2002年4月発売
新宿区内でOLの他殺死体が発見された。女は勤務する新宿中央信用金庫の理事長萩原の愛人だった。事件を知って執拗に萩原をつけ回す迷彩服姿の不気味な男がいた。歌舞伎町分室の警視ムラマサは、男がかつてあと一歩のところで海外逃亡を許した殺人鬼梶応毅ではないかと直感した。傭兵経験もある梶応なら歌舞伎町にまた血の雨が降る-ムラマサの想像はすぐに現実のものとなった…。圧倒的迫力のハード・サスペンス。
視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まったー。書き下ろし小説。
転職二十回。十四歳で留学したアメリカでは奴隷に売られ、日本では相場師から首相までを経験した高橋是清。昭和初期の金融恐慌を鎮めるなど蔵相七回をつとめた不世出の政治家は後に、二・二六事件に倒れる。労苦と挫折を糧に卓越した人間観と金融政策で日本の危機を何度も乗りきった男は何を優先し、どう決断したか。渾身の力作評伝。
開口部を完璧に閉ざされたダッソー家で、厳重に施錠され、監視下にあった部屋で滞在客の死体が発見される。現場に遺されていたナチス親衛隊の短剣と死体の謎を追ううちに30年前の三重密室殺人事件が浮かび上がる。現象学的本質直感によって密室ばかりか、その背後の「死の哲学」の謎をも解き明かしていく矢吹駆。20世紀最高のミステリを1100ページ超の全1冊で贈る!
幸せ一杯の結婚式場に突然死体が降ってきた。空には巨大な翼と人間の顔をもつ異形の影が。奇怪な事件に大喜びで着手したのは、超美人にして性悪、乱暴、史上最強の公僕・薬師寺涼子警視である。国家機密も周囲の迷惑も一切無視、疑惑の渦中へズカズカ土足で踏み込んでいく。『魔天楼』に続くシリーズ第二弾。
騙し騙され、一攫千金を狙っては燻り続ける男たち。関西アンダーグラウンド世界に蠢く悪党どもが、シノギを削って繰り広げる暗躍死闘を活き活きと描く。悪事の手際、会話の一言、仕種の細部にまで行き渡った、痺れるほどの緊張感とリアリティ。極上のピカレスク・ハードボイルド、9編を収録した傑作集。
南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。反撃を開始した人類は、「通路」の彼方に存在する惑星フェアリイに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに、孤独な戦いを続ける特殊戦の深井零。その任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情かつ冷徹なものだったー。発表から20年、緻密な加筆訂正と新解説・新装幀でおくる改訂新版。
少女の死体は、夕暮れの湖畔に流れついた。パラダイス署の者たちは死体を見るのをいやがった。水に長く漬かっていた死体は不愉快なものだ。やむなく死体を検分したジェッシイ・ストーン署長は、少女の耳の後ろの弾痕に気づく。何者かが少女を射殺し、死体を湖に投げ込んだのだ。少女の身元はなかなか判明しなかった。湖畔で発見された指輪を手がかりに、ようやくジェッシイたちは少女がこの夏、ハイ・スクールを中退したビリイであることを突き止めた。だが、ビリイの家をたずねたジェッシイに母親は告げる。「うちにはビリイという娘はいません」家族に見放され、家出同然に大都会ボストンへ出た少女に、いったい何があったのか?警察署長ジェッシイ・ストーンの推理と調査が、大都会の暗部に迫る。巨匠パーカーが贈る、男気満載のシリーズ最新作。
次々と女たちを篭絡する男ー中里。東京では街行く女性に声をかけ、「熟れた肌」を貪り、新潟では美人芸者の「雪の肌」を堪能し、房総では女体の「海辺の味」を楽しむ。あるいは、地方から出てきた若い女性の「白い蕾」を摘み取り、福岡ではパトロンの目を盗んで「名器」の女性をいただき、さらには白人女性と夜の国際交流…。これほどオンナを愉しんでいる男も、なかなかいない。
次々と女たちを寵絡する男ー中里。札幌で知り合った女と「獣の体位」で逢瀬を楽しみ、秋田美人の「淫らな部分」を味わう。「神戸の処女」に手ほどきをしたかと思えば、大阪の女性の「色っぽさ」に酔いしれる。さらには、パリ・ジェンヌの絶妙な舌技にとろけそうになり、バルセローナのコールガールと熱烈な愛欲劇を演ずる…。中里の「女性遍歴」は、どこまで続くのか。
全面性の時代から一面性の時代へーこうした時代の変化を踏まえ、ゲーテは人間のあるべき姿を描こうとした。霊的な力をあらゆる人々に及ぼす精神的太陽とも言える聖女マカーリエに象徴されるように、本書の作品世界は汲み尽くしがたく、どこまでも晴れやかで美しい。
ランナーの道を断念して以来の全力疾走をした日、若い水道職人・達夫は、羽音とふしぎな声を聞く。奇妙な能力を持った蚊トンボ“白鬚”が頭に侵入してきたのだった。達夫はシラヒゲの力で、オヤジ狩りに遭っていたアパートの隣人・黒木を救う。黒木は、株取引で巨額の損失を暴力団に与え、血眼で行方を追われる身だった。彼らは、黒木の居場所を達夫に吐かせるため、恋人・真紀をターゲットにしたが、凶悪な気を放つ赤目の男の介入に、達夫は闇社会に真っ向から挑む道を選んだ。長編小説。