1999年発売
19世紀のイギリス南西部、サマセットシャー。クーム・レイヴン邸に暮らすヴァンストン一家は幸せそのものだった-アメリカから一通の手紙が届くまでは。思いがけない不運によって財産と姓を奪われ、恋人とも別れなければならなくなった18歳の妹娘マグダレンは、その美貌と才気を利用して大胆不敵な復讐を企てる…。型破りなキャラクターとサスペンスフルな展開、ユーモアにあふれた語り口で読むものを惹きつける、「近代長編推理小説の祖」コリンズ最盛期の傑作。
幽閉生活を送る九度山の屋敷を脱け出した真田幸村は、徳川家康に一矢報いようと熊野行をこころざした。家臣の四角兵衛、覚鈴を供に山谷の険しい修験道を行く幸村一行に追っ手が襲いかかる。そこに突如、幸村を護るべく立ちはだかった若者。意想外の忍びの術を駆使して自由奔放に飛び巡る自然児・猿飛佐助だ。熊野神域を舞台に繰り広げる奇想天外な痛快伝奇ロマン。
ササーン朝ペルシャがアラブの侵攻で倒れて三百数十年、11世紀初めにアラブ中央政権に対抗して書かれたペルシャ民族高揚の叙事詩ー神話・伝説・歴史時代の三部構成からなるペルシャ建国の物語。今も、誰でもその一節を暗誦することができる、と言われるほどイランの人々に愛されている『王書』からその名場面を抄訳。
小田原事件に発展した佐藤春夫とのトラブル、添田=谷崎、穂積=佐藤、朝子=千代夫人の三角関係を虚構を織りまぜて小説化した長篇「神と人との間」、既婚者の文学士と離婚者の法学士による理想的な離婚についての対話劇「既婚者と離婚者」、中国趣味を折込んだ「鶴唳」の三篇を収める。
三国峠の戦いで勝利した西軍は越後路へ雪崩れ込み、会津藩の飛地小千谷を占領した。越後口の要衝である長岡藩の家老河井継之助は、藩の命運を賭けて、懸命に西軍の軍監岩村精一郎らに会見を申し入れる。しかし、錦旗を振りかざす岩村は、これをにべも無く一蹴。河井は、ついに西賊撃攘を叫び、長岡藩兵を率いて行動を起こす。吉川英治文学賞受賞作品。
離婚を経験した理性的な白人女性のセラピストと、夫との深い愛に生きたメディスン・ウーマンの老女。対照的な二人の出会いから始まる「発見の旅」が、生と死と愛についての深遠な洞察へ誘う。
不慮の事故で命を落としたクリスがたどり着いたのは、「常夏の国」と呼ばれる楽園だった。だが、まもなく信じがたい知らせが届く。最愛の妻アンが、彼を亡くした悲しみに耐えきれず自殺してしまったというのだ。クリスは旅立つーアンを救うため、想像を絶する苦難が待つ地獄へと!愛のみが成し遂げうる魂の救済を描き、『ある日どこかで』と並び称されるファンタジイの傑作。
西暦1997年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。この国では毎年、全国の中学3年生を対象に任意の50クラスを選び、国防上必要な戦闘シミュレーションと称する殺人ゲーム、“プログラム”を行なっていた。ゲームはクラスごとに実施、生徒たちは与えられた武器で互いに殺しあい、最後に残った一人だけは家に帰ることができる。香川県城岩町立城岩中学校3年B組の七原秋也ら生徒42人は、夜のうちに修学旅行のバスごと政府に拉致され、高松市沖の小さな島に連行された。催涙ガスによる眠りから覚めた秋也たちに、坂持金発と名乗る政府の役人が、“プログラム”の開始を告げる。ゲームの中に投げ込まれた少年、少女たちは、さまざまに行動する。殺す者、殺せない者、自殺をはかる者、狂う者。仲間をつくる者、孤独になる者。信じることができない者、なお信じようとする者。愛する気持ちと不信の交錯、そして流血…。ギリギリの状況における少年、少女たちの絶望的な青春を描いた問答無用、凶悪無比のデッド&ポップなデス・ゲーム小説。
1975年、渋谷。ロックの熱狂が鳴り響く街に16歳のノンノはいた。親友チアキはバンドの道を突き進む。ノンノは自分に似た少女ナッキーと出会い、惹かれ始める。それぞれの青春は光に満ちていった。しかしそこに見えない影が差す。不可解な出火事件。焼け落ちたノンノの家からは二つの焼死体と一人の記憶を失った少女が発見された。21年後、既に時効になったこの事件をたったひとりで堀り起こす刑事がいた。そこにはあまりにも意外な真実が…。宿命に操られる少女達ふたりの魂の謎を追い、青春と人生の哀歓を描いた、横溝正史賞受賞女流の新感覚ミステリ。
「鹿鳴館には貴婦人の幽霊が出るらしい」明治三十三(1900)年、帝都・東京。担当雑誌の企画で鹿鳴館の怪談を取材することになった編集者の香月真澄は、幻想と怪奇の作家、泉鏡花に協力を求めた。ふたりの前に立ち現れる華麗なる舞踏会の幻。そして伯爵家の謎-!大好評シリーズに書き下ろし『海神幻想』を収録。
部屋住みの身から、急死した兄に替わり、財政難にあえぐ肥後熊本藩藩主となった細川重賢。斬新な改革案を次々と発し、「宝暦の改革」を推し進め、後に上杉鷹山にも影響を与えた名君の、冴えわたる藩政改革の手腕を描いた著者渾身の力作。
開戦から三カ月、キンメル司令長官率いる米太平洋艦隊と連合艦隊が、マリアナ沖で激突した。両軍は消耗戦を強いられ、結局、南洋諸島海域では、依然として帝国海軍が戦略的優位を維持することができた。その頃、日本では海軍から陸軍に対し、フィリピンの早期占領の要望が出された。しかし、マッカーサー率いる米軍守備隊が立て籠るコレヒドール島は難攻不落の要塞だった…。一方、太平洋では、小笠原諸島の硫黄島を地下要塞と化す大規模な土木工事が着々と進行していた。南洋諸島と日本全土を結ぶ空路上にあるこの島が、次なる決戦の舞台だった。米空母を飛び立った攻撃隊を発見。硫黄島に空襲警報が鳴り響く。