著者 : 麦田あかり
『醜いあひるの恋』両親を亡くし、叔母に引き取られた看護師見習いのアラベラ。一緒に育った美人でわがままな看護師の従姉とは違い、平凡な顔で控えめな彼女はある日、気の進まない従姉に代わって、小児患者につき添ってオランダ旅行へ。ところが運転手が心臓発作を起こし、バスが横転してしまう。幸い彼女にけがはなく、助けに来たハンサムなオランダ人医師ギデオンが怖がる子供たちをなだめる様子に胸がときめいた。その瞬間、ずっと比べられてきた美しい従姉の顔が脳裏をよぎったーたとえ運命を感じても、私なんて恋するだけ無駄よ。『名目だけの花嫁』15歳の頃から恋い慕うアレンチア国皇太子のアントニオと婚約したクリスティーナ。けれども4年も無関心を決め込まれて放置されたため、この婚約はきっと解消されるのだろうと覚悟していた。周囲の人々から密かに“醜いあひるの子”とあだ名されてきた私だし…。しかし予想に反して、結婚式が盛大に挙げられることになったが、クリスティーナの心は複雑だったーウエディングドレスが着られるなんて夢みたい。でもこの結婚は、アントニオに愛されるためではなく、彼の妹のスキャンダルから国民の目をそらすためなのね。
恋人にプロポーズされると思って食事に出かけた看護師のアレシーア。だが、用件は週末泊まりがけで遊びに行こうというもので、いいかげんなつき合いはできないとつっぱねると、怒った相手は勘定もすませないままレストランに彼女を置き去りにした。どうしよう。給料日前の私がフルコース2名分なんて払えるはずもない。待てど暮らせど恋人は戻ってこず、いよいよ切羽詰まったアレシーアは、不意に現れたオランダ人紳士サレ・ファン・ディーデレイクに救われる。彼はアレシーアに代わってそつなく勘定をすませ、寮まで送ってくれた。そのとき彼女はまだ知らなかったー翌日病院でサレと再会することも、彼から子供たちの母親になってほしいとプロポーズされることも。
夫を事故で亡くしたばかりのパーラは街をさまよっていた。身寄りのない彼女を名ばかりの妻にして、虐げ続けてきた夫からようやく解放されたものの、不安でたまらなくなったのだ。バーに入ったパーラは、一人の男性に思わず目を奪われた。美しい横顔に刻まれた深い孤独と哀しみの陰ー生まれて初めての情熱に溺れ、彼女は純潔を捧げてしまう。ところが葬儀の当日、斎場で彼と鉢合わせして仰天した。アリオン・パンテライデス?夫のボスの兄だったなんて…。恥知らずな女だと蔑まれ、傷ついたパーラはまだ知らなかった。まさかおなかに彼の子を身ごもっていようとは。
ルイーズは、突然会社に現れたジャコモを見て驚いた。別居中の夫がなぜここに?離婚の手続きをする気になったとか?イタリア人富豪のジャコモは事故で1年分の記憶を失ってしまい、その時期に自分が結婚していたと知って、妻に会いに来たという。記憶を取り戻す手助けを頼まれ、ルイーズは迷った。二人はたしかに誰よりも惹かれ合い、夫婦の誓いを立てた。でも結婚後、なぜか急に冷たくなった夫を思い出すのは今でもつらい。ずたずたにされた心を守りたくて、彼女は条件を出した。「それなら妻としてでなく、家政婦としてでお願い」と。
オーラはずぶ濡れの下着姿で、異国の皇太子カリムの前にいた。皇太子は負債を返せなくなった彼女の牧場を買いに来たのだ。並はずれて凛々しい男性に、こんな姿を見られるなんて。屈辱感に震えつつも、オーラは着替えて契約の話し合いに臨んだ。ところがカリムは彼女に年齢を尋ね、22歳という答えを聞くと驚くようなことを言った。「僕の婚約者になってくれ」毎日泥と汗で汚れてばかりの、ろくにデートの経験もない私が?オーラが真っ赤な顔であわてていると、皇太子は冷笑した。「君と結婚するつもりはない。恋人らしいことをするつもりもだ」
私はいま、彫像のような美貌のギリシア大富豪、マックス・ヴァシリコスにエスコートされている。鏡の中の自分を見て、エレンは息が止まりそうになった。これが“象みたいに大柄で醜い”と継姉に嘲られている私なの?マックスが手配した美容師たちの手で麗しく変身したエレン。華やかな慈善舞踏会で彼と踊り、翌日からは彼に誘われるまま美しいリゾートで夢のようなバカンスを過ごした。夜ごと情熱的な愛撫に溺れながら、エレンは自分に言い聞かせた。ときめいてはだめ!彼にとって、これは策略にすぎないー亡き父が唯一遺してくれた、私の命より大切な屋敷を奪うための。
