1997年発売
1936年、北京。劇団員と荷物を山積みにした馬車隊が、古びた劇場の到着する。その場所はかつて壮麗なオペラハウスだったが10年前火事によって廃墟となり果て、当時大人気だったスター、ソン・タンピンも焼死したと噂されていた。その夜、タンピンに憧れる若き劇団員ウェイチンは不思議な歌声を耳にする。そして暗い劇場を走る去る女の姿。すべては幻影なのか、それとも…?管理人のマー老人はその歌声の秘密を静かに語り始めた…。
元宵節で賑わう唐の都・長安。観燈や見世物を楽しむ人々の中に楊二郎と恋人・翠心の姿もあった。声をかけてきた妓楼の女・王小珊と立ち話をしていた二郎が気がつくと、さっきまで隣にいたはずの翠心の姿がない!翠心の行方を突き止めた二郎は、彼女を連れ去った端之から行方不明の想い人が翠心にうり二つであることを知る。さらに端之の父が東方朔の知己であったことから、秋香の行方を探すが…。
アメリカからやって来た若く魅力的なイザベル。真実の愛を模索する一人の女性の姿を19世紀後半のイギリス、イタリアの上流社会を舞台に描く。ヘンリー・ジェイムズの原作を基に、あの「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオンが映像化した待望の最新作。華麗な衣装や時代背景も堪能できる、豪華写真も多数掲載。原作とは一味違う、登場人物の心理描写を丹念に写し出した映画脚本が楽しめる一冊。
暗黒のハイテク未来都市バンコク。ロボット種族リリム殱滅の命運を背負ったエロヒム、ダゴン(イグナッツ・ズワクフ)は愛車ブガッティを駆ってセックス・ドールのホロコーストに明け暮れていた。しかし、リリムと人間との交配によって誕生した人間亜種メタは、地球支配の覇権を握りやがて全宇宙を再構築する野望に沸き立っていた。メタは仮想現実による歴史の改編、さらにはダゴンの過去にまで介入した。一方、頽廃の都火星のパリでは、デッドガール、プリマヴェラとイグナッツ・ズワクフの娘にして官能的サイボーグ美少女ヴァニティ・セント・ヴィリディアナが情報複製ミーム・メタによってプログラムされた淫蕩なサイコイド心身症に蝕まれていた。彼女は亡き母プリマヴェラの超子宮(CPU)を通して父ダゴンにアクセスした。そして倒錯的で残酷な処刑遊戯の果てのエロティックな死を待ち望んでいることを父に告げたのだった。超次元的カウボーイ・ダゴンはヴァニティの待つ火星へ向け仮想現実にダイヴした。
東京下町、荒川土手下にある小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。店主のイワさんと孫の稔で切り盛りするごくありふれた古書店だ。しかし、この本屋を舞台に様々な事件が繰り広げられる。平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挟まれていた名刺。父親の遺品の中から出てきた数百冊の同じ本。本をきっかけに起こる謎をイワさんと稔が解いていく。ブッキッシュな連作短編集。
空しい結婚生活は破綻した。孤独な「朔太郎の娘」は、一人息子を育てながら、ようやく書くことで生きがいを見出す。しかし、淡い恋も失い、昔、父を裏切り、自分を捨てた母を捜して引き取ったことで、我儘と狂気に翻弄される嵐のような日々が始まった。一族の酷薄な仕打ちと暗く閉ざされた青春を描いた衝撃のベストセラー「蕁麻の家」、不幸な結婚を赤裸々に綴った「閉ざされた庭」につづく、著者渾身の自伝小説。
21世紀なかば、ナノテク技術の飛躍的発展と人格矯正の義務化によって、ついに人類は地球に疑似ユートピア社会を形成するにいたった。おりしもAI搭載の無人探査機が返送するアルファ・ケンタウリ探査報告に沸く巨大都市ロスエンジェルスで、ありうべからざる凶悪犯罪が発生した。高名な詩人が8人の弟子を惨殺、謎の失踪をとげたのだ。特命を受けたLA公安局生え抜きの女性捜査官、マリアは事件の捜査にのりだすが…。
美貌のLA公安官マリアはナノマシンを駆使して詩人の足取りを追い、カリブ海の独立国に潜入するも突然の国交断絶でとらわれの身に。一方被害者の父親の要請で、異端の心理工学者マーティンは詩人の精神へ禁じられたサイコダイブを敢行、異様なる心の迷宮に分け入っていく。そのとき遙か宇宙の彼方では孤独なAIに自我の萌芽が…めくるめくナノテク文明のヴィジョンを人間意識の深淵に重ねて描く、巨匠待望のSF巨篇。
