出版社 : ハーパーコリンズ・ジャパン
亡き伯爵の遺言状が、今まさに読み上げられようとしている。後継者のジャックは、12年前に勘当されて行方知れず。莫大な遺産は、いったいだれが受け継ぐのか?ざわめく人々を、伯爵の養女キャスは部屋の片隅でそっと眺めていた。“スクラップ”-厄介者と親類に呼ばれる彼女は、今日で屋敷を追われる運命なのだ。そのとき、ひとりの男が現れて、全員が息をのんだ。ジャック…放蕩息子は生きていた。遺産も爵位も彼のものとなる。ところが、驚きはそれだけでは終わらなかったー新伯爵はいきなり、キャスに結婚を申し込んだのだ!
ルイーズは、突然会社に現れたジャコモを見て驚いた。別居中の夫がなぜここに?離婚の手続きをする気になったとか?イタリア人富豪のジャコモは事故で1年分の記憶を失ってしまい、その時期に自分が結婚していたと知って、妻に会いに来たという。記憶を取り戻す手助けを頼まれ、ルイーズは迷った。二人はたしかに誰よりも惹かれ合い、夫婦の誓いを立てた。でも結婚後、なぜか急に冷たくなった夫を思い出すのは今でもつらい。ずたずたにされた心を守りたくて、彼女は条件を出した。「それなら妻としてでなく、家政婦としてでお願い」と。
ああ、まさかそんな!ターニャは息をのんだ。乱れた黒髪、鋭い光を放つ瞳、無精髭の生えた精悍な顔。なぜレオンがここに?5年前の結婚直後、父親の訃報に接し、ギリシアへ帰国した夫は、それきり音信不通になっていた。「やっと会えたね。きみを連れ戻しに来た」夫の美貌は冷ややかでひどく険しいのに、抱きしめられると、愚かにも恋心のなごりがターニャの体内で脈打った。やがてレオンは部屋の中にいる幼い女の子に目を留めた。自分と同じ、カールした黒髪のー。
18歳のミアは、両親が仕える屋敷の御曹司カルロスに恋をした。初めてキスを交わした夜、彼の母親に見つかり、“使用人の娘のくせに”と激怒され、親をくびにすると脅されて、彼女は逃げるように屋敷を飛びだした。あれから7年。こんな形で彼と再会することになるなんて。ミアの会社が取りしきる結婚披露宴に、カルロスが出席したのだ。「ミア!ミアなのか?」彼が驚きのまなざしで見つめている。全身が炎のように熱くなり、ミアの封印した恋が息を吹き返した。だがその直後、またしても彼の母親からひどい侮辱を受け、カルロスに婚約者がいることを聞かされて…。
ロンドンでの独り暮らしのために仕事が必要なテオドラは、建設会社の社長ジェイムズが秘書を探していると聞いて応募した。前任の秘書たちに色目を使われ辟易していたというので、髪を引っつめ極度に地味な姿で面接を受け、首尾よく採用になる。ジェイムズは噂どおり高慢なボスだが、抗いがたいほど魅力的。こんな外見のおかげで、彼が目もくれずにすんで助かったわ。だが、ある朝、テオドラはやむを得ぬ事情で出社が大幅に遅れ、すごい剣幕で住まいを訪ねてきたボスに素顔を見られてしまう。辞職を伝えるテオドラに、なんと彼は出張旅行への同行を命じ…。
コルト・レインツリーが代理母を求めているー噂を聞いたメラニーは、勇気を振り絞って彼に電話をし、面会をとりつけた。これでやっと、恩返しができる…。昔、“がり勉ガーティ”と呼ばれ、仲間外れにされていた私に、ただ一人やさしくしてくれた、初恋の男性コルト。住む場所は離れても、恋心が消えることはなかった。数年前、事故に遭った私は手術で顔が変わり、名前も変えた。会っても、コルトは“がり勉ガーティ”とはわからないはず。それどころか私の存在さえ忘れていても、構わない。妻と娘を亡くし絶望に沈む彼に、子供を授けてあげたい…。
ララはある吹雪の夜、木の下で昏倒している男性を見つけ、家に連れ帰って手厚く介抱した。彼は完全に記憶を失っており、自分の名前すら思いだせなかったが、それでも二人は惹かれ合い、甘く濃密な6週間を過ごしたあと、聖夜に結婚した。だがその直後、突然の見知らぬ訪問者が驚くべき事実を告げる。夫の名はガエターノ。行方不明のモスヴァキア新国王だというのだ。貧しい清掃人の私が王様の花嫁ですって?とんだ笑い物よ。ララは逃げるように姿を消したー妊娠しているとも知らずに。2年後。幼い息子と暮らすララの前に、ガエターノが現れて…。
パンドラは世界的企業のCEO代理ザンダーのアシスタント。ギリシア彫刻のような美貌と肉体を持つ彼は、女性なら誰もが夢中になるような魅惑の上司だ。でもパンドラにはザンダーに絶対言えない秘密があった。ここにいるのは彼の父親に母の弱みを握られたから。そして彼をスパイするため屋敷に忍びこんだある夜、ザンダーに見つかってしまった。ああ、どうしよう?だが彼の口からは予想外の言葉が。「きみはぼくと結婚しなければならない」。
