出版社 : 鳥影社
神という恐るべき謎に挑み続けた、北欧のノーベル賞作家ラーゲルクヴィスト。その孤高の作品群がここに全貌を現わし、巡礼の果てに焼き尽くされた人間の罪が、聖なる地の澄明な風景としてよみがえる。20世紀の最重要作家を、「刑史」「こびと」の名訳で紹介した山口琢磨が、その渾身の力で遺した待望の翻訳が刊行されることは、ひとつの文学的事件である。(文芸評論家 富岡幸一郎) 自分のことを「信仰なき信者」とか「信仰を持った無神論者」などと呼んでいたわけですから、思想遍歴の結論は出せなかったのでしょう。(「あとがき」より) アハスヴェルスの死 海上の巡礼 聖 地 マリアムネ ラーゲルクヴィスト著作目録〈山口琢磨編〉 あとがき〈中川美智子〉
昭和・平成・令和を生き抜いた須和子。 愛する者を喪いながらも、命の記憶を抱いて生きる女性の人生譚。 時代と土地と家族の記憶をつなぐ、静謐にして壮大な日本近代の叙事詩。 「大正十一年生まれ」の人たちが二十歳になるのは昭和十七年。男子は「十七年徴兵」の現役兵となり、最前線へ。ここ奥熊野の貧しい山村でも多くの若者が戦死し、多くの女たちが戦争未亡人となり、不治の病に侵され命を奪われていった。 過酷な時代を生きた人々の生々しい証言の記録が、反戦への強い抗議となって読者の心に楔を打ち込む。 〈松嶋節「跋」より〉 表題作ほか、中部ペン文学賞受賞「悪名の女」など4作品を収録。著者の集大成となる作品集。 庵納橋 大正十一年生まれ 三枚の絵 悪名の女 跋 松嶋節 あとがき
満洲から現代へ ──祖父が遺した“開拓誌”に封印された記憶を揺り起こす。世代を超えて問われる、歴史と責任。二つの時間が交錯し、封印された記憶がいま明かされる。 満蒙開拓団の歴史とその帰還者たちの記憶、そしてコロナ禍に直面した旅行業界の苦悩。 現代の経済合理主義との対峙を織り交ぜながら、個人の苦悩と再生を描く衝撃の社会派フィクション! 戦争の記憶はまだ終わっていない──。
キリシタンの受難から「神」の義を問い、圧倒的な筆力で日本宗教史の根源に迫る。比類なき歴史文学がここに誕生した。(文芸評論家・富岡幸一郎) 上巻・下巻・別冊補完版の箱入り、全三巻。 1360頁に及ぶ大作が完成。
二人の作家の運命的な邂逅のドラマ それぞれの生い立ちから二人の出会いまでの自伝的な作品を 対置していて興味が尽きないが、それらから見えてくるのは、 二人の作家に共通した自然への深い畏敬の念、さらに人間の 営みへの慈愛に満ちた眼差しである。(文芸評論家・勝又 浩) 青木哲夫集 愛縛清浄 雉子の鉤 青木倫子集 終の暦 風のまわり道 往来記 付記 『風のまわり道ー青木哲夫・倫子作品集』に寄せて 勝又 浩
The Beginning of The Bee 「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」と「私の耳は貝殻 海の音が好きだ」 この違いと評価 前者にある全体にまぶされた古風な叙情 後者にある耳の形と貝殻とのぴったりとした一致 ある朝美しい耳の形を見せるために彼女はスキンヘッドになった(「海の評価」より) 序 詩 美しい川の畔に上がって 森君の夢 萌乃(昔と音の近似性について) 揺れる相模湾にあるバベル それは来て「カナ カナ カナ カナ」と鳴く ひび割れ文、地響きの音色 耳を切られたウサギの耳 とうとう見つけたよ 萌乃の足の付け根に沈む海の太陽をさ 跋 詩
石の街とよそ者相良(ソーラ)さんの四季折々の物語。 現実と非現実、あるいはリアリズム的要素と寓話的要素が混在して展開する堅固な格子街路のある街と、そこで暮らす人びとの点描。 カルヴィーノの『マルコヴァルドさんの四季』を念頭に書き継いだ十六篇は、 わたしたちのいま現在に通じてもいる!? あるいは未だ遠いところにある「街」への旅だったのかもしれない。 春 街とホウレン草 夏 街とサングラス 秋 街と一時間のオマケ 冬 街と広場 春 街と春の祭 夏 街とピッツァ屋 秋 街と白い人 冬 街と雪の日 春 街と空気 夏 街と破壊される街 秋 街ともうひとつの街 冬 街と教会 番外篇 春 町と石地蔵 番外篇 夏 町と磐いわくら座 番外篇 秋 町と石の銘板 番外篇 冬 町と石の化身 あとがき