十八世紀、フランス革命直前のヴェルサイユ、ルイ十六世の治世。欲望渦巻く宮廷社交界では「洗練されたエスプリ」が重んじられ、才気のない、風流を欠いた人間は除け者にされていた。そんな時代の風潮のなか、故郷の窮地を王に具申するためヴェルサイユにやって来たポンスリュドンという青年がいた。田舎貴族の彼の前には次から次に困難が立ちはだかるが、持ち前の才気と率直さで切り抜けていく…滑稽かつ痛快な諷刺劇。
「リトル・シャムロック」のバーテンダー、ディズマス・ハーディは、地方検事局時代の同僚ラスティから、かつて二人が刑務所送りにした凶悪犯ルイスの出獄を知らされる。出所したら二人を殺すと脅して、さらに刑期を延長された男である。やがて、ラスティの愛人が射殺された。ラスティもまた射たれ、死体は海に流されたらしい。死体があがらず、捜査が進まないのに業をにやしたハーディはみずから事件解明に乗り出すが。
1915年、第一次世界大戦のさなか優秀な海兵隊員を輩出する名門ブラックウッド家の当主で、海兵隊砲兵部隊の大尉ジョナサンは、英国海軍軍艦リライアント号に乗りダーダネルス海峡をめざした。英仏連合軍が、黒海と地中海とを結ぶ戦略上の要衝ダーダネルス海峡を攻略しようとしているのだ…ガリポリ上陸作戦、さらには凄絶な塹壕戦が展開される西部戦線と最前線で勇猛果敢に戦う海兵隊員を迫真の筆致で描く、戦争小説。
不気味なヴァレンタイン・カードが送られてきた日から、人気ミステリ作家ジリアンは恐怖にさいなまれ始めた。彼女は私立探偵に調査を依頼するが、今度は身の毛もよだつプレゼントが届けられ、彼女が診察を受けていた精神分析医が惨殺された。やがて犯人が明らかになった時、さらなる恐怖が!『崖の家』の著者が練りに練ったプロットで描く傑作サスペンス。
あの日から、すべてが崩壊に向かった。ある老人に行方不明の孫を捜してくれと頼まれた日からー家電販売会社で働くニックは、二週間前に突然失踪したアルバイトの少年ジミーを探しはじめた。まもなく彼は、少年が過激なパンクグループの男と謎の美女とともに消えたことを突きとめる。が、失踪事件はやがて麻薬絡みの殺人事件へと発展し…ハードボイルドの次代を担う新鋭が放つ、ノワールの香り漂う話題の新シリーズ。
魔都ニューヨークへ戻ってきたバークの許に、NY市警殺人課の女刑事ベリンダが会って頼みたいことがあると執拗に連絡してきた。一方、バークは幽霊ヴァンの一件以来、ベリンダと同じ殺人課の鬼刑事モラレスにもつきまとわれていた。バークはとりあえずベリンダに会うことにした。彼女の頼みというのは、連続レイプ殺人犯として逮捕されたジョージ・ピアソルは冤罪であり、それを証明するのに力を貸してくれということだった。彼女によれば、ピアソル逮捕の直接のきっかけになった事件には矛盾があり、署内の人物によって細工が施された形跡があるらしい。しかも驚いたことに、その人物はモラレスだと彼女はいう。バークは弁護士も加えてピアソル本人に会ってみたが、そのときのピアソルを見つめるベリンダの視線が妙に気になった。半信半疑のままバークは、馴染みの新聞記者や仲間たちとともにモラレスの過去や行動を調べていくと、たしかに、モラレスが真犯人ではないかと思えるような性向や事実がわかってきた。しかし、どう考えても、バークにはしっくりこなかった。そしてバークは、ベリンダの性急な働きかけとモラレスの圧力をかわしきれないまま、油断ならぬ無気味な空気をひしひしと感じさせられていく…。
研究実験施設「イコシエル」事件に端を発したイソギンチャクラーとの闘いが終わって、ひと月。ユリとケイはとりあえずさらなる敵の動向を探るため、薔薇十字学院で毎日を過ごしていたが、そうこうするうちに恒例の修学旅行が行われることになった。行く先は、大宇宙。豪華客船でのリッチでゴージャスな船旅、のはずだったが。前作で活躍した円行、ファン・スーに加えてインド人の美青年ディーバも登場。脇役陣もパワーアップ。
スコットランド高地では、昔から氏族同士の紛争が絶えなかった。今も、マックスティールとマクブララの両族が敵対し、一触即発の状態である。マックスティール族長の娘フィナは父と共に、強く平和を願っていた。その結果、フィナとマクブララ族の若者ブララデール伯爵との縁談がもち上がる。一方の伯爵は、ロンドンでの生活を享受していたが、故郷の現実を知り、若き族長としての義務感に駆られる。二人は気の進まぬまま、一族のためについに結婚を承諾したが…。
日中の溝が拡がる1930年代。美貌の娘・碧雲は神戸の日本人家庭に育てられた。突然舞い込む紙片に記されたメッセージー中国人であることを忘れるな!目に見えぬレールが彼女を故国へと導く。抗日運動の地下組織に身を投じる人々の、激烈な生を描く。