1988年発売
東大のみを目標にしていたごく普通の少年が、一通の手紙をきっかけにして、放送作家、作詞家と、サクセスの道を突き進んで行く。ニューヨークから秋元康が贈る、初の書下ろし自伝的小説。
敗戦直後の荒廃した世情のなかで、深い倦怠と疲労に自身の老いを自覚する信吾。老妻や息子夫婦と起居をともにしながら孤独を感じさせられる家庭にあって、外に女をもつ長男の嫁菊子に対する信吾の哀憐の情は、いつしかほのかな恋にも似た感情に変わってゆく。その微妙な心のひだをとらえた戦後川端文学の傑作。
平凡無垢な青年ハンス・カストルプははからずもスイス高原のサナトリウムで療養生活を送ることとなった。日常世界から隔離され病気と死が支配するこの「魔の山」で、カストルプはそれぞれの時代精神や思想を体現する数々の特異な人物に出会い、精神的成長を遂げてゆく。『ファウスト』と並んでドイツが世界に贈った人生の書。
理性を尊び自由と進歩を唱導するセテムブリーニ。テロと独裁によって神の国を実現させようとする非合理主義者ナフタ。2人に代表される思想の流れはカストルプの魂を奪おうと相争うが、ある日雪山で死に直面したカストルプは、生と死の対立を超えた愛とヒューマニズムの道を認識する。人間存在のあり方を追求した一大教養小説。
道ってやつは踏みはずすためにある。踏みはずしたところに、また道があるー川本高志、25歳。横浜の高級クラブ『オリエンタル』のボーイ。気位、男の誇りをバネに、自分しか歩みようのない道を身体ごとぶつけて切り拓いていく。アウトロウの原点を濃密な文体で描く迫真のクライム・ノベル。日本推理作家協会賞受賞作。
凄まじい超能力を持つ竜堂四兄弟に安息の日は訪れないのか。黒い権力者たちは「竜」の出現に驚く大衆を煽って野望むきだしにする。そして美貌とプライドを炎に焼かれたレディLの復讐心。最強の敵の登場。追いつめられた兄弟の中でも三男坊・終の怒りは激しいーノベルス界空前の人気シリーズ、強烈第3弾。
ナターリアの黒髪が美しいリガの街に揺れるたび、若き瀬尾の心は激しく騒いだ。しかし文化交流使節団の一人が「誘拐」されて事態は一変する。四年前の神戸殺人事件と四十数年前の満州での「出来事」が歴史の闇から浮かびあがってきた時、明らかになる真相とは-衝撃のラストショット、旅情味あふれる長編推理。
みちのくへ旅立った西行法師の真の目的は、「暗花十二拳」の謎にいどむことだった。西行こそは、秘伝「明月五拳」の極意を体得した至上の拳法家だったのだ。雷拳、風拳、鬼拳…次々と現れる暗花十二拳との死闘の果てにたどりついたのは、和歌地獄、そして闇王!大型新人が放つ超迫力のデビュー快作。
商から周へ、中国ではいま易姓革命が始まろうとしている。名君紂王は妖妃妲己を迎えて以来、まったくの昏君(バカ皇帝)と化した。妲己、彼女はじつは、千年の齢を経た女狐の化身だったのだ。-軍師太公望(姜子牙)を擁する西岐軍と商軍の大殺戮戦。妖術玄術が切り結び、飛び交う宝貝(秘密兵器)はSFをしのぐ。奇想天外な大伝奇ロマン、全3巻。
徳川幕府の弱体化がすすんだ幕末、唐津藩主の座に心ならずも就いた小笠原長行は、すでに36歳だった。藩中の反対勢力を制し、江戸城に伺候した長行は、時代改革の必要を次々具申、若年寄をへて老中職を仰せつかる。しかし時勢はあまりにも急旋回しようとしていた。長行の数奇な運命とは?最後の老中を精緻に描いた出色長編。
アヘン戦争から7年後、小乱が続き匪賊が横行する、物情騒然たる中国で、洪秀全が頭角を現わしてきた。エホバを天父と仰ぎ、清朝を排して世直しをめざす、拝上帝会の創始者である。信仰と理想に燃えて金田村に決起した一党は、多彩な勢力も併合して、遂に、太平天国という「国」を樹立するに到った。
ローラ一家は、やっとシルバー湖のほとりに払い下げ農地を手に入れ、わが家に住めるようになった。だが、父さんは、きびしい冬のあいだだけドゥスメットの町へ引っ越すことにした。大草原でつつましく育ったローラ姉妹が、学校や集会で体験する町の暮らし…。自分の生き方にめざめつつある少女ローラの成長を描く「大草原の小さな家」第6作。
厳しい環境下で喘ぐ巨大銀行。会長と頭取の暗闘、不良債券の回収に振りまわされる支店長、融資をめぐるライバルとの苛烈な競争。サバイバルに賭ける都市銀行の苦悩と変貌を活写する渾身の経済小説。
昭和22年夏、横浜。進駐軍の肝入りで、進駐軍家族の子弟や日本の少年たちにスポーツの基礎を教えるサマースクールが開校されることになった。寛太・千春・直行の少年3人組は、闇市を舞台に結束を固め、大人の世界に足を踏み入れながらたくましく生きていたが、サマースクール開校の話を耳にして、あれこれ相談した結果、3人そろって参加を申し込むことにした…。