ジャンル : 外国の小説
リボルバーは彼を狙って確かに発砲された。しかし、それは空包の筈だった……。夜間公演の余興を一転して惨劇に変えた恐るべき罠。誰が、何故、どのように仕組んだのか。夫婦揃って演奏会場を訪れていたロデリック・アレン主任警部が不可解な事件に挑む。シリーズ長編第十五作を初邦訳! 楽員に弔花を 訳者あとがき
第二次世界大戦下のヨーロッパで 敵国の書物を収集せよーー 実在の図書館司書に材をとり、 本を愛する者たちの闘いを描いた、 心揺さぶる傑作長編! ベストセラー作家の本領発揮 1942年、第二次世界大戦下。ニューヨーク公共図書館で働く司書のマリアは、大統領令に基づく任務を帯び、ポルトガルのリスボンに旅立つことになった。その任務とは、身分を偽り、戦略分析のため枢軸(すうじく)国の刊行物を収集すること。報道写真家の母をスペイン内乱で亡くしたマリアは、危険を冒してでも戦争を終わらせたいという強い想いを抱いていたのだ。 同時期、リスボン。書店を営む青年ティアゴは、書類偽造の天才である書店員ローザとともに、迫害から逃れようとするユダヤ人避難民を命懸けで援助していた。マリアは街で本や新聞を集めるうちにふたりと出会い、戦争を終わらせるためのさらなる任務に臨むことに── 戦時のヨーロッパで活躍した実在の図書館司書に材をとり、本を愛する者たちの闘いを描き上げた、心揺さぶる傑作長編!訳者あとがき=高山祥子
「地獄は天国の裏にある。」 祖国ルーマニアの圧政を逃れ、サーカス団を転々としながら放浪生活を送る、一家の末っ子であるわたし。ピエロの父さんに叩かれながら、曲芸師の母さんが演技中に転落死してしまうのではないかといつも心配している。そんな時に姉さんが話してくれるのが、「おかゆのなかで煮えている子ども」のメルヒェン。やがて優しいシュナイダーおじさんがやってきて、わたしと姉さんは山奥の施設へと連れて行かれるのだったがーー。 世界16カ国で翻訳、伝説の作家が唯一残した自伝的傑作が、ついに邦訳! ドイツ文学史上最も強烈な個性。--南ドイツ新聞 まさに綱渡り芸を、息をのんで下から見守っているかのよう。--ペーター・ビクセル ◎アグラヤ・ヴェテラニー(Aglaja Veteranyi) 1962年、ルーマニアの首都ブカレストでサーカス家庭に生まれる。67年に亡命し、77年にスイスのチューリヒに定住するまで、サーカス興行のために各地をめぐる生活を送る。定住後にドイツ語を学び、俳優として活躍するほか、実験的文学グループ「Die Wortpumpe」を共同で設立し、新聞や雑誌に多数の記事を寄稿。1998年にベルリン文学コロキウムの助成金を受ける。1999年に初小説『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』を出版し、シャミッソー賞奨励賞、ベルリン芸術賞奨励賞を受賞。2002年2月の早朝にチューリヒ湖で自死。 ◎松永美穂(まつなが・みほ) ドイツ文学者・翻訳家。早稲田大学文学学術院教授。シュリンク『朗読者』で毎日出版文化賞特別賞受賞。他の訳書にシュピリ『アルプスの少女ハイジ』、ヘッセ『車輪の下で』、バッハマン『三十歳』、シュテファン『才女の運命』、ティム『ぼくの兄の場合』、シュタム『誰もいないホテルで』等。著書に『世界中の翻訳者に愛される場所』等。
リシアは10代のころからイタリア富豪ダリオに我慢ならなかった。娘には無関心なリシアの父親から息子みたいに大切にされているうえ、なにかと10歳年下の彼女を子供扱いする男性だからだ。ところが吹雪により、二人きりで夜を過ごすことになったとき、リシアは初めて彼にずっと惹かれていた自分に気づいて純潔を捧げた。数週間後、妊娠に気づいた彼女は愕然とする。傲慢でセクシーで誰よりも成功した億万長者であるダリオが、ずっとあざけりの対象だった私を子供の母親に望むわけがない。だが、ダリオは結婚を望んだ。我が子を手に入れるためだけに。
自分が養女だと知ったフローラは、ロンドンまで出向いて出生時の情報を入手し、愕然とした。母は麻薬依存症…。打ちひしがれて駆け上ったホテルの屋上で、青い瞳の世にも美しい男性と出会い、運命に導かれるように純潔を捧げた。素性はおろか、名前さえお互い告げないまま。6週間後、フローラが住む田舎の農場にヘリコプターが飛来し、降りてきたのはー二度と会えないと思っていたあの夜の男性。「やっと見つけた。きみは妊娠したかもしれない」強引に連れていかれた先は巨大なヨット。彼は巨万の富を誇る、シチリア大富豪だったのだ!