「君がどんなに魅力的でも、僕は君と結婚するべきではなかった」夫のチェーザレの口から放たれた言葉に、アーヴァは凍りついた。イタリアの湖畔に大邸宅を構える億万長者との出会いは電撃的で、二人とも瞬時に燃えあがり、気づけば純潔を捧げていた。そのあとの妊娠と結婚は、家族との縁が薄いアーヴァにとって、やっと安らぎの地を見つけたような奇跡だった。ところが娘が生まれるやいなやチェーザレは仕事に没頭し、まったく家庭を顧みなくなる。理由を聞いても無視されるだけ。もう愛は終わったの?独りの寝室で、アーヴァは涙に暮れ…。
セイディは独りぼっち。唯一の肉親だった祖母が亡くなり、残された借金を返すために思い出の家も売りに出さなければならない。これからは住み慣れた村を出て、仕事も見つけなくては。幸い、すぐに買い手が現れ、住み込みの家政婦も探しているらしく、セイディはここに住み続けられるならと、その求人に飛びついた。雇主となるオリヴァーは中年の物書きだと聞いていたが、いざ会った彼は背が高くて、女性なら誰もが憧れるような顔立ちだった。思わず心を奪われたセイディは、未来は薔薇色などと考えていたが、オリヴァーの言葉に、彼女の浮ついた心は地面へと叩き落とされた。「僕は思慮深い田舎の女性を雇いたかったんだ。君に家政婦は無理だ」
ギリシア人CEOアリストテレスは言わずと知れたプレイボーイ。仕事の実力も男としての魅力も超一流のゴージャスな大富豪だ。しかし女性との仲は長続きせず、別れるときは冷たく切り捨てるー高額の贈り物をして、手切れにするのだ。しかも、その手配さえアシスタントのルーシーの仕事だった。前任の2人はボスに気のあるそぶりを見せたばかりに首になったけれど、私は大丈夫。ビジネスライクに接してみせる。ところがある日、ルーシーが雨に濡れて着替えているところを、アリストテレスが偶然見てしまう。その瞬間、彼は目の色を変えた。地味な服装の下に、彼女がこんな魅力を隠していたとは…!
ヴィクトリアにはどうしても会いたい少女がいた。16歳で妊娠し、養子に出さざるをえなかった実の娘だ。出産後、養子斡旋業者に託す前に一度だけ腕に抱いたのが最後だった。その切なく悲しかった瞬間とともにいつも思い出されるのは、娘の父親で高校時代の恋人だったライアンのこと。出産の日が来たら、私たちの子を一緒に迎え、一緒に送り出そうと約束してあったのに、彼は電話にも出ず、ついぞ姿を現さなかった…。今、ヴィクトリアは18歳になった娘とどうにか再会を果たし、胸がはち切れそうなほどの感謝と感激に包まれていた。しかし、娘が実の父親にも会いたいと言いだしー
父危篤の知らせを受け、ケイトリンは再び故郷の土を踏んだ。父の再婚で義兄となったリノに片想いをしていた十代のころ、彼女はリノの弟の事故死の責めを負わされ、無実ながら故郷を去った。皆の冷遇には耐えられても、リノの憎しみの視線は胸にこたえた。5年ぶりに再会した今なお、その瞳からは敵意が消えていない。とうとう父が亡くなって通夜と告別式が営まれたが、周囲の人々もやはりケイトリンに冷たくよそよそしい態度をとった。ここに私の居場所はないのね…。最後にもう一度、リノに伝えたくてかつての事故の真実を話そうとしたが、彼は聞く耳を持たなかった。だがその後、火事に巻き込まれ、生死の境を彷徨う彼女を見たリノはー。
「息子が欲しい。だが、妻が欲しいわけじゃない」「手持ちの相手の中から臨時の妻をみつくろったらどうだ?」エレクサはそんな男同士の会話を漏れ聞いて憤然とした。繁殖用の雌馬を選ぶみたい!でも、ちょっと待って…。最近、結婚しろとうるさい母に困っていたエレクサは、息子が欲しいと言った男性ノアと、無謀な契約を交わすー別居婚をし、妊娠の可能性のあるときだけベッドを共にするのだ。そして子を産んだら、離婚。なのに彼女の胸は高鳴る一方で…。-『親密な契約』。友人に貸した車が高級車にぶつかり、弁償を余儀なくされたエリス。けれども家業は倒産し、薄給の身ではとても支払えず、猶予を請うために高級車の持ち主に会いに行った。大企業の次期社長ソールは女性には不自由しないとの噂どおり、黒髪とグレイの瞳が魅力的で、思わず息をのんだ。借金の埋め合わせに、社長夫妻のパーティに彼の恋人役で同行したエリスは、ソールと社長の若妻の睦まじい様子を目撃する。まさか!彼は私を、不倫のカムフラージュとして利用したの?-『罪なジェラシー』。