5年前、リリーは車の事故で死んだーでも本当は、名前を変え、別の場所で暮らしていた。血のつながらない兄ラファエルとの愛に溺れていたリリーにとって、そうするしか中毒のような関係から抜け出すすべがなかったのだ。ところがある日、とうとうラファエルに見つかってしまう。昔、二人の関係を“汚れた秘密”と呼んだ彼に、密かに産み育てている息子のことを知られるわけにはいかない。彼の突然のキスに動揺しつつも、彼女はとっさに言った。「私はリリーじゃないわ。あなたは誰?」これまで1日たりとも、彼を忘れたことなんてないのに…。
ザブリナは隣国の王の花嫁となるために育てられてきた。今日は、彼女がいよいよそのローマン王のもとへ嫁ぐ日だ。征服王と呼ばれる恐ろしい男性には、一度も会ったことはない。そのときザブリナの前に、隣国の護衛長が現れた。銀の瞳を持つ整った顔立ちの彼に、ザブリナの胸はときめき、いけないと思いつつも王室専用列車の中で一線を越えてしまう。しかし護衛長の態度は急に変わり、ザブリナは冷たく見下された。彼女は気づいた。この人は征服王だ。私は試されたのだ!ローマン王は言った。「君は王を裏切った。結婚はできない」。
1年前の夜、ルースは婚約者と共に暴漢に襲われ、記憶を失った。気づいたときには婚約者は消えており、今も捜し続けている。彼がイタリアの名家バグネリ家の一員だという情報を頼りにベネチアを訪れた彼女は、嵐の夜、その大邸宅の前に辿り着いた。雨に打たれずぶ濡れになっていた彼女を迎えたのは、精悍な顔つきにどこか陰を感じる、ピエトロ・バグネリ伯爵。彼は婚約者が見つかるまで邸宅に滞在することを勧めてくれ、ルースはしばらくピエトロの手伝いをすることになった。白紙のままの彼女の記憶に、ピエトロとの日々が描かれていくー彼を愛し始めた頃、後ろめたそうな顔をした婚約者が戻ってきた。
突然、家を訪ねてきたイタリア富豪を見て、マヤは凍りついた。サムエーレこそ、1年半前の雪の日にほんの一瞬会ったきり、彼女がずっと忘れられなかった男性だったからだ。彼はマヤを見るなり、金めあての女と決めつけてののしった。そして、赤ん坊はどこにいると迫ってきた。彼女はあわてた。とにかく、サムエーレにあの子は渡せない。そのとき子供の泣き声がして、彼が強引に家へ押し入ってきた。富豪はどうしても赤ん坊を自らの手で育てたいらしく、脅しにも屈しないマヤも一緒に自身の城へ連れ去ってしまう!
結婚式当日、スージーはウエディングドレス姿で逃げ出し、のぼった木から下りられずに低体温症になりかけていた。村の有力者の花嫁にならなければ、父の借金は帳消しにならない。でも暴力をふるわれて、結婚は無理だと気づいたのだ。彼女はスペイン人男性に救われ、彼の隠れ家で介抱された。男性は父の借金まで清算してくれ、スージーは驚く。なんと、彼はスペインでも屈指の富豪一族の長だったのだ!その富豪に婚約者になってほしいと頼まれ、彼女はさらに驚いた。彼も私をお金で買うつもりなの?元婚約者のように?
夜勤の日、看護師のジョージーナが交通事故に遭った子どもたちを手当てしていたところへ、背の高い見知らぬ男性が現れた。父親だろうと思って接していたが、じつはオランダの高名な医師で、子どもたちの後見人のユリウスだということがわかる。勤務を終えて眠りに就く前、彼女はユリウスのことを思い出した。すてきな人にぴったりの名前ね。口元もとてもやさしげだった…。その後も、気づくと彼のことを考えてしまうジョージーナだったが、ただの看護師が名医に恋するなんてと、慌てて想いを打ち消した。ところが後日、彼女は憧れのユリウスから思わぬ申し出を受ける。「住み込みの看護を頼みたいので、君を借りることはできないか?」
ニューヨークのホテルで働くデイジーは、外遊中のサリク王が泊まる部屋に呼ばれ、ひと目で惹かれてベッドをともにした。その間だけは、元夫のせいで負った莫大な借金も忘れていられた。数週間後、ニューヨークへ戻ってきたサリク王から連絡があり、デイジーは王国の大使館へ呼び出される。私を連れて帰りたいですって…ただし愛人として?なぜなら彼は、国の有力者の娘との結婚を考えているから。まともな家もない私が、王の花嫁にふさわしいわけがない。でもそれなら、私のおなかに宿るこの子はどうなるの?