妊娠してしまったー家政婦のエマは呆然とした。世界的なホテル王チェーザレの従順な家政婦として仕えて7年。料理や掃除はもちろん、ときには彼のベッドに居座る美女たちを追い払う役目まで担ってきた。でもまさか私自身がそのベッドで一夜を捧げ、病身にもかかわらず宝物を授かるなんて。だがチェーザレはエマの告白に耳も貸さず、愛人になるよう迫り、失望した彼女が退職を申し出ると、怒って札束を投げつけたのだ。エマは深く傷つき、黙って彼のもとを去るしかなかった。10カ月後、チェーザレはようやくエマを捜し出し、迎えに行くが、彼女が抱く愛らしい赤ん坊が自分と瓜二つだと気がついて…。
まさか田舎町の事務員が、 異国のプリンセスになるなんて。 イギリスの田舎町で暮らすルビーの家に、遠いアシュール国の 宮廷顧問だという老人と、目も覚めるようなハンサムな青年が 突然訪れた。かつてルビーの母はこの国の王と結婚していたが、 世継ぎの男子を望む王が第二夫人を娶ったことで離婚になった。 だが現在、血縁は途切れ、ルビーが王家唯一の後継者だという。 しかも隣国と和平協定を結ぶためには、どうしてもルビーに 隣国のプリンスと結婚してもらわねば困るというのだ。 茫然自失となったルビーに、青年は厳しい顔で告げた。 「これは義務と責任のためのプラトニックな結婚だ」 じつは彼こそが花嫁を迎えに来たプリンス、ラジャだった! 大スター作家リン・グレアムのエキゾティックなシンデレラ・ロマンスをお贈りします。平和のため、公の場でのみ夫婦のふりをする偽装結婚だと信じて異国へ嫁いだヒロイン。ところが二人の間にはつねに熱い緊張が走り、ある日ついに均衡が破られて……。
看護師のミアはある夜、たくましくて魅力的な男性ブリンと出逢い、パーティの喧騒から逃げてきた者同士意気投合し、一夜を共にした。だが翌日には彼が異国へ渡ってしまい、それきりとなった。3年後、ミアはあの夜に授かった娘を独りで産み育てていた。小さくてかわいい、私に生きる目的を与えてくれた大切な娘。父親にそっくりなのに、父親のことを知らない娘…。ところが彼女の住む地域が嵐に襲われたとき、救急救命士としてドクターヘリで現れたのはなんと、忘れもしないブリンだった!思いがけない再会にミアは戸惑いながらも、娘の存在を彼に告げたー予期せぬ反応に打ちのめされるとも思わず。「僕は親子鑑定を要求する」
妻という名の人質になるーー それが、私が選べる唯一の道。 図書館司書のキャラは、父の書斎で言い争う声を耳にして扉を開けた。 父といたのは、非情な仕事ぶりで知られる商売敵の大富豪ヴィンス。 最近、彼はキャラと顔を合わせるたびに無遠慮な視線を送ってくる。 会社の不振に窮した父がヴィンスに多額の借金をし、 今週末までに返せなければ、会社も家も失うという。 なんてこと……。父を救うために、できることならなんでもするわ。 目に無慈悲な光を宿して父を追いつめるヴィンスに、 たまらずキャラは期限を1年延ばしてほしいと懇願した。 ヴィンスは何か思惑ありげにうなずくと、驚くべき条件を出した! 「望みを叶える代わりに、僕は担保をいただくーー僕と結婚してほしい」 12カ月という期限つきで、非情な大富豪の囚われの花嫁となったキャラ。ヴィンスの冷徹な目を見れば、そこに愛なんてないことは明らかなのに、しだいに夫を愛し始めてしまいます。そんななか、彼の元恋人が現れ、愛と嫉妬と葛藤が渦巻き……。紙書籍でしか読めない、不朽の名作!
