アントン・ドヴィア。何度か会ったことはあるが、過剰なまでの男っぽさや尊大さに、ローラはつい怖じ気づいてしまい、ひどく苦手な相手だった。遺された姪サリーのもとに駆けつけると、そこにはアントンがおり、驚いたことに、後見人としてサリーを引き取ると言う。たしかに一介の秘書の私より彼に育てられたほうが幸せかもしれない。でも、両親を亡くして不安になっている姪を放ってはおけないわ…。ためらい、思い悩むローラを、アントンは嘲るように眺めると、有無を言わせぬ口調で言った。「君は僕と結婚しなくてはならない」
看護師のジョアンヌとその弟は交通事故で両親を失って以来、心やさしい叔父から経済的援助を受けている。だが叔父の死により、それも打ち切られることとなった。弟にはなんとかするとうけあったものの、自分だけの稼ぎでは、彼の学費をとても捻出できそうもない。途方に暮れるジョアンヌは手術中もミスを重ねてしまう。見かねた形成外科医のダニエルは彼女に理由を問いただし、事情を知るや結婚を条件に融資を申し出ると冷たく告げたー君との取り引きは全くのビジネスだ。1年も続かないだろう、と。
ジェニファーは、もう二度と誰も愛したくないと思っていた。婚約者を飛行機事故で喪い、生きる意味を失ってからはー打ちひしがれる彼女は仕事を辞め、奨められるままに、ある老婦人の付き添い人をすることになった。ところが彼女を見るなり、雇い主のハンターは声を荒らげたのだ。母と話があうように、年配の女性を希望したのに、と。追い打ちをかけるような、その冷たい物言いに心底怯えてしまうジェニファーだったが、彼が幼なじみには優しくするのを見て、なぜか胸の中心がずきりと疼くのを感じた。
亡き父の借金返済に追われる天涯孤独の秘書、キャロラインはある日、まだ会ったことのない社長グスターフの部屋に呼び出された。そこにいたのは、先日、豪雨の日に助けてくれた、長身でたくましくーでもひどく傲慢でぶしつけだった男性。彼が社長と知っただけでも驚きなのに、借金返済を肩代わりする見返りに期間限定の妻にならないかと持ちかけられ、キャロラインは呆然とするばかりだった。折しも、邪悪な金貸しの男からおどされていたのだ。2週間以内に全額返済できないなら愛人になれ、と。彼女は愛されないのを承知で、グスターフとの結婚にすがるしかなく…。
異国の小さな村で、ジュリアは看護師として慎ましく暮らしていた。かつての喧噪がまるで嘘のようだ。5年前、ジュリアは大病院で忙しく働きながら、恋人である優秀な外科医ネイサンとの結婚を目前にしていた。ところがジュリアの祖母が重病にかかり、彼女は悩んだ末に、さらなる飛躍を目指すネイサンの負担にならぬよう、真実を告げずに黙って彼のもとを去ったのだ。私の選択に間違いはなかったはず。強がるジュリアだったが、村で偶然彼の姿を見かけた瞬間、切ない想いがよみがえった。しかし、ネイサンはまるで人が変わったように彼女を責め…。
デイルは幼いころから修道院の寄宿学校に入れられ、両親からほとんど顧みられることもないまま成長した。卒業を控えたある日、彼女の後見人だという弁護士リックが現れ、飛行機事故で亡くなった両親が莫大な財産を遺したこと、成人するまでデイルを引き取り、彼の保護下に置くことを告げた。この男性とひとつ屋根の下で暮らすなんて…デイルはとまどった。彼の底知れない瞳に見つめられると、なぜか心の奥が震える。それが恋だち悟るのと、絶望に打ちひしがれるのは同時だった。リックと、彼の美しい婚約者が話しているのを聞いてしまったのだ。デイルは“幼くて、かわいそうなほど魅力のない子ども”だと。
雨は休むことなく降り続け、今朝、メラニーは父の葬儀を終えた。実業家の父のあまりにも突然の死。そのせいでメラニーと老いた祖母には、屋敷しか残されなかった。しかも、不幸に追い打ちをかけるように、ジェイソンと名乗る、精悍な面差しをした大富豪が現れたのだ。不安におののくメラニーに、彼は憐憫の目をむけながら告げた。君のお父さんに、家を担保に多額の融資をしていた、家を失いたくなければ、君の身を僕に差し出すしかないと。余命わずかな祖母のためにも、メラニーはうなずくしかなかった。