収められた四作には、どの一編にもそれとなく作者自身の影が映っていて興味深いが、読み込むと、それらが繋がって自ずからもう一つの隠れた物語を形成している。それはあたかも美しいレース編みを見るようで、私は何度も感嘆させられた。思うに、これは純真な少女時代に紡いだ物語への夢を曲げることなく育ててきた作者の情熱の賜物であろう。(文芸評論家 勝又 浩) 花に誓う そよ風に乗って めぐり会い 高原のル・スタージュ
ついに完結 明代の驚異の書 真価を問う全訳 「同時代の小説に、これを越えるものはない」(魯迅) リアリズム小説の雄編か、堕落した性生活を描く淫猥の作か。 四百年の毀誉褒貶をあびつつ幻の名著であり続けた驚異の書。 徹底した訳文の検討によりその真価を問う新訳、ついに完結。
「ペイフォワード」とは恩送りのこと。 あなたが誰かから受けた「恩」を、これからあなたが出会う知らない誰かに渡していく。 日本人、日系人、貧しい白人青年。三者三様の人々がつなぐ友情と希望の物語。 たったひとつの優しさが、波紋のように世界へ広がっていく。 ニューヨークの小さな村から、未来へ贈る物語。 【主人公たち】 高校の頃からアメリカに憧れて留学した日本人、岡本アヤカが見たアメリカの過酷なリアルとは? キャンピング・カーで孤独に暮らすドイツ系白人、オーランド・シュナイダーが困難の先に見つけた答えとは? 大学で教えながら、学生たちにシェアハウスを貸す日系人、メリッサ・ナガノが選んだ未来とは? パレスチナ、ウクライナ、シリアと、世界の紛争地を駆けめぐるヒスパニック系の作家、ハビエル・ゲレロが残したものとは? 喪失を抱えた人々は、未来に何を願うのか? 戦争。貧困。銃犯罪。 それでも人を信じたいと願い、小説を書くことで、配信することで、世界を変えようとする人たちがいた。 混迷する時代と世界に、一筋の光を照らす物語の誕生です。 【著者の言葉】 この物語は、ニューヨーク州にあるニューパルツという、実在する村を舞台にした架空のお話です。平穏で小さなこの村から、アメリカ、日本、そして世界へと、スケールがぐんぐん広がっていく感覚が、この小説の見どころです。日本と世界の架け橋になれたらと願いながら、書かせていただきました。 【本文より】 「他人を批判することは簡単なんです。誰かの何かの悪いところを探して悪く言うのは、とても容易いし、優越感も得られるでしょう? でも、その逆は難しい。誰かの良いところを見つけるのは、とても難しいんです。でも、もしも私たちが、身近にいる人たちの良いところを見ようとしたり、遠くにいる、知らない人たちの良いところを探そうとしたら、世界はきっと少しずつ、良い方に変わっていくんじゃないかしら? 私、ふと、そんなことを思ったんですよ。平和への一歩は、私たちの小さな変化から始まるんじゃないかなって」 ─1─ 1 ニューパルツ 2 真夜中のキャンパスの白いフクロウ 3 配信とヴァージン・カクテル 4 孤独なヴァンライフ 5 マンハッタン・クラムチャウダー 6 ゆううつな大家のメリッサ 7 ポキプシーのクリスマス ─2─ 8 大寒波の夜に 9 ピース・スタディ・クラブ 10 ピース・マーチが始まる 11 イースターのウォーター・ストリート・マーケット ─3─ 12 花であふれるステージ 13 ペイフォワード 14 カプチーノのあるいつものカフェで
星の数と人間の感受性の数のどちらが多いのだろうか。 他者と共有できない感性の孤独感に悩める自伝的表題作を含む全3編を収録。 ・全方位風速の孤独 ・額縁の裏側 ・あの日の午後と同じ太陽 全方位風速の孤独 額縁の裏側 あの日の午後と同じ太陽
現代の鬱蒼とした森の闇に隠れ、彼らの復讐の炎は消えることなく燃えつづけている─ 復讐にまつわる五作品 著者渾身の短編作品集 しとやかな獣 袋小路の男 ピエロの行方 マジックミラー 闇からの報復者