たとえあなたの花嫁になっても、 私はずっと、片想い……。 ルーシーが長年片想いしている大富豪社長マーカスは、 彼女を愚かな小娘と決めつけ、顔を合わせればお説教ばかり。 だから、今、ルーシーの会社が倒産の危機に瀕していても、 惨めな姿をさらしたくなくて、彼にだけは相談できなかった。 ある夜、財界の大物が集うパーティに出たルーシーは、 会社再建の協力者を見つけた喜びでシャンパンを飲みすぎてしまう。 すると、同じパーティに出席していたマーカスに見咎められ、 強引に屋敷へ連れて帰られたうえに、突然、唇を奪われた! そしてついに憧れのマーカスと結ばれ、ルーシーは幸せをかみしめたーー やがて彼に跡継ぎを作るための“合理的”な結婚を求められるまでは。 ポーカーフェイスでありながらじつは情熱的な二人のロマンスを巧みに描いた、大スター作家ペニー・ジョーダン。3部作〈華麗なる日々〉最終話をお贈りします。本作はまさに山あり谷ありのジェットコースター・ロマンス。苦労続きのルーシーの片想いの結末は?
花嫁姿のドミニクは分厚いベールに顔を隠し、新郎ギデオンの隣にいた。この2カ月間、ギデオンを陰からひっそり見つめるうち、ドミニクは誠実そうで温かな笑顔の彼にいつしか恋をしていた。だが今、彼女の心は落ち着かなかったー本当に私がギデオンと結婚を?これは従兄弟が考えた悪ふざけの計画。彼女の貧しい母に家を与え、一生涯年金も払うと約束され、やむなく計画に協力してしまったのだ。一方、ギデオンの心は浮き立っていたーついに愛しの女性と結婚した!金髪に青い瞳の美しい彼女は、この2カ月間、僕を魅了してきた。ギデオンはたまらなくキスがしたくなり、新妻の顔を覆うベールを…。その瞬間、彼は驚きに声を失った。このこげ茶色の髪の女性は、誰だ?!
家族に自由を奪われてきたソフィアはある夜、こっそり外出に成功した。だが帰り道に何者かによって、見知らぬ屋敷へ連れ去られてしまう。そこにいたのは、なんと彼女が密かに想いを寄せるワイアット卿!彼は駆け落ちした妹を捜していて、ソフィアは人違いされたのだった。そうと知った彼女はぜひ力になりたいと、彼と妹捜しを始める。しかし行方がつかめないまま、宿を取らざるをえなくなった夜、ワイアット卿からキスと抱擁を受け、ソフィアは思わずつぶやいた。「愛しているわ」その瞬間、拒絶され、彼女の頬を涙がこぼれ落ちた。このままでは、彼に置き去りにされてしまう…。意を決した彼女は、翌朝まるで別人になったー男装をし、長い髪をばっさり切り落として!