「お願い、助けて」母と兄の懇願に、ジョスリンは動揺した。兄が父から受け継いだ会社が経営難に陥っているという。融資を頼めるのはただ1人、ラーフ・アンダースンしかいない。彼は裕福な経営者であり、かつては彼女の夫でもあった。姑にうとまれて彼女が孤立したとき、夫は冷たくあしらうだけで、愛から始まったはずの結婚生活はやがて破綻を迎えたのだった。3年ぶりに会う元夫に、ジョスリンの心はいまなお熱くなったが、一方のラーフは冷たい口調で、融資の交換条件を持ち出した。それは、彼女に跡継ぎを産ませるための再婚だった…。
「グレッグが戻ってきたの」母の言葉に、スーザンは耳を疑った。19歳で結婚したものの1年もせずに別れた元夫が、彼女の父と仕事をするために、この地へ帰ってきたのだ。もともと厳格な両親と折り合いが悪かったスーザンは、規範にとらわれないグレッグの奔放さに憧れて妻となったが、最愛の兄を亡くして別人のように変わってしまった彼になじめず、彼女から離婚を切りだしたのだ。それは、幼すぎた過ちだった。6年経っても、彼の名を聞いただけでこんなにも心が乱れるというのに、今さら笑顔で再会するなんてできない。だが、動揺を隠せないスーザンに追い打ちをかけるように、グレッグと“親しい”という女性が現れ…。
教師のリーサは事故に遭い、友人を失ったうえ、体に大きな傷を負った。退院後は、人前に出るのが怖くて教職に復帰できず、婚約者もそんな彼女を見捨てて去っていった。悲しみに沈むリーサは、傷心を癒やすため遠くの地で新生活を送ろうと、叔母の旧友一家のもとで住み込みのナニーをすることにした。両親を亡くした幼い双子の世話は楽しかったが、子供たちの伯父アダムだけは彼女に容赦なく厳しい目を向けた。秩序ばかり求める彼の姿勢には、幼子への同情や思いやりは微塵もなく、まだ足を引きずる彼女の能力に関しても疑念を口にしてはばからない。思わず悔し涙が溢れ、リーサの瞳に映る彼の冷たく美しい顔が歪んだー
富める者と貧しき者ー線路を境に、マーゴの住む町は二分されていた。貧しい地区に生まれたマーゴは少女のころから裕福な一族出身のジョーダン・メリックに心ひそかに憧れていた。けれども17歳のとき、その淡い恋心は無残にも打ち砕かれた。仕立ての仕事をする母の使いでメリック邸に注文の品を届けに行くと、応対に出たジョーダンの口から、ひどく侮辱的な言葉が放たれたのだ。「町の向こう側の子か。御用聞き用の出入口を使うべきだ」以来、マーゴは町の富裕層を嫌悪し、かかわり合いを避けてきた。ところがそれから7年後、彼女が看護師として働く病院に、上級外科医としてジョーダンが新たに着任することになるとは!
26歳のエミイは、伯父の旅行会社でバスガイドをしている。若くして愛する人を次々に亡くしてきた彼女は、一生、恋愛も結婚もしないと固く誓っていた。そんなある夜、エミイは伯父の家でルーク・タナーを紹介される。10歳以上も年上の彼は、ハンサムな敏腕実業家で、高級ホテルチェーンを所有する、経済界の大物とのことだった。伯父の顔を潰すまいと、エミイは笑顔を絶やさなかったが、心の内では、どうか早くパーティが終わってほしいと思っていた。彼女は知る由もなかった。ルークの心がとうに決まっていたことを。翌日から始まる怒涛の誘惑からは、もはや逃げるすべはないことを。
女手ひとつで3歳の息子を育てているアリソンは、息子の病気が少しでもよくなればと、都会を離れることに決めた。だが療養先では思うような仕事が見つからず途方に暮れる。そんなとき、4年前に別れた夫のダークが目の前に現れた!出会って1カ月で結婚したものの、彼は一度も愛情を示してくれず、片思いに苦しんだアリソンはとうとう家を飛び出したのだったーおなかに彼の子を宿していることを告げないまま。今、息子の存在を知り、ダークは猛然と彼女を脅しにかかった。「我が館に住みこんで女主人として働け。さもなければ…この場で息子を奪い取り、きみを地獄送りにしてやる!」