業界内の時代精神と人間模様 1980年代、学習塾が定着。大手、中小入り乱れ、塾生の獲得競争を繰りひろげる首都圏の塾業界。女性講師を主人公に、業界内の様々な人間模様を内面深く描き昭和という時代を見つめるノスタルジックな小説。 序章 新たな道へ 第一章 ONO進学ゼミナールの女が語ったこと 第二章 援軍として小枝文哉が現れたこと 第三章 シンギーが魂の教育について語ったこと 第四章 グリーンシティで塾長が怒り狂ったこと 第五章 塾経営セミナーを偵察に行ったこと 第六章 西尾要一がジャパニーズ・ドリームについて語ったこと 第七章 ヨッシーがデモに参加したこと 第八章 夏の日にグリーンシティで北村律子と話したこと 第九章 害虫駆除のこと 第十章 ヴ・ナロードを目指した人たちのこと 第十一章 アウフヘーベンについて西田秀雄が語ったこと(エピローグ) あとがき 参考文献
われは砂、 サラサラとこぼれ落ちる この一粒よ、止まれ。 ここに秘められた ことばが洩れる……。 (小説家・村田喜代子) 1砂の本 駑馬 鋏 花野 漂砂 2虫の譜 悪虫 年縞 むじひ 3無言歌 闇浄土 ゆくえ 川向こう 「跳びなさい」─あとがきに代えて─ 初出一覧
身近な金融機関が破綻? 真の原因は何か? 債権譲渡の動きを丁寧にとらえ、千曲川の流れに沿ってバブル崩壊の真実に迫る。 プロローグ 第一章 発端(バブル崩壊の余波) 第二章 夏目補佐人の誕生 第三章 商工経営破綻の公表 第四章 そのまま新年を迎えて 第五章 いわゆる『改革派』とは 第六章 ハグロシタのクボ 第七章 経営責任の追及 第八章 雇用推進室設置 第九章 ふたりの旅 第十章 佐久へ 第十一章 龍の祭りの後 第十二章 商工の解散 エピローグ -『ちくま商工信用組合』の破綻ー あとがき
ハプスブルクを救った男の生涯 これは、ヨーロッパの17〜18世紀に名将として、その名を轟かしたオイゲン公子のキングダム物語 第一章 パリ脱走 第二章 初 陣 第三章 独 立 第四章 対トルコ戦争再開 第五章 スペイン継承戦争勃発 第六章 ドイツへ、そしてイタリアへ 第七章 フランドルへ、そしてフランスへ 第八章 ロンドンへ、そして敗戦と講和 第九章 またもやトルコと、穏やかな日々、最後の仕事 オイゲン公子関連略年表 参考及び引用文献 あとがき
鋭い社会批評とユーモアが織りなす、紀行小説の傑作。 18世紀のイギリス社会を活き活きと描き、人間の運命の「劇的な展開」をテーマにした書簡体の作品。 画期的新訳ついに完成! 【解説】フランク・フェルゼンシュタイン Frank Felsenstein(ボール州立大学名誉教授) 登場人物関係図 旅程図 序文 トバイアス・スモレットと『ハンフリー・クリンカー』短めのオマージュ(フランク・フェルゼンシュタイン) あらすじ 第一巻 第二巻 第三巻 あとがき 参考文献
日本を襲う、巨大災害…… 大西洋のカナリア諸島で海底火山が噴火した。東アジア各地でも地殻変動が連鎖する。 地球規模の不気味な鳴動は、ついに日本を恐怖の渦へと陥れていく…… 最新の地球科学と防災政策の知見を基に描くセミフィクション小説。 迫りくる、破壊の日 カナリア諸島 東アジア 関東地方 先ぶれ はじまり 発 災
……お前の苦しみを苦しみ、お前の悲しみを悲しみ、共に心交じりあってこそ浄められると信じている。…… 老いてなお創作に励む夫と、心病んで幼女のようになった妻の日常を描く表題作他、生への祈りと共感に満ちた短篇集。 ラビリンス 竹酔記 朱き繭より 銀の夜 秘 婚 繖物語 余 滴
谷戸、切通し、やぐら、古刹と地蔵。 喧噪の都市の奥深く透視される悠久の中世の時間。 魔術たる作家の筆が、もののふの声を呼びおこす。 観光地カマクラの白日の下に、屍の蔵たる鎌倉の、幽玄なる景色がここに現われる。 (富岡幸一郎) 扇ガ谷、十王岩、袖塚、唐糸、飢渇畠、太刀洗、腹切やぐら、化粧坂……鎌倉の地に現存する「八景」は古の戦いと悲哀の歴史を今日まで伝えている。 付録 文学における土地の力 対談 藤沢 周×佐藤洋二郎 「季刊文科」連載作が待望の単行本化! 扇ガ谷 十王岩 袖 塚 唐 糸 飢渇畠 太刀洗 腹切やぐら 化粧坂 付録 文学における土地の力 対談 藤沢 周×佐藤洋二郎