2002年発売
次々と女たちを寵絡する男ー中里。札幌で知り合った女と「獣の体位」で逢瀬を楽しみ、秋田美人の「淫らな部分」を味わう。「神戸の処女」に手ほどきをしたかと思えば、大阪の女性の「色っぽさ」に酔いしれる。さらには、パリ・ジェンヌの絶妙な舌技にとろけそうになり、バルセローナのコールガールと熱烈な愛欲劇を演ずる…。中里の「女性遍歴」は、どこまで続くのか。
全面性の時代から一面性の時代へーこうした時代の変化を踏まえ、ゲーテは人間のあるべき姿を描こうとした。霊的な力をあらゆる人々に及ぼす精神的太陽とも言える聖女マカーリエに象徴されるように、本書の作品世界は汲み尽くしがたく、どこまでも晴れやかで美しい。
ランナーの道を断念して以来の全力疾走をした日、若い水道職人・達夫は、羽音とふしぎな声を聞く。奇妙な能力を持った蚊トンボ“白鬚”が頭に侵入してきたのだった。達夫はシラヒゲの力で、オヤジ狩りに遭っていたアパートの隣人・黒木を救う。黒木は、株取引で巨額の損失を暴力団に与え、血眼で行方を追われる身だった。彼らは、黒木の居場所を達夫に吐かせるため、恋人・真紀をターゲットにしたが、凶悪な気を放つ赤目の男の介入に、達夫は闇社会に真っ向から挑む道を選んだ。長編小説。
私と妻が暮す丘の家は、お盆になると、長男一家から預かったうさぎのミミリーと、近所の山田さんが届けてくれた鈴虫が集まり、賑やかになる。夏の終りには子供たちが妻の誕生日を祝い、そして、秋には孫の結婚式。大きなシャムパンの瓶が廻り、皆の笑顔がはじける-。移ろい行く家族の暖かな情景を日録風に綴る長編。
時は1875(明治8)年。稀代の早撃ちガンマンとハコダテから流れついた謎のサムライ、そして、したたかな小娘が追うのは、賞金つきのお尋ね者。荒くれカウボーイや酒場の女、ポーカーに興じる成金どもをかわしつつ、赤茶けた岩山を抜け、駅馬車にのり、町から町へ大西部をゆく!痛快なストーリーにスピーディな会話。巧くて、楽しくて、一気に読める。エンターテインメントの一級品。
インドの森の奥深く、僕の目の前の老婆は突然語り始めた。その声と言葉は、自らの不可能な死を語るカメラマン「ウィザード」のものだった。飛行船の闇の中、彼に死を与えるために来た美しい少女と、見えることしか信じない彼の戦いが始まる。彼の武器は鋭利な頭脳、巧妙な論理の罠。だが、彼の罠を次々に突き破る少女の論理と見えない精霊の力。大胆に読者に突きつけられる質問状、あなたは解けるか?
パリ警察が誇る名予審判事、シャルル・ベルトラン。悪魔的推理力を誇る彼に、ライン川流域の古城『双月城』で起きたある事件の捜査依頼が。不気味な伝説を持つこの城はカレンとマリア、双子の姉妹が城主をつとめていた。ベルトランが城を訪ねる直前、密室であった城内の『満月の部屋』で、首と両手首を切り取られた無惨な死体が発見された!死体はカレンかマリア、どちらかのもの…。ベルトランの好敵手、ベルリン警察のストロハイム男爵も登場、熾烈な推理合戦のなか、新たな惨劇が。
新興国市場として急成長を続けるアジア市場。90年代半ば、邦銀でアジアを担当していた真理戸潤は、ドイモイ政策で外国投資ブームに沸くベトナムの事務所開設を託されハノイに赴任した。一方、アジア市場で急成長を遂げ、勇名を轟かせる香港の新興証券会社があった。その名は「ペレグリン(隼)」。同社の債券部長アンドレ・リーは、アジアの王座への野心を胸に、インドネシアのスハルト・ファミリーに近づいて行く。賄賂が横行する共産主義体制下で、事務所開設に四苦八苦を続ける真理戸は、邂逅した日系商社マンから、ベトナムの巨大発電所建設のファイナンスを持ちかけられた。約6億ドルのビッグ・ディール落札を目指し、熾烈な闘いを繰り広げる各国の企業連合。真理戸と日系商社の前に、アジア・ビジネスの暗部を渡り歩く大手米銀のシンが立ちはだかった…。やがて迫り来るタイ・バーツ暴落と通貨危機。その時市場では何が起こったのか?そして三人の東洋人のディールの行方は。
未来へと駆けてゆく90年代の短篇群を収める。あのように揺るぎなくみえた韓国の家族の結びつきにさえ時代の息吹が急速に打ち寄せる。旧弊なる村人や役人と果敢にやりあうパワフルなキッチン・ドリンカーのバツイチかあちゃんに新時代の息吹を感じさせる「かあちゃんはシングルマザー」、家族に持てあまされ見放された「アンビシャスな悪ガキ」の警察署に託された日々を描いてしみじみとした哀歓の満ちる「警察署よ、さようなら」など、新しいステージに立って戸惑い、この現在に屈託する心を持ちながら今に臨む人々の素顔が浮かび上がる。収録の諸作品はいずれも現代を斬新な切り口から鮮烈な感覚で描き出す。
25年ぶりの親友との再会。TV出演した小夜子を見て連絡をとってきた女は、まるで別人のように変貌していた。うずまく疑念、そして…。表題作「会いたかった人」。他に男と女の妖しく美しい愛の行き着く果てを描く「倒錯の庭」、犬を飼い始めてからはじまる不運にみずからとりつかれていく男の物語「災厄の犬」を収録。静かな狂気を描くサイコ・サスペンス短編集。
角丸真理子は父の反対を押し切って、屋敷芳樹と結婚した。小野和人という恋人をふっての決断だった。しかし、新婚生活のスタートとともに地獄ははじまった。言葉の暴力ーそれも叱責や罵倒ではなく、やさしい皮肉。真理子の神経を柔らかく包み込むように、夫の言葉が鼓膜から脳髄へと侵入していく。精神の限界に到達した真理子は、ついに決断した。「やさしく殺して…」。
父の会社の倒産、母の病死を乗り越え、幼い頃からの夢だった「社長」になるため、渡邉美樹は不屈の闘志で資金を集め、弱冠24歳にして外食系ビジネスを起ち上げる。順調に軌道に乗ったかに見えたが・・・・・・。