ジャンル : 外国の小説
隼のような鋭い瞳の伯爵が 美しさの陰に秘めた、傲慢な魂ーー 骨董店の売り子をしているフェイは、まだ恋をしたことがない。 休暇で旅に出たある日、乗っていたバスが立ち往生し、 なにげなく外へ出た彼女は森のなかに立つ美しい古城に魅了された。 そこへ突然、金色の瞳をした容姿端麗な男性が木陰から現れ、 フェイは驚いた弾みで足首を捻挫してしまう。 彼こそ、城主のデ・リベロ・ファルカン伯爵、ヴィンセント。 伯爵は痛みで歩けない彼女をなんなく抱え上げ、そのまま城へ向かった。 人に命令して従わせるタイプの男性にこんなに近づくのは初めて……。 ときめきと不安が入りまじるフェイの心に、伯爵の甘い問いが忍びこむ。 「さて、とらわれの姫の名前を教えてくれないか?」 今やロマンス小説界の女王となったリン・グレアムも尊敬する作家として挙げる、名匠ヴァイオレット・ウィンズピア。美しい情景と深遠な心情の境を彷徨い描き出される世界観をご堪能ください!
これはわたしの犬《むすめ》。 もし何かしたら、殺してやる。 この世から忘れ去られた海辺の寒村。子どもをあきらめたひとりの女が、もらい受けた一匹の雌犬を娘の代わりに溺愛することから、奇妙で濃密な愛憎劇《トロピカル・ゴシック》が幕を開ける…… 人間と自然の愛と暴力を無駄のない文体で容赦なく描き切り、世界15か国以上で翻訳され物議をかもしたスペイン語圏屈指の実力派作家による問題作が、ついに邦訳! 【古川日出男さん推薦!】 全篇に乾いた〈距離〉が満ちる。 人が愛に渇いて、世界中が愛の雨を枯渇させて、乾いて。 物語はまさに〈断崖〉の上に立つ。 【スペイン語圏の錚々たる作家たちも絶賛!】 『雌犬』は、真の暴力を描いた小説だ。作者キンタナは、私たちが知らないうちに負っていた傷口を暴き、その美しさを示して、それからそこに一握りの塩を擦り込んでくる。 ーーユリ・エレーラ この本は、あなたを変える。残忍であると同時に美しいコロンビア沿岸の荒々しい風景のなかで、母性、残酷さ、自然の揺るぎなさに注ぐまなざしがここにある。結末は忘れられない。 ーーマリアーナ・エンリケス この飾り気のない小説の魔力は、一見何かまったく別のことを物語りながら、多くの重要なことについて語ることにある。それは暴力であり、孤独であり、強靱さであり、残酷さだ。キンタナは、冷静で、無駄のない、力強い文体により、読者を驚嘆せしめるのだ。 ーーフアン・ガブリエル・バスケス ☆2018年コロンビア・ビブリオテカ小説賞受賞 ☆2019年英国PEN翻訳賞受賞 ☆2020年全米図書賞翻訳部門最終候補 ☆RT Features制作による映画化決定! Pliar Quintana, La perra(2017)
〈メグレ警視〉シリーズの作家が、人間であることの病いをどこまでも灰色に、“イヤミス”以上にほろ苦く描くーーシムノン初期の、「純文学」志向の〈硬い小説〉の傑作2篇がついに本邦初訳で登場! シムノン研究家の顔をもつ小説家・瀬名秀明による、決定版シムノン「解説」を収録。
《私は、二百二十七名の一員として、太陽系の外を目指し、地球を発った。計画した目的を果たし、旅が始まって十年目の今、我々はこれから帰還の途に就く》32世紀。高度な科学技術的発展を成し遂げ、内太陽系をも生活圏とした人類は、その能力と野心を一層満たすために、ついに史上初の太陽系外有人探査計画に着手、地球に最も近い恒星であるケンタウルス座α星へ向かう決定を下した。そんな時代に、グリーンランドの小都市で医師の家庭に生まれた少年は、成長期の体験から宇宙航海士になることを決意、この有人探査計画を聞きつけると、遠征隊の審査試験に合格するために研鑽を重ね、晴れて巨大探査船ゲア号に搭乗する選りすぐりの遠征隊員の一員となる。そして迎えた出発の日、宇宙空間をゆっくりと動き出したゲア号は、次第に速度を増し、遥かなる未知の空間へと踏み出していった。暗黒の真空を突き進む旅路の果てにはいったい何が待ち受けているのであろうか?--レムが晩年まで、ポーランド国内での再版と外国語への新たな翻訳を拒み続けた幻の長篇がついに邦訳なる。映画『イカリエーXB1』原作。 序章 家 青春 マラソン 地球との別れ ゲア号 真空の庭 空間からのお客 アメタ操縦士 トリオン 黄金の間歇泉 ベートーヴェン第九交響曲 宇宙航海士評議会 舞踏会 星から来たアンナ ガニメデから来たピォトル 反乱 共産主義者たち グーバル、私たちの一員 宇宙航海士の像 新時代の始まり ケンタウルスの太陽 ユナイテッド・ステイツ・インターステラー・フォース 赤色矮星 赤色矮星の惑星 グーバルの仲間 流れ星たち 地球の花々 マゼラン雲 遥かなる旅(イェジイ・ヤジェンプスキ) 訳者あとがき(後藤正子) 解説 ユートピアの夢の幻惑と過誤(沼野充義)