病院での夜勤のあと、ピクシーは兄の話を聞いて耳を疑った。面倒を見るのがいやで、私の子を捨ててきたですって?いいえ、兄のめあては子供の父親ギリシア富豪トールのお金だ。1年半前、ピクシーはトールに純潔を捧げて身ごもったが、妊娠を告げると、“君を知らない”と彼に追い払われたのだった。急いで会いに行った彼は、今もハンサムで堂々としていて、ピクシーは安っぽい自分の格好を恥ずかしく思った。でも昔と同じ屈辱を味わってでも、トールには真実を伝えよう。どうか母親失格だといって、彼があの子を奪いませんように…。
スカーレットが秘書として仕えていた億万長者が亡くなった。その遺言書が開示される日、彼女は絶体絶命の状態だった。今日は遺族の一人として、スペイン富豪ハヴィエロも現れる。かつて私は自分の想いを抑えきれず、彼に純潔を捧げた。でもハヴィエロは私を、亡き父親の愛人だと疑っていた。だから別の女性と婚約したのだ。私になんの感情もなかったから。そんな人に言えるの?おなかの子はあなたの子だと。いいえ、言うのよ。スカーレットは化粧室の個室で涙をこらえた。たった今、破水したからだ。もうすぐ赤ちゃんが生まれるー。
3年間片想いしてきた男性が、花嫁となった妹にキスをした。大好きなクリスマスなのに、ホリーはみじめでたまらなかった。両親の死後、私は夢をあきらめ、妹を必死に育ててきた。男性とつき合った経験もなく、子供を持つ夢もかなっていない。このまま私の人生は、他人に尽くして終わってしまうの…。ギリシア富豪スタヴロスには時間がなかった。富も名声も手に入れた。だが今、欲しいのは血を分けた我が子だ。不治の病に冒された僕に残された時間は、あと数カ月。無垢なホリーなら、子供の母親としてうってつけじゃないか?
「僕には君が必要だ」新しいCEOのアレッサンドロの口調はそっけなかったが、言われたミアの胸は愚かにもどきどきした。そして同伴したパーティで彼の魅力の虜になり、純潔を捧げてしまった。1年後、ミアの自宅を突然、激怒したアレッサンドロが訪ねてくる。関係を持った次の日、彼はミアを外国の会社に追い払っていた。なぜ妊娠を知らせなかったと問いつめられ、彼女は呆然とした。私はあなたのためを思って身を引いた。なのに、なぜ責められるの?だが出産と育児で疲れきっていたミアは、謝る以外なにもできなかった。弱りはてた彼女に、アレッサンドロは容赦なかった。「娘が欲しい」その言葉に、ミアの体と魂は凍りついた。
アビーは有名な大富豪ジェイクの邸宅で、家政婦をしている。学歴もなんの資格もない私に、彼は仕事をくれた。雇い主がぶっきらぼうでも、アビーは熱心に働いて感謝を示した。ある日、ジェイクに一緒に外出しようと誘われてから、二人の距離はみるみる近くなり、アビーは彼に身を任せてしまう。ただし、ジェイクは「僕に恋はするな」と何度も警告した。そのたび、アビーはほろ苦い気持ちで「大丈夫」と繰り返した。だがピルをのみ忘れたと気づいたとき、彼女はパニックに陥った。彼の子供は欲しい。問題は私の体では赤ん坊が育たないこと…。
家政婦のタラは、億万長者ルーカスの屋敷で6年間働いてきたが、立場をわきまえろと言われて衝撃を受け、辞めたいと申し出た。うぶで冴えない私は、彼にとって価値のない人間だったのだ。ところが、ルーカスは彼女を辞めさせまいとしてなのか、恋人に向けるような熱いまなざしを急に注ぐようになった。その魅力に負けて、嵐の夜、タラは彼にバージンを捧げてしまう。それでも元主人への恋心は封じ、屋敷を去る…つもりでいた。頻繁に吐き気に襲われ、ルーカスの子を授かったと気づくまでは。だが妊娠を伝えようとしたとき、彼に別の女性がいるのを知る。