ジャニーンは弱冠24歳にして売れっ子のミステリー作家。ビーチハウスに滞在して執筆に勤しんでいるが、隣人の、かつてビジネス界の風雲児として名を馳せ、巨万の富を築いたカンテン・ロークなる男性が彼女の心を騒がせる。彼は初対面から傲慢な態度で、彼女を変わり者と決めつけ、「けっこう。君の不潔な話は聞きたくない」とまで言って敬遠した。だがカンテンは気づいていなかったー彼が愛読する作家ダイアン・ウッディこそ、ジャニーンであることに。-『なんてミステリアス!』。ルイーズは同僚のドクター・コルトレーンに密かに想いを寄せていた。でも彼はといえば、一方的にしゃべるが、彼女の話をさえぎるかのどちらかで、いつだって刺々しい態度だ。その原因がルイーズの父にあることを知り、彼女がいたたまれず病院を移ることにすると、なぜかドクター・コルトレーンがプロポーズしてきて…。-『婚約のルール』。
父が急逝し、ルーシーは長年住み慣れた領主館を離れようとしていた。館を維持する財力はなく、継母と弟妹の面倒も見なければならない。領主館は、アメリカ人のいとこ、ソールが相続することになっている。じつはルーシーは12年前に彼に会ったことがあったが、当時、子供ゆえの幼さで意地悪をしてしまい、それをずっと後悔してきた。再会したソールは今や、いくつもの企業を切り回す大富豪となっていた。ルーシーは美しい黒髪の彼に魅了され、大いに心を揺さぶられた。しかし、二人のあいだのしこりは消えてはいなかったーソールは彼女に領主館から一秒も早く出ていけと言わんばかりに、軽蔑のまなざしと辛辣な言葉以外、微笑み一つ向けてはくれなくて…。
アンナ・リーゼははっきり言って、幸せではなかった。初めは母、続いて父も亡くし、継母と継妹にうとまれながらの日々。話し相手になってくれるのは、仲良しのがちょうだけ。そこへ、20年近く離れ離れだった幼なじみ、ピーターが帰ってきた。片想いの相手は、ハンサムで魅力的なクリパートン子爵へと成長していた。アンナ・リーゼはうれしかったけれど、自分の服を見て涙をこらえた。こんなみすぼらしい格好とあかぎれの手で、ピーターには会えない。子爵はクリスマスに舞踏会を開き、そこで花嫁選びをするのだという。継母と継妹は興奮するが、アンナ・リーゼは愛する人の選択が悲しかった。私はピーターにとって永遠に幼なじみ。彼の花嫁にはなれないのね…。
貧しくも心やさしい娘アンジェラのもとへある日、隣の伯爵家の跡継ぎダヴェントリ卿が訪ねてきた。かつて英国一の美男子と謳われたこともある彼は、戦場で醜い傷を負ってからというもの、仮面で顔を覆い隠していた。そうやって隠遁生活を送る彼を、村人は“悪魔卿”と呼んで恐れた。そのダヴェントリ卿が、私にいったいなんの用かしら?アンジェラが恐る恐る尋ねると、彼は重い口を開いた。「妻になってくれとは言わない。わたしの婚約者になってほしい」彼の余命幾ばくもない祖父を喜ばせるための、偽りの婚約。アンジェラは承諾したー心を閉ざした彼に恋してしまうとも知らず。
二十歳のタリーはパーティで出会った美しきギリシア人男性に惹かれた。海運王を父に持つ将来有望な投資家のプレイボーイ、サンダー。タリーはといえば、古風な乳母に育てられ、恋愛経験は皆無だった。このパーティには妹のつき添いとしてやってきたけれど、妹に使用人扱いされているような私を、サンダーはどう思うかしら?彼の目はしかし、タリーを明らかに女性として賞賛しているようだ。本当の相手が見つかるまでは独りでいいと考えていたけれど、胸が痛いほどのこの情熱を、今こそ解き放ってもいいのでは?タリーは誘惑されるまま、サンダーに純潔を捧げたーまさにその瞬間、彼がはたと気づき、吐き捨てた。「初めてなのか?何を企んでいる!」
生後間もなく親に捨てられ、里親宅を転々として育ったヘイリー。フラワーデザイナーとなり、結婚式の打ち合わせをしていたある日、同席していた顧客の友人からディナーに誘われた。彼こそは、ヨーロッパのアドリア王国皇太子ジオだった。今まで出会った中で最も美しい男性との夢のようなひととき。ヘイリーは彼の魅力にあらがえず、一夜を共にしてしまった。2ヵ月後、彼女はジオに会いに行くー今度は妊娠を伝えるために。だが、独りで産んで育てると言う彼女に、ジオは結婚を申しこんだ。この天涯孤独の私がお后になるですって?まさか!うれしいはずのプロポーズなのに、とまどいしか感じられず…。