小説むすび | ジャンル : 外国の小説

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夏のヴィラ夏のヴィラ

過去と現在が交差し、一瞬煌めいて消えるーー 韓国で五つの賞に輝いた珠玉の短編集 いまやペク・スリンの小説は、母語と母国、母性の世界の不均質にまで手を伸ばす。普段は見られない母親の美しさに怯えて泣き出す子どものように、私もまたその過程にすっかり魅了された者のひとりだ。 ーーキム・グミ(小説家)『あまりにも真昼の恋愛』著者 「黒糖キャンディー」(『私のおばあちゃんへ』)『惨憺たる光』に続くペク・スリン、待望の最新作 美しく繊細な文章で、宇宙ほどにも捉えがたい人の心を追いつづけるペク・スリン。決して完璧に理解しきることなどできようもないのだが、そこによぎる一筋の彗星のような軌跡を目の当たりにさせてくれる。前作『惨憺たる光』では、光に至るまでの深くもあてどない闇を置き去りにしない慈愛のような作品たちを届けてくれた。今作『夏のヴィラ』では、人と人、世界と世界の境界線を静かに見つめることで、私たちがこの入り組んだ世界でいかに関係しながら共存しているのかを考えさせてくれる。 『夏のヴィラ』は二〇二〇年に刊行された、ペク・スリンの三冊目の短編集である。著者は二〇一一年に短編「噓の練習」でデビューして以来、多数の文学賞を受賞してきた。なかでも本書は、合わせて五つの賞を受けている。「時間の軌跡」と「ひそやかな事件」で若い文学賞、「夏のヴィラ」で文知文学賞、「まだ家には帰らない」で現代文学賞、さらに本書自体は審査員満場一致で韓国日報文学賞に輝くという快挙を成し遂げている。(訳者あとがきより) <あらすじ> 初めてのヨーロッパ旅行で出会い親交を温めてきたドイツ人夫婦に誘われ、苦しい講師生活のなか気持ちがすれ違っていた夫と共に訪れたカンボジアのヴィラ。数日過ごすうち、夫とドイツ人夫婦の間に小さな諍いが起こり……「夏のヴィラ」。夫の希望で仕事を辞め、変わらない毎日を過ごすなかでの楽しみは、子供を送迎するときに見かける赤い屋根の家に住む空想をすることだった。そんななか、親友が開業したイタリアンレストランで出会った若い男性とのささやかな会話が引き起こした心のさざ波に……「まだ家には帰らない」。人と人、世界と世界の境界線を静かに描いた八つの短編を収録。 時間の軌跡 夏のヴィラ ひそやかな事件 大雪 まだ家には帰らない ブラウンシュガー・キャンディ ほんのわずかな合間に アカシアの林、初めてのキス 著者あとがき 訳者あとがき

都市残酷都市残酷

山で生きてきた。国家など不要だった。都市の残酷に呑みこまれても、猟人の魂は生き延びる。記憶はいつも創造と壊滅の間でつなわたり。だから物語は書かれなくてはならない。 ワリス・ノカンの文章が、全球化社会に対する抵抗の線を引く。-- 管啓次郎 台湾原住民文学の旗手が描く、都市化された台湾の悲しみ。原住民の誇らしい魂が、都市化の波に呑まれ悲鳴を上げる台湾の現実。真の台湾を知るには避けて通ることのできない作品集。 目次 序 日本の読者の皆さんに ワリス・ノカン 作品舞台地図/凡例 第一部──記憶柔和   弔い   最初の狩猟   長い年月のあとのある夕暮れ   タロコ風雲録   悲しい一日   独裁者の涙   野ゆりの秘密   女王の蔑視   失われたジグソーパズル   死神がいつも影のごとく寄りそう 第二部──都市残酷   奥の手   中秋の前   夜の行動   タクシー   小さなバス停の冬   この、もの悲しい雨   希洛の一日   銅像が引きおこした災い   私の小説「先生の休日」   ムハイス   コウモリと厚唇の愉快な時間 第三部──山野漂泊   虹を見たか   タイワンマス   人と離れてひとり暮らす叛逆者、ビハオ・グラス   父   初出一覧  訳者あとがき 下村作次郎

十二年目のシンデレラ十二年目のシンデレラ

出会いなおして、恋をして、 そしてふたたび傷ついてーー 「起きろ! ぼくの別荘でいったい何をしている?」 リーズが驚いて顔をあげると、目の前に初恋の人がいた。 12年前より背が高く、たくましくて魅惑的なケイドーー 彼はいまや成功した実業家で、わたしとは別世界の住人だ。 その証拠に、フロリダのこの高級リゾート一帯は彼のものだという。 たがいに戸惑いながら言葉を交わすうち、 ケイドの父親によって引き合わされたのだと気づいたときには、 ふたりは嵐のせいで彼の別荘から出られなくなっていた。 1週間の間だけーーそう自分に言い聞かせ、リーズは夢見ることにした。 美しく静かなこの場所で、かなうことのない愛の続きを。 すべてを忘れて、昼夜を問わず自由奔放に愛し合うふたり。やがてケイドが愛を告げ、リーズはかつて彼のもとを去った理由と秘密をついに告白せざるを得なくなり……。救いのない世界で生き延びた乙女の、切なくも美しい恋物語。『孤高の富豪を愛したら』関連作。

愛は罪深くとも愛は罪深くとも

どうか産ませてくださいーー あなたとわたしの子を。 18歳の頃、ジュリーとテイトは熱烈な恋におちた。 大きな街に出てそれぞれの夢をかなえ、必ず結婚しようーー そう誓い合っていたのに、二人は悲しい誤解によって別れてしまった。 しかし10年後、ジュリーは捨てたはずの故郷へ戻ることにした。 密かに産み育てた、愛しいテイトの娘のために。 白血病に冒された娘のドナーになれるのは、テイトしかいない。 娘の存在は明かさずに、なんとしても彼の協力を取りつけないと! 万が一うまくいかなかったとき、残る手段はただひとつ。 今もわたしを憎んでいるであろう彼に、こう頼むのだ。 きょうだい間の輸血のために、“あなたの子どもを産ませて”と。 癒やしの作家シャロン・サラを友人に持ち、その影響を色濃く受けたリンダ・グッドナイトのシークレットベビー物語です。10年ぶりに再会したジュリーの頼みに驚き、心乱れるテイト。結婚を条件に提案を受け入れますが……。胸が締めつけられるほど切ない感動作。

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