これぞダイアナ・パーマーの真骨頂! ベスト作品賞&ベストヒーロー賞、受賞作。 天涯孤独のテスは大牧場主ハート兄弟のもとで家政婦をしている。 彼女にとって初めて得た家庭のようなものだけれど、 次男のキャグだけは怖くてたまらなかった。 かつて特殊部隊にいた彼は眼光鋭くいつも彼女を監視し、 ことあるごとに冷たい態度をとるからだ。 それでもテスはキャグの誕生日に心をこめてケーキを焼いたが、 彼はそれを見るや猛烈に怒り、バースデーケーキを壁に投げつけた! ひどいわ! まさか、これほどまで嫌われていたなんて……。 じつは密かに想いを寄せていた彼からの仕打ちにショックを受け、 テスは荷物をまとめて牧場を出ていこうとするがーー 大好評企画《不朽のファン・セレクション》より、2000年上半期のベスト作品賞&ベストヒーロー賞第2位に輝いた名作をお届けします。なぜかテスに冷たいキャグ。じつは彼には、心の奥にしまっていた、バースデーケーキにまつわる少年時代の悲しい記憶が……。
「アサシンクリード」の新たな歴史を紡ぐ幕末日本を舞台にした完全オリジナル小説。16歳の司馬篤湖は侍の父を持ち、将来を嘱望される兄に憧れている。嫁入りしていてもおかしくない年頃だが、侍を夢見て刀を振り、稽古に明け暮れる毎日を過ごしてきた。1867年11月9日、大政奉還によって江戸幕府はその幕を閉じたものの、ほどなくして旧幕府勢力と新政府が京都で激突。日本史上最大の内戦とされる戊辰戦争が勃発し、父と兄も徴集される。その背中を追うようにして、篤湖も戦いの場に身を投じる。だが、待ち受けていたのは、英仏の思惑が錯綜する陰謀だった。戦の背後で、天皇に与するテンプル騎士団と幕府を支持するアサシン教団が鎬を削っていたのだ。国を蝕む野望を眼前にした篤湖は、己の天命を理解した。家族を、そしてこの国を守る。決意を胸に篤湖は立ち上がる。手にした刀、勇気、そして兄妹の絆を武器にー。
人生を物語に刻んで。 ロングセラー『掃除婦のための手引き書』(2020年本屋大賞翻訳小説部門第2位)、『すべての月、すべての年』に続く待望の短編集。 「彼女の書く文章はほかの誰とも似ていない。読むものの心を鷲づかみにして、五感を強く揺さぶる。読んだときは文字であったはずのものが、本を閉じて思い返すと、色彩や声や匂いをともなった「体験」に変わっている。(中略)まるで自分もそこにいて、それらを見、聞き、感じたような錯覚にとらわれる。それほどに、彼女の言葉の刻印力は強い。」(「訳者あとがき」より) 【目 次】 オルゴールつき化粧ボックス 夏のどこかで アンダード あるゴシック・ロマンス 塵は塵に 旅程表 リード通り、アルバカーキ 聖夜、テキサス 一九五六年 日干しレンガのブリキ屋根の家 霧の日 桜の花咲くころ 楽園の夕べ 幻の船 わたしの人生は開いた本 妻たち 聖夜、一九七四年 ポニー・バー、オークランド 娘たち 雨の日 われらが兄弟の守り手 ルーブルで迷子 陰 新月
主人公ウィンストンは、ビッグ・ブラザーと党が支配する、どこが相手かもはっきりしない戦時下の超管理社会イングソックの真実省で、公式の歴史改変を担当している。だがふとしたきっかけで禁断の日記を書き始め、そして若いジュリアとの禁断の逢瀬にふける中で、次第に自分の暮らす社会に対する疑問と反発を強める。しかし反政府組織に参加したと思った瞬間、彼は国家に捕らえられー現在のハイテク監視社会、情報操作とフェイクニュースによる大衆支配、戦争やテロを口実にした社会的自由の制約、密告と労働改造所や矯正収容所の思考操作、社会階級の固定化と格差社会、その他現代管理社会のありとあらゆる側面が恐ろしいほどの密度で詰め込まれた、不世出の傑作。
村上春樹の新訳と山本容子の銅版画で、マッカラーズの名作がよみがえる。さびれた南部の町で暮らすアミーリアは、言い寄る男に見向きもせず、独身で日用品店を営んでいる。ある日彼女のもとに背中の曲がった小汚い男が現われた。町中が噂するなか、どういうわけか彼女はこの小男に惚れこみ、同居してカフェを始める。そこにアミーリアの元夫が刑務所を出て帰還。奇妙な三角関係の行方はーー。
「世紀のロマンス小説」ではない? 20世紀のロマンス小説として知られる大長編『風と共に去りぬ』。しかし、原文を精緻に読むと、その本質が「恋愛」ではないことがわかるという。「ヒロインは二人いる」「実は戦争小説である」「ディストピア小説としても読める」「養護と扶養という視点で読むと面白い」--。翻訳を手がけた著者だからこそたどり着いた、実に多様な読み方を味わう。Eテレ「100分de名著」テキストに、特別章・ブックガイドなどを大幅加筆のうえ、書籍化。