「かつてドイツ文学の分野において生み出された翻訳の成果として、森鷗外の訳業に次ぐ名訳」と讃えられた、石川道雄訳ホフマンをはじめて集大成。 『くるみ割り人形』『砂鬼』『ブランビラ姫』『廃屋』ほか、幻想文学の巨匠E・T・Aホフマンの主要名作を上下2巻に収める。アルフレート・クービン、フーゴー・シュタイナー=プラーグ、谷中安規ほかの挿絵約100点も収録した豪華函入愛蔵版。 セラピオン倶楽部(抄) 宙に浮く皿 顧問官クレスペル 吸血鬼 胡桃割人形と鼠の王様 小夜物語 砂鬼 イニヤッツ・デンナー G市の羅馬教会 聖歌 廃屋 家督相続異聞 祈誓 石に刻める心臓 ブラムビラ姫 ★ ホフマンの生活と作品(石川道雄) アマデゥス・ホフマン(石川道雄) 石川道雄小伝(長山靖生)
魂の作家による19の短編。 ロングセラー『掃除婦のための手引き書』のルシア・ベルリン、待望の新邦訳作品集。 『掃除婦のための手引き書』の底本である短編集 A Manual for Cleaning Women より、同書に収録しきれなかった19編を収録、今回も傑作ぞろいの作品集です。 〈収録作品〉 虎に噛まれて/エル・ティム/視点/緊急救命室ノート、一九七七年/失われた時/すべての月、すべての年/メリーナ/ 友人/野良犬/哀しみ/ブルーボネット/コンチへの手紙/泣くなんて馬鹿/情事/笑ってみせてよ/カルメン/ ミヒート/502/B・Fとわたし
19世紀の偉大なる名探偵シャーロック・ホームズがもし、ビクトリア朝時代の英国人ではなく、清末の時代に生きた中国人だったとしたら……。 そして、彼が奇妙な事件を次々に解決したのが大英帝国の首都ロンドンではなく、東の果ての植民地香港だったら……。 ホームズとワトソンを彼らとまったく同じ時代に生きた中国人、福邇(フー・アル)と華笙(ホア・ション)とし、物語の舞台を香港にした極上のパスティーシュ作品。 正典ホームズ・シリーズからの換骨奪胎ぶりが絶妙だ。 1880年代の香港の様子が生き生きと描かれ、ミステリーであると同時に、歴史小説としても読み応え十分。
1980年代、不況下の英国グラスゴー。"男らしさ"に馴染めない少年シャギーは、夫に捨てられ酒に溺れていく美しき母、アグネスを救おうと必死にもがく。誰も頼りにならないシャギーには、母の存在が全てなのだから。居場所のない親子の愛を痛切に描く自伝的巨篇。
アメリカ南部の高級住宅街に住むパトリシア。彼女の忙しい毎日の息抜きは、主婦仲間との連続殺人ノンフィクションの読書会だ。だがある晩、近所の嫌味な老婦人が血まみれでアライグマの死骸をむさぼっているのに遭遇しーー不安と興奮に満ちた傑作吸血鬼ホラー
2021年2月のAmazonベストブックの一冊 〈ニューヨーク・タイムズ〉ベストセラー 35か国語に翻訳予定 ナチス占領下のパリ。 苦しくても、わたしたちには愛する本があった。 戦時下のパリを生きた図書館員たちの 勇気と友情を描く感動作! 1939年パリ。オディールはアメリカ図書館の司書に採用された。文学を愛する彼女は熱心に仕事に取り組むが、ついにドイツと開戦。図書館は戦地の兵士に本を送るプロジェクトを始める。だがドイツ軍がパリ市内に入り、ユダヤ人の利用者に危機が訪れる。利用者のために図書館員が考え出した方策とはーー。戦下のパリと1980年代のアメリカを舞台に、オディールの波瀾万丈の人生と、ナチス占領下の図書館員たちの勇気を描く感動作!
なんたるでたらめ! 『兵士シュヴェイクの冒険』で知られ、カフカ、チャペックと並ぶチェコの人気作家の実体験に基づく(!?)面白すぎる短編27編。ヨゼフ・ラダの挿絵入り。
抗えぬ運命に絶望する彼に訪れた、唯一愛した女性との再会。次第に惹かれあう2人の時間が、30年の時を経て動きだす。彼女と音楽への閉じ込めてきた愛を取り戻す、純粋な恋物語。
▼希望はある、愛と大地と人びとのなかに 全体主義国家によって分割統治された近未来世界を描く、 世界的ベストセラー『一九八四年』。 ビッグ・ブラザーが支配する徹底した監視・管理社会で、 独り闘争をしかける、 我らが主人公、ウィンストン・スミス。 「ポスト真実」の時代を先取りしたディストピアに、 希望はあるのか。
デルフィーンは300万ドルの負債を抱え、窮地に立たされていた。そこへサンカリアーノの国王ルッカから直々に仕事が舞いこむ。王国の催事に協力すれば、報酬は300万ドル。ただし、彼の恋人として振る舞うことが絶対条件だという。じつはルッカとデルフィーンは1年半前まで恋人同士だった。だが、王妃どころか愛人にさえふさわしくないと誹謗され、追いつめられたデルフィーンは、黙って姿を消したのだった。しかも直後に妊娠に気づくも流産し、深く傷ついていた。彼は私を恨んでいるの?涙を隠し、彼女は要求を受け入れた。
兄の突然の死に打ちのめされていたアニーのもとに、ある夜、ずっと憧れていた兄の親友ディミトリオスが現れた。彼のギリシア彫刻のように端整な顔に浮かぶ、深い憂い。二人は悲しみをぶつけ合うようにしてベッドを共にする。だが翌朝、彼は去ったーあれは単なる情事だと念を押して。7年後、アニーは困窮し、クリスマスを前に頭を悩ませていた。せめて愛しい息子にだけはプレゼントを買ってやりたい…。そこへ再び、今や億万長者となったディミトリオスが姿を現す。「ぼくの息子に会わせろ。今すぐに!」なぜわかったの?いぶかるアニーに、彼は結婚を